まだまだ甘くなれない、そんな若い林檎に訪れたイニシエーション。

高校生の林檎がよく知らない祖父の葬儀で、よく知らない多くの親戚に囲まれているところから、この物語は始まります。本家の人間だからこうである、分家の人間だからこうであるなど、前時代的な親戚付き合いに辟易する中、派手な身なりの知らない女性から馴れ馴れしく話しかけられ、自分は相手を知らないのに、相手は認知している薄気味悪さを不快に感じている様がありありと伝わってくるようでした。

物語が進行するに従って、派手な身なりの知らない女性、アンズへの印象はどんどん変わっていきます。ある親戚からの醜い行動に耐えられなかった林檎は様々な感情がごちゃ混ぜになって会場から逃げ出してしまいました。アンズは林檎を追って二人きりになり、落ち着かせるとともに林檎を叱咤します。

そのセリフにドキリとしました。誰かに助けてもらえるのを当たり前に思わない。だからこそ自分一人でも強くならないといけない。

そのような正論を言うアンズはどんな人物であるのか、林檎との会話で鮮明になっていきます。それからもアンズの言葉は続き、林檎は決意を新たにします。その決意は健気で力強さを感じさせるものでありました。若い林檎はきっとこれから熟していくのでしょう。