薄暗がりの中で嗤う、その『部屋』は。

まるで白昼夢のような記憶。

懐かしい田舎道を走り、辿り着いたのは
古く大きな日本家屋。笑顔で迎えてくれる
祖父母は、相変わらず元気そうで。いつも
通りの真夏の帰省。何一つ変わらない
風景の中に、

    切り取られたような 異質 が。

薄暗がりの廊下の、端に。古い木枠に
縁取られたその部屋が、ほんの少しだけ
開いている。
       いや、閉ざされている。
 開いていた。
         確かに、在った。
黄土色の壁の中に
   薄暗がりのなかに
      堅い木戸の、その中 に。

それは『開かずの間』だった筈だ。
 それは『普通の和座敷』だっただろう?
それは『開かずの間』だった。

   それは『    』だったよねぇ。


否、それは。



      薄暗がりから囁き合う、声。

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