最終話 オカルトお兄さん
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コールオンが鳴り響くオフィス。その一席に座る男に、一人の社員が話しかけている。
「お疲れ様、オカルトお兄さん」
「小林さん。お疲れ様です」
「資料室で見てきたよ、例の件。カワギという怪奇現象の反応が完全に消滅したって記録されていた」
「そうでしたか。それは良かった。めでたしめでたしですねぇ」
「犠牲者は二名出てしまったみたいだけどね」
笑っていない目で、オカルトお兄さんと呼ばれた男は机の付箋を外した。興味をなくしたようにゴミ箱に放る。
「何かご存知なんじゃない? 要観察の怪奇現象が相談の後にいきなり消えるわけないし」
「さあ? どうでしょう? 相談者が自分でなんとかしたんじゃないですかねぇ」
「話す気はない感じか。まあいいや。それと、あの高校生に随分入れ込んでいるようだけど……どうしてなの?」
小林の目線がオカルトお兄さんのデスクに向く。彼の机に貼られた無数の付箋には全て、典太という高校生の名前が書かれているからだ。どう見ても異常な執着だが、誰もその理由は知らない。
「あはは〜、まあ、いろいろですよ」
「秘密が多いな、君」
そう言って小林はデスクから離れる。小林に声が聞こえない距離になってから、座ったままのオカルトお兄さんはボソリとつぶやいた。
「典太くんはね、お兄さんがじーっくり育てている途中なんだよ。他の怪奇現象なんかに取られる気なんてないからねぇ」
気味の悪い笑顔を浮かべて、鳴っている電話に手が伸ばされる。その目はやはり、笑っていなかった。
「いつか成長しきったら……お兄さんが頂く手筈なんだよ」
了
カ ワ ギ 芦屋 瞭銘 @o_xox9112
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