二日目

四人の指導者

一人の神と三人の王


 暇を持て余した管理者が声をかけた。彼は他人への警戒心が少なく、素性が知れなくとも茶菓子を分けてくれた。墓前の茶は少し苦かった。彼はいわゆる学者気質の者であり、この廟の管理と伝承を主にしているらしい。こちらの身分や現状を話すと、珍しいのか、彼はこちらの質問に快く答えてくれた。

「神話の時代から時が経ち、永遠と思われた女王の治世も終わりを迎え、今の王は三代目です。神を初代と数えるなら四代目。それぞれの治世に特色があり、比較すると面白……興味深いですよ。時間があれば神殿の方にもお立ち寄りください。」

 彼の話の節々から、初代の王への敬意がよく伝わってきた。聞けば彼がこの場所の管理をするのも、ひとえに王への学術的興味からだそうだ。この国に滞在する場所を聞いたとき、彼はこの廟を勧めてくれた。そうして、今も少し広い客室を借りている。固定された書棚の本は彼の研究対象にまつわるものが多い。いくつか開いて読んだ、印象的なものを書き留めておく。

 民の上に立ち、民への絶対的な権限を持つ王は、いかなる王であっても、同じ神に従うものである。

 唯一の神はこの世を作り、その全知を分け与え従えた。始めの王は民を守り、またその暴力をもって焼き払った。神代に造られし光であった。次の女王はこの国を作り、その治世を最高のものにした。神代に造られし理であった。

  この国の政治や文化、国民性や死生観に至るまで、神代のものを受け継いでいるように見えた。しかし、現在の王に関する記述はほぼ全て酷評されていた。わたしの国に置き換えれば制度や改革も悪いものではなかった。むしろいくつかの政策は国の役人に伝えたいほどのものだった。それが意図的に思えるほど比較され、扱き下ろされ、否定はされずとも否認されていた。

「……確かにこれは興味深い。」

 学者、研究者、商人、役人、職も老若も関係なく異を唱え嫌悪するこの王は、一体何者であるのだろう。

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