第3話 奴隷狩りの悲劇

エルナンデ族のキャンプは、穏やかな夜の静寂に包まれていた。



焚き火がゆらゆらと揺れ、星空が広がる夜空が見守っている。


エミリアは父親のイーシャスと共に、焚き火の周りで楽しいひとときを過ごしていた。


「エミリア、今日は特に星がきれいだね」

とイーシャスが微笑んで言った。



「お前が生まれた夜も、こんなふうに星が輝いていたんだ。」


エミリアは父親の言葉に目を輝かせた。


「パパ、私たちの部族はこれからもずっと一緒だよね?」


イーシャスは優しく頷き、娘の肩を抱きしめた。

「もちろんだ、エミリア。私たちは家族であり、仲間だ。どんな困難があっても一緒に乗り越えていくんだ。」




その時、遠くから不穏な音が聞こえた。


イーシャスの表情が急に硬くなり、彼は立ち上がって周囲を見渡した。

「何かがおかしい…」


突然、遠くから馬の蹄の音が響いてきた。


大人たちは一瞬のうちに警戒態勢に入り、子供たちを守るために周囲を取り囲んだ。


しかし、音はどんどん近づいてきた。


数えきれないほどの馬に乗った男たちが、砂埃を上げながらエルナンデ族に迫ってきたのだ。


「奴隷狩りだ!」誰かが叫び、全員が一斉に逃げ出した。


エミリアもミアの手をしっかりと握りしめ、必死に走り出した。


とにかく逃げなければならなかった。


「エミリア、ミアを守れ!」父の叫び声が聞こえた。


エミリアは涙を流しながらもミアの手を引き、必死に走った。



しかし、馬に乗った男たちがすぐに追いつき、彼女たちの前を塞いだ。


エミリアは必死に抵抗したが、子供の力では大人にはかなわなかった。


その間、父は男たちに立ち向かい、奮戦していた。


しかし、数の差は圧倒的で、彼はついに討たれてしまう。

「エミリア…逃げろ…生き延びるんだ…」


イーシャスの声が最後に聞こえた。


エミリアは涙を流しながら父親の姿を見つめ、心が引き裂かれるような痛みを感じた。



山賊たちは彼女を見つけ、無理やり引きずり出して奴隷として捕らえた。






エミリアとミアは冷たい鉄の檻に入れられ、涙を流しながらお互いを抱きしめた。


二人は同じ地に売り飛ばされることになり、これからどんな運命が待ち受けているのか全くわからなかった。

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