全てがプレリュード

 バサっ


 慌てて、布団から身を乗り出す。


「ハァハァハァ・・・」


 酷い、夢を見た。


 リアルで現実的な夢を。


 本当に、あれは夢だったのだろうか。まるで経験したような没入感。あれが正夢というやつか?


 急いでテレビをつけてみる。


 流れてきたのはニュース番組だった。


『・・・斉藤さん、本日はよろしくお願いします』


 丁度、始まったところだった。


 ・・・


 ・・・


 最近の出来事や事件を話していく。俺ただぼーっと聞いていた。


『…斎藤さん、明日の天気をお願いします』


 !?


 夢と同じ展開である。まさか…


『明日から台風の影響で、一日中警報級の大雨が続くと思われます。傘の準備を忘れないようにしましょう…』


 これは正夢である。間違いない。


 あの長髪の男に関わったら…



 殺される。



 台風の日は店を閉めよう。

 そう決意するのだった。


 ――


 線状降水帯が発生した日。


 二人の足跡が近づいてきた。


 足音が止まった。きっと立ち止まっているのだろう。店が開いていないことを確認したからか、足音が遠ざかっていく。


 本当にこれで良かったのだろうか。


 彼はこのまま逃げ切れるのだろうか。


 妻が亡くなってしまった事は知れるのか。


 あの女の子は…


 色々な後悔が渦巻き、扉を開ける。


 だが、そこには誰も居らず、雨の姿しか、見えなかった――

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