《ROUND1‐8》アイスとストリートファイトと怒れる獅子
――リスタート・イン・マッチ!
奈落道によって崩壊寸前まで追い込んだ歌舞伎町。
それを阻止せんと、いよいよ初陣として馳せ参じた闘獣魂を持つゲーム拳士の舞・龍青、そして玲王。
拳華成闘のVRフィールドが展開された事により、破壊された歌舞伎町が一転、常闇の深夜に輝くネオンの繁華街に変えていった。
そんなロマン全開のフィールドバックを背に、奈落道と闘う拳法着を身に纏う龍青と、柔道着纏いし舞。
――さぁ、主役たちの記念すべきファーストバトルをご覧戴こう!!
「「はあああああああああ!!!」」
舞・龍青、気合一発雄叫びあげて突撃する。向かう矛先は、外道この上なしの奈落道のならず者集団!
通り魔の如く、バタフライナイフを引っ提げて舞に刃を向ける奈落道。しかし、そんなチンピラの
ナイフを持つ腕の手首をグワシッと力強く握れば、反動を利用して相手を背負って、自分の肩越しに投げつける! ちぎっては投げ、ちぎっては投げと、片手一つでバッタバタと奈落道共を投げ落とす!
これぞ男子100kg超級の選手をも投げ落とす【天翔道流・黄狐拳】の使い手、萌黄舞の十八番技。『九尾の組手・背負投げ』であります。だがしかし、驚くのはまだ早い!
「天翔道流・黄狐拳奥義! 『
――GLAP!!
一人の奈落道の胸ぐらを、両手でガッチリと掴んだその刹那、
「ふはぁああああああああああッッッ?!!」
質量だけでも30貫、つまり112.5キログラムはある巨漢を持ち上げたかと思えば、まるで鬼の金棒を振るうかのように、軽々と人間の身体をジャイアントスイングの要領で振り回し、同胞の奈落道共をブチのめしていく!
女子軽量級の舞からは想像しがたい、途轍もない怪力の持ち主か!?
「ふぁ〜、お前力強ぇんだなぁ!」
これには傍観する玲王も、口をぽかーんと開けて感心するばかり。
さぁお次は、龍青のパフォーマンス!
「
中国拳法一直線・
華奢な身体に軽やかなフットワーク。棒など使わぬとも、フレーム見極めれば避けるも容易いこと。これぞ【天翔道流・青龍拳】の使い手、武 龍青の魅力であります。
龍が長い胴をうねらせるが如く、身体をフルに駆使して相手の急所を貫手一発クリティカルヒット!
そして、数あるカンフー拳法のうちから決め手となる技は、これだ!!
「天翔道流・青龍拳奥義! 『
カンフーの真髄の一つは、五体から成る俊敏な連撃!
龍青は群がる奈落道の束を一気に接近し、貫手・肘打ち・手刀と、1秒になんと十手の技を繰り出し、束になった奈落道軍団を一瞬でノックダウン!
「よーーし、オイラも!!」
あと残す一人、拳華印輪を装着した事により、念願の拳華成闘に挑む事が出来るようになった玲王。
舞や龍青のように、凄い技を出してやろうと、気合を込めて右拳を腰に構えて、遠方から正拳を繰り出す!
「うにゃーーーーッッッ!!!!」
…………しかし、何も起こらない。
「……にゃっ! にゃっ、に゛ゃッッー!!」
ネコ科の鳴き声を発しても、当然何も起こらない。これでは正拳突きも、カッコ悪いただの人間猫パンチだ。
「あれぇ〜? 壊れてんのか?」
装着した玲王の拳華印輪を手の甲でコンコン叩くは、八重歯で噛み付く等しても何も起こらない。だがこうしてる間にも、
ーーSLASH!!!!
「!?」
奈落道の非道は止まらない! 玲王の周辺にあったビルが、斬撃音と共に真っ二つに切り裂かれて、斬り落とされたビルの残骸が、土煙と共に崩れ落ちていく!
これを目の当たりにして、無意識に人々の危険を察知した玲王。己の正義に火をつけたか、無邪気な面から真剣な眼差しに変わり、瓦礫と化したビルの下へ向かう。
〚SETTING...〛
崩壊されたビルの周辺にいた人々が逃げ惑う中、玲王は反対にビル側へ突き進み、被害にあった人が居ないか探る。
その時、常人の何倍もの聴覚・嗅覚がある玲王は、周辺の瓦礫から誰かのうめき声と、甘い香りと血が混ざったような匂いを嗅ぎつけて、負傷した女性を見つけた。
「おいっ、大丈夫か!?」
玲王が発見した女性は高校生くらいの年頃で、ビル崩壊の際に瓦礫と鉄骨が下半身に挟まっており、身体中血と粉塵で汚れてうつ伏せに倒れていた。
「い、痛い……ッ、助け、て……!!」
襲撃前は歌舞伎町でアイスを食べ歩きしてたのだろう。彼女の手元の先にダブルサイズのバニラとチョコのコーンアイスが、砂塵にまみれてグチャグチャになっていた。こんな所で死にたくないと、彼女の目に大量の涙が滴り落ちる。
「な、泣くなよ〜! オイラ泣き虫と弱虫は嫌いなんだっ!! 待ってろ、今助けてやるぞ!」
直ぐ様彼女の下へ向かい、強靭な二の腕の力で、足元の瓦礫と鉄骨を怪力で払い除けた玲王。しかし彼女の脚は、落ちてきた鉄骨によって潰れて粉砕骨折されていた。
歩けないと判断した玲王は、咄嗟に彼女をおぶさって避難させようとするが、
「キヒャヒャヒャ……! 死にそうな女の子み~つけた☆」
玲王の背後に、悍ましくも素っ気立つ程に強い殺気を感じた。
両手にカマキリの大鎌を構えたカマキリ拳使いのマンテラーが、アイスをゴミのように踏んづけて、負傷した女性の胸ぐらを鎌で引っ掛けた!
「お前ッッ! ソイツはケガしてんだぞ、何する気だ!?」
「死よりも価値のある恐怖を喰うんだよ。己の欲の赴くままに、悲痛に、不幸に、
鎌を引っ掛けられ、宙に浮いた女性の顔は、痛みと哀しみが混じり合って、声にもならない程の乾いた吐息が溢れる。その苦痛の声が、マンテラーの心臓にパンプアップさせて薬物ドーピングにも似た増強作用を生み、狂気に彼女の恐怖を増していく。
「そして死にゆく寸前の叫びこそが―――我々の最高のメインディッシュなのだアアアアアア!!!」
もう片方の鎌を振り被り、今にも彼女の首を切断しようとしていた―――その時!!
――――ドクンッッッ…………!
玲王の心臓と、彼が装着した拳華印輪が
そして解き放たれる―――“赤獅子”の咆哮!!
――――――ガォォォォォオオオオオオオオオオオオオッッッッッッ!!!!!!!!
その雄叫びに正義の意志あり!! 怒りに吠えた玲王の叫びが衝撃波となり、マンテラーは勿論のこと、奈落道の下っ端を片付けて駆けつけた舞と龍青にも、この強烈な波導の凄まじさを実感した。
「許さねぇぞ、カマキリ! 平気でメシを踏んづけて、泣いてる奴を面白がるクソ野郎!! オイラがぜってーーーーッ、ブッ飛ばしてやる!!!」
――燃え立つ魂は、
真朱の色を放ち、発動するは赤城玲王のPAS『
「覇ァァァァァァッッッ!!!!!」
気合一発、マンテラーの顔面に正拳を繰り出した瞬間、インナースーツの玲王の姿が変わった!!
――――SMAAAAASH!!!!
その姿、人類の極限に達した胸筋とシックスパックを露わにした筋骨隆々のボディ。そして下半身は獅子をモチーフにしたボクサーパンツだけの超軽型のスタイル。
K1かムエタイか、ファイティングスタイルは未だ定かでは無いが、これだけは言える。
赤城玲王のこの姿に、生きとし生ける動物達の野生の覇気が漂っている事を……!!
いよいよ決戦の時来る、マンテラーVS赤城玲王のタイマンマッチ! 魅せてやろうぜベストバウト!!
本日の試合はここまで! マッチブレイクッッ!!
〚Coming Soon…〛
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