幽霊さんご案内

 たまに死んで三途の川を渡りきった後に、逆走される方がいらっしゃいます。三途の川を渡っている死人さんの間をするするとすり抜ける方法で逆走される場合もあれば、死出の旅の山道から急に振り向き走ってきたり、時には飛び降りて現世へ帰っていこうとする方もいます。

いわゆる幽霊さんですね。

 完全に死んでいるのに現世に帰ろうとする。ちゃんとした幽霊さんです。


 基本は、三途の川の手前の方、お亡くなりになった方がぞろぞろ歩いてくる黄泉比良坂の出口付近の幽霊部署 連絡課の方が対処します。連絡課の方が部署に連絡して、部署からその幽霊さんの行き先を追跡するという流れですね。


 まあ、幽霊となる方はかなり、いえ凄まじい怨みや執着を持っておられるため、下手に手を出すと暴走して何が起こるか分かりません。ですので、幽霊さんになる方を発見次第、監視下においてチェックしていくようです。


 それに基づき、きちんと死出の旅を進んでらっしゃるかを確認する方々も必要となります。こないだロープウェイから落っこちてきた、死出の旅 山課 第1合係の方も、逆走している幽霊予備軍の方を発見し次第、幽霊部署連絡課の方に報告することもあります。そういう死出の旅の

チェックというものは、そのような役割も担っている訳ですね。


 ですので、幽霊予備軍の方を見つけ次第、幽霊連絡課に報告、速やかに幽霊部署に連絡としたいところです。


 ですが、三途の川を渡る死人さんの間をするするすり抜けてくる方や、一度に多くの方が幽霊さんになろうとすると、取りこぼすこともあり得る。そこで、私も川の役人用橋から、そういう方を見つけた場合、幽霊連絡課の方に報告します。全く、助手とはいえ雑用みたいな仕事も流れてきます。しっかたがないですね〜ほんとに。


「こちら三途の川管理人助手。幽霊部署連絡課さん、三途の川で逆走してくる方がいらっしゃいます。黒髪の長い方で顔立ちはつり目、身長は150cm程です。」


「了解しました。」


「三途の川管理人助手さん、無事確認できましたので、追跡することになりました。ご協力ありがとうございました。」


こんな感じ。


「いやあ、助手さんが来てくれてから少し気が楽になりましたよ。前は、ほっと一息ついた瞬間に幽霊予備軍がするっと横を抜けてって、慌てたり、その隙にまたやってきて...なんてことがありましたから...。」


「それは災難な...同じ黄泉の入口として助け合っていきたいですね。私まだ新人ですが。」


「いやいや...あ、また来た。ではこれで。」


 最近は私も少し馴染んでこれたようで、世間話をするくらいには打ち解けてきました。よかった...。あの方々や、川を渡った死人さん誘導係の方なんかはよく連絡を取り合うことになりますからね、良い関係を築きたいものです。


 あ、そうそう、私が見つけた三途の川を逆走していった黒髪ロングの幽霊さんですが、今は自分を殺した夫の愛人の住む家の前に出没し、その近くの柳の下に落ち着いたようです。


お帰りになるのをお待ちしてますよ!

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三途の川管理人助手 元電話交換手の過去とお仕事 恨みを添えて @usiosioai

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