さよなら現代、こんにちは権力。

様々なエンターテインメントを提供しているこの世の中において、
ある種の重厚さをもって人々を楽しませようというものは決して多くないのではないかということに諸兄らは同意いただけるのではないかと思う。
いや、それが悪いということなのではない、ただ多くのものの中から選び取ることができる幅広さということが世の中のあり得るべき姿なのではないだろうか。
その点、この作品は他の作品では得難い重厚さを十分に感じ取り、それでいて痛快さを存分に堪能することができる。

物語の主役は世界設定ではなく、登場人物たち、そして巻き起こる事件事象であることは疑いがないが、これらの登場人物たちに箔というか、奥深さ、奥行きを与えるものはなんであろうか。
それはその人物たちが歩んできた人生であり、経験であり、思慮が一つの要因であると私は思う。それらの人生、ひいては家系に至る歴史を裏打ちすることで私達はこの登場人物たちに対しての一種のリアリティ、ひいては実在性、あるいは感情移入をすることになる。
軽妙洒脱にイベントだけを追いかけていくこともできるだろう、だけど、この作品を読むときは、登場人物たちの一挙手一投足に思いを馳せてほしい。
その行動に至る理由が、どう考えてどう動くか、それがこの作品の真の魅力なのではないかと思うから。

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