第十三章 剣色
翌日の放課後。改めて土地神様に挨拶するべく、色生神社へ向かった。相変わらず夕日が、長く急な階段を照らす。
登り切った後に、お辞儀して赤い鳥居をくぐる。そこにいたのは、真っ白な白衣に朱色の緋袴を着た、青海さんだった。
ほうきで参道を掃除しているようだ。
「青海さん、こんにちは。」
今までできなかった挨拶。決して受け身にならないこと。激闘の末にそれができようになった。
青海さんが手を止めて、こちらに気づいた。
「あ、昨日の赤の柄の、名前は赤山…」
「赤山 盾です。青海さんの下の名前は確か、つるぎですよね。」
「昨日会ったばかりなのによく覚えてるね。」
「それは共に戦った仲ですから。ところで、今日同じ学年の教室で見なかったのって…?」
「あたしは2年だけど、あんたは?」
「1年の3組です。」
「同じ3組かあ。じゃあ、昨日できなかった報告、一緒にしよっか。」
「はい!ありがとうございます。」
二礼二拍手。
土地神様、昨日は赤の柄を使わせていただきました。そのご縁を経て、受け身から変わることができました。本当にありがとうございます。
そして、僕に夢ができたんです。
「幸せを実感するために想像を使い、全てに寄り添って助ける。」
という夢です。抽象的ですが、かけがえのない夢です。
幸せを実感するために想像を使えないまま、消えてしまった者がいるから。
この夢は、土地神様がもたらした「赤の柄」に出会ったからこそ見つけられました。
剣の色に出会ったことでできた夢。
言うなれば「剣色の夢」です。
ここに、赤の柄を使うこと、剣色の夢ができたことを報告します。
一礼。
ふと頭を上げ、境内の後ろを見る。
川のしぶきが、僕の夢を応援している気がした。
剣色の夢(読み切り版) チャカノリ @Chakanori
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