アットホームをうりにする職場はだいたいヤバい

会社の片隅で見つけた「開封厳禁」と書かれた資料。
そこには奇妙な、というより異様な事態がまとめられていた。
それらの資料を文字起こししたものがこの作品。

現実でも「『アットホームな職場』だの『社員は家族です!』とか言う職場はだいたいヤバい」というイメージがあると思いますが、だいたいそのイメージでだいじょうぶです。大丈夫になります。
むしろそうしたイメージからよくここまで……という感想しか出てきません。

初めてモキュメンタリーを読む方にもおすすめです。

というのもモキュメンタリーは資料の断片という性質上、読者自身が謎解きをしたり、キーワードを見つけて結びつけていく楽しみ方があります。
一方でこの作品は、資料を読みながら主人公とともにリアルタイムで謎を追い、謎解きミステリー小説としても楽しめる作りになっています。
また、例えばある人物の名前が「あからさまに怪しい名前」として登場した後、断片情報が段階を踏んで重ねられ、早い段階でいよいよ主人公の前に現れるなど、わかりやすい作りになっているのも丁寧で優しい。

そういった意味では完全に資料だけのモキュメンタリーより読みやすいのではないかな、と。
もちろん、「これはこうかな」と考察することもできますし、ストーリー面でもぐいぐいと引き込んでくるので、次へ次へと読ませてくれます。

主人公とともに怪異に認知されながら、会社に巣くう闇へと迫っていく頃には、ごく普通の言葉さえもが気味の悪いものへと姿を変え、……そしてきっと、あなたも大丈夫になっていることでしょう。

でももしかすると、小説ではなくすべて資料だったのかもしれませんね。
実在しませんとありますけど。

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