三日目

この世全ての光

原初の王

それは自らを炎と称した。



 偉大なる神が、夜空から光る泥を集め、光と泥に分けたその身は、我々人間のように何かを忘れてしまうことなどありはしない。王となり、神の位に至った今も丁寧に、つぶさに過去を眺めている。何よりも素晴らしき神の姿を、目が潰れるまで見つめたこと。怠け者の泥が起きたとき、明るさで泣かせてしまったこと。言葉に余る美しい日々、それを壊した愚かな弟。

 慈しみ深き神の手で、栄光が約束されていると、誰もが信じていた。信じられたその手は、我々を手酷く傷つけた。我々の前から神は消え、楽園は失われた。我々は迷い、惑い、恐れた。指導者が、強き王が、我々を導く光が必要だった。一人、また一人と信じた。『彼ならばあるいは』総意は為った。

「————我が名はファイア、汝の王。汝を導く光はここにあり!!」

 ファイア、我々の王、始まりにして最強の王。炎帝、光輝王、輝石の光、灰と闇を生むもの。彼の命は光あるときまで、彼の手は光届くところまで、神に賜りしその力は、数多の敵を撃ち払い、我々の行く先を絶えず照らし続けるだろう。

 偉大なる光は、大地全て、大空と海中の全てを、神のものとした。災厄と恐怖を降し、大いなる光はその全てを支配した。我々は安息の中にいた。ただ一つの神に祈り、夜明けを迎え、罪は贖われ、子は明るい空の下に生まれる。


 ——神の時代が終わり、王位についた彼は、ファイア(我々の言葉では鉱石の中を反射する光のこと)と名乗り、外敵を征服し、この世の全てを渡り歩いたとされている。その戦記や冒険譚は、今となってもこの国の多くの芸術に反映されている。彼の登場はまさに神話からの夜明けであり、彼の退場は全てを赤く染める日暮れであった。

 少し詩的な表現だが、問題はないと判断する。いくつかの記録を書き写し、持ち帰れるだけの資料を作る。善悪や正誤を判ずるのはわたしの国の学者連中がやってくれる。余計な考えは足を止める、次の資料に取りかかる。

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自未風話 青空館専属庭師 @TRG_gh05t

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