咖喱を付けましょ、ぼんじりに!

るかじま・いらみ

 咖喱を付けましょ、ぼんじりに!

 一万五千年後の未来。


 とある学者が恋人のために、昔の祭りを再現しようとしていた。


 恋人は前文明の、ある島国の風習に強く惹かれていた。


 昔、三月三日にひな祭りという女の子の祭りが催されたらしい。

 恋人の誕生日と同じ日だ。

 ぜひとも自力で再現して、喜ばせたい。

 だが史料が少ない。

 唯一、歌が残されているが、文字がかすれて読めない。


 私の専門は前時代の料理。

 はたして理解できるのか。


 歌の最初の行はこうだ。


 ◯かり◯つ◯ましょ、ぼん◯りに


 さっぱりわからない。


 いや待て、ひなとは鳥という生物の幼体だ。

 たしか鳥肉の部位に、ぼんじりというのがあったな。

 この歌は食べ物を……?

 では、かりとはカリーのことか。

 島国では盛んに食べられていた記録がある。

 ぼんじりに付けて食べることもあっただろう。

 カリーを付けましょ、ぼんじりに

 間違いない、これだ。


 歌の二行目、これははっきり読める。


 ◯はなをあげましょ、もものはな


 なぜ花?

 桃とは化石にも残る果物だが、はて。

 ……後回しにしよう。


 三行目、これはほとんどわからない。


 コ…◯◯ ハ…◯◯の、ふ◯ タ〇コ


 そして最後は、


 きょ◯はたのし◯、ひ◯◯つり


 これは簡単だ。

 きょうはたのしい、ひなまつり


 ひな祭りはひな人形を飾って祝うらしい。

 鳥の幼体を人形にして飾るのか。

 まさかこれも食べ物?

 三月三日にひなを食べる風習があったのやも知れぬ。

 しかしお祝いとは言え、幼体を食べるのは気が引ける。

 そうか、だから人形なのだ。

 おそらく昔は本当にひなを食していたのだろう。時が移るにつれ、それは人形へと置き換わったのだ。


 天啓が頭に落ちた。


 たしか肉を隠語で桜など花に例えることがあった。

 二行目、はなを肉と言い換えれば意味が通る。

 ももは果物ではない、モモ肉だ。

 おにくをあげましょ、モモのにく

 これが正しい。


 とすると、虫食いだらけの三行目も肉に関することに違いない。

 これは昔の文献からすると……。


 コウネ ハラミの、フヨ、タケノコ


 希少部位や珍味ばかりだな。

 ほんとにこんなの食べていたのか?

 まあいい。これで完成だ。

 私見だがひな祭りとは、女の子が元気よく育つことを祈って肉を振る舞う祭りだったのだ。



「ハッピーひな祭り!」


「ありがと、でもたぶん違うよ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

咖喱を付けましょ、ぼんじりに! るかじま・いらみ @LUKAZIMAIRAMI

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ