第13話 田舎民、再会

 俺はレアと一緒に学園の中の一室にやってきた。


 なんの部屋かは知らないけどここに俺の仲間がいるらしい。


 中に入ってみると。

 女の子が3人いた。


 どこかで見た覚えのある奴ら。

 地下で出会った奴らだ。

 皇族からの指示でプレイグマウスを狩りに来ていた実力者たち。


(なるほど。これならたしかに相手が犯罪者だとしても安心か)


 特に剣を持ったあの戦闘狂みたいなハンバーガー系女子は頼りになりそうだよな。


 ハンバーガーさんが近寄ってきた。


「私はエリス。あなたがアルマだな?」


「そうだけど」


 彼女は小さくこう呟いた。


「これが、……ぅてい、ね」


 あんまり聞こえなかったけど。


 聞こえなかった部分も補完してみる……


(どうていって言ったのか?なんでこの場面で童貞なんていう単語が出てきた?)


 エリスは手を差し出してきた。


「これから長い夜を共に過ごすことになるだろう。よろしく頼むよ」


 アルマ思考中。


 長い夜……。

 童貞煽り。

 まさか……


 そういうことだったの?!


 『私が卒業させてあげよう』ってことでしょ?!これ!


「こ、こちらこそ。よろしくお願いしますぅ……//////」


「なぜそこで赤面している?」

「ふ、ふへへ……」


 とりあえず手を握るだけ握ってみた。


 しばらくの握手。

 エリスはそれから俺の手を離して離れていった。

 それから今度は金髪のクルクル巻のお嬢様系女子が俺の前にくる。


「あなたがアルマね。初めまして、私はシャーロットと申しますの」

「あ、はい。よろしくです」


 ビシッ!


 俺に指を突きつけてきた。


「この3年間で確実にあなたから奪いますからね」

「なにを?」

「もちろん、てっぺんですわ?」


 ん?てっぺん?

 それはどういう意味だろう?


 俺は今底辺のてっぺんにいると思うけど、それを奪いたいってことか?


 最後に、聖女のような姿をした女の子が近寄ってきた。


「アルマきゅん、私はマリアンと言います」


 これまで通り何かしらの宣言をしてくるのかなーと思ってたんだけど。


「アルマきゅん、結婚しよ?」


 ぶふぉっ!

 吹き出した。


 俺だけじゃなかった。

 この部屋の中にいたみんながマリアンを変な目で見ていた。


「え?」


「マリアンはね。もう競走疲れちゃったの。結婚しよ?」


 思考中。

 だめだ。

 何も答えがでない。

 これは言葉通り受け取っていいんだろうか?


 そう思っていたらエリスが口を開いた。


「マリアン、ここでふざけるな。今真面目な話をしているだろう?」


(え?真面目な話だったんですか?)


「そうですわ、マリアン。スカイフィッシュの件について調査を進める必要がありましてよ」


 シャーロットは机の上を指さした。

 そこには地図が置かれてある。


「このシャーロットが用意いたしましたわ。さっそく情報を見ていきましょう」


 俺たちは机を囲った。


 シャーロットがスカイフィッシュの目撃例などをまとめていった。


「まず初めにスカイフィッシュが目撃されたのはこの辺りですね」


 宿の裏手の森……。


(こんな近くでもスカイフィッシュ見れたんだな……うーん)


 気付かなかった。

 誰か教えてくれたら俺も見えたのに。


「で、スカイフィッシュはこっちの方に飛んで行ったそうです、まっすぐ」


 びーっと地図上に線を引いてた。

 やがて、線は国を出て途絶える。


「目撃証言があるのはここまでですわ。ものの数秒でここまで移動したみたいです」

「移動速度がかなり早い、犯罪者集団はなかなかやり手のようですね」

「レア様。なにか情報はないのでしょうか?」

「騎士団に聞きましたが近頃暗躍中の犯罪者集団は【ドルフィン】と呼ばれてるらしいです。構成員は全員がやり手だそうです。国中を渡り歩いているそうですよ。どこの国でも捕まえられず手を焼いてるそうです」


 うげっ。

 そんなに強そうな相手なの?


 大丈夫かなー?

 そのときだった。

 エリスが壁から背を離す。


「とにかくその近辺をしらみ潰しに探せばいいだろう。幸いシャーロットは索敵魔法が使えたな?」

「はい」

「居場所を絞込み、見つけ次第斬るだけだ。さっそく動こう」


 そこでエリスは俺を見てきた。


「ねぇ?……ーてい殿」


 エリスは喋るのが苦手なのか、この人はちらほら声が極端に近くなったりして聞こえずらい。


(ところでなんで俺はさっきから童貞煽りされるの?)


「はやくいこう、アルマ」


 え?俺が先導すんの?

 なんで?

 君らの方が強そうなんだし先導してよぉっ。


 俺はそんなこと思いながらレアに聞いてみた。


「ねぇ、その犯罪者集団【ドルフィン】だっけ?なんで俺らみたいな学生が相手すんの?俺たち公立学園の生徒だよ?」


 普通に考えて無理じゃね?

 だいたい名前書いただけでこんなことになるとは思わなかったなぁ俺も。


「逆に私たちがやらずに誰がやるのです?」


(大人に任せればよくない?)


 レアはエリスに目をやった。


「彼女はこの学園でナンバーツーの実力を持っています。その実力は皇都でも随一と言われていますよ」


(なんで皇立の方に行かなかったんだい?)


 まさか恵まれない環境から成り上がっていく系の主人公属性の人なのかな?


 うん、気持ちは分かる。

 やっぱり成り上がりって見てて気持ちいいしね。


「シャーロットは学年5位の実力者。そしてこの場には学園内一位。さらに今年ぶっちぎりの成績で入学した【皇帝】と呼ばれる程の実力者もいます」


 マリアンに目をやった。


(この子が学園一位だったのか?!ぶっちぎりで入学した皇帝さん?!)


 マリアンはにっこり笑って俺に手を振ってくれてた。


 俺みたいな学園カースト底辺野郎にもこんな素敵な笑顔をしてくれるなんて……う ぅ。

 さすが皇帝様だよぉ。


 そういえばマリアンはさっき言ってた。


 『競走するのに疲れたよ』って。


 今までナンバーワンになるまでに必死に競走してきたのだろう。

 それで疲れてしまったのだ。

 うぐぅぅぅぅぅ……この笑顔を作るまでにいったいどれだけの苦労をしてきたのだろう?この皇帝様はっ!

 俺が支えてあげないといけないのかっ?!


「ドルフィンと戦闘するには十分な戦力でしょう?アルマくん」


「うん。たしかに十分かもっ!」


 でも、俺はいらなくね?

 なんでこの堂々たる素晴らしいメンツの中に俺は呼ばれたのだろう?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Fランク学園と間違えてSランク学園に入学した無能な俺、間違えたことに気付かず勘違いしながら無自覚に無双してしまう。俺は庶民モブのはずだが何故か皇女様がよってくるようになった にこん @nicon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ