ミステリ文学史
黒岩涙香『無惨』
日本探偵の嚆矢とは此無惨を云うなり
これは今回取り扱う作品のキャッチコピーです。この物語には序文がついていて、前述の書き出しで始まっています。題名通り無惨な殺人事件の謎を解く作品で、後に江戸川乱歩さんが同じタイトルでリメイク版を発表しています。青空文庫でも読めちゃいますよ。
リンクはこちらです。⇩
https://www.aozora.gr.jp/cards/000179/files/1415_21458.html
今回、この作品を紹介するに当たって参考にした文献を先に示しちゃいます。
• 堀啓子. (2014). 日本ミステリー小説史 – 黒岩涙香から松本清張へ. 中公新書.
現代の我々が読み進めてもわかりやすく、むしろ斬新な点も多い。トリックなどに多少根拠が弱い点はあるが、時代を考えれば、ミステリーとして完成度は高く、充分読み応えのある作品といえよう。(堀2014 p.93)
引用部の最後に括弧で著者や出版年を書き添えると、ちょっとレポートや論文の引用っぽさが増しますね。実際に提出するレポートでは慣例として参考文献の一覧を最後に据えるんですけどね。上に引用した本には、この作品に対する江戸川乱歩さんのコメントも掲載されています。
若し「無惨」が十二分の歓迎を受けたならば、涙香は恐らくもっと創作探偵小説を書きつづけたに違いない。(中略) それをただ一度で終わらせ、論理ではなく怪奇と恐怖に重点をおいたボアゴベイやガボリオーの飜訳ばかりさせる結果となったことは、日本探偵小説史上の一つの恥辱であるとさえ云い得る。
(江戸川乱歩 「探偵新小説」『幻影城』)
すごい褒めようなんです。ただし、この作品は今でこそ、探偵小説文学史に残る作品として評価されていますが、この作品が発表された当時の評判は、それほど芳しくなかったのです。そんな『無惨』がどんな小説なのか、一緒に探っていきましょう。
筆者:黒岩涙香 (1862~1920)
本名は黒岩周六、性別は男性です。黒岩涙香というのはペンネームです。萬朝報というゴシップ紙を立ち上げ、彼自身も新聞記者として活躍しました。その取材のしつこさから、マムシの周六という二つ名があったそうです。
そんな涙香さんですが、英語にとても堪能で、翻訳家としても活躍していました。萬朝報にも、和訳した海外のミステリ小説を掲載していたんですね。この作品中にも「ルコック」というフランスの名探偵さんの名前が登場していますよ。
筆者の紹介はここまでにして、作品の中身の話に移りましょう。
六ヶしい犯罪には必ず一のミステリイと云う者が有ます
(難しい犯罪には必ず1つのミステリーというものがあります)
探偵小説といえば、難事件です。難しい犯罪を難しくしているミステリを解く。それが探偵小説というものです。そんな今となっては当たり前のことを、テキストの中で読者に示している部分があるのです。上に引用した文です。「日本探偵の嚆矢」となる小説らしさが、こういうところからも感じられますね。
ところで先程からちょいちょい読みにくい文章が混じっていると思いますが、明治時代の漢字や片仮名の表記は現代の我々が用いているものとは異なっていることが多いので、古文の崩し字ほどではありませんが、解読に多少時間が掛かるという特徴があります。ただ、こうした文体が読みにくいと感じるのは現代の私たちが目にしているからで、当時としてはスタンダードなどで、これは当時の読者達を遠ざける原因ではないでしょう。
・・・結論を先に示してしまうと、『無惨』が十二分の歓迎を受けられなかったのは、メインの読者層が、ゴシップ誌である万朝報を買う人々であったためです。
読者層が求めていたのは、江戸川乱歩さんが称賛するようなミステリーとして推理の筋道が素晴らしい作品よりも、「怪奇と恐怖」をメインテーマとしたゴシック小説寄りな作品だったのです。つまり当時『無惨』があまり評価されなかったのは、論理を重んじ過ぎたためです。
・・・本当に『無惨』の理論は重かったのか、この作品の特徴を5つほど取り上げ、それらを通じて検証していきましょう。
① 落語チック
この作品のナレーションには漢文訓読文の特徴が残されていますが、現代の日本人からしてもかなりスムーズに読みやすい文体になっています。そして、この作品のほとんどは谷間田さんや大鞆さんを始めとした、登場人物達の台詞によって形成されていて、全体として寄席を聞いているような読みやすさがあります。
ただ直接話法の使われ方は未だ形式が定まっていないのか、主に複数のキャラクターの会話が成されている場面の表記方法が現代の小説とは大きく異なっています。その点では少し読みにくいですね。
ちょっと引用します。話者が切り替わりの際には(大)や(谷)のようなマークをついていました。そして、鉤括弧は一連の会話の始まりと終わりにのみ付いていましたので、それに準拠しております。
「コレ是だ、[中略] 縮れっ毛のチョン髷と云うのは無い(大)爾々縮れッ毛は殊に散髪に持て来いだから縮れッ毛なら必ず剪て仕舞う本統に君の目は凄いネ(谷)爾すれば是は女の毛だ、此人殺の傍には縮れッ毛の女が居たのだ(大)成る程(谷)居たドコロでは無い女も幾分か手を下したのだ(大)成るー(谷)手を下さ無ければ髪の毛を握まれる筈が無い [中略] 兎に角、縮れッ毛の女が傍に居て其髪を握まれた事は君にも分るだろう(大)アヽ分るよ(谷)其所で又己が思い出す事が有る、[中略] 今思えば夫が恰度此通りの縮れッ毛だ(大)夫は奇妙だナ(谷)サア博賭宿と云い縮れッ毛の女と云い此二ツ揃ッた所は外に無い、[中略] 何うだ剛い者だろう(大)実に恐入ったナア、けどが其宿は何所に在るのだ築地の何所いらに、夫さえ教えて呉れゝば僕が行て蹈縛て来る、エ何所だ直に僕を遣て呉たまえ」
これを皆さんも読み慣れている表記方法で整理し直してみると、
「これだよこれ、[中略] 縮れ毛のチョンマゲなんてのは無い。」
「そうそう縮れ毛は殊に散髪に持って来いだから縮れ毛なら必ず切ってしまう。本当に君の目は凄いネ。」
「そうすればこれは女の毛だ、この人殺の傍には縮れ毛の女が居たのだ。」
「成る程。」
「居たドコロでは無い、女も幾分か手を下したのだ。」
「成るー。」
「手を下さ無ければ髪の毛を握まれる筈が無い [中略] 兎に角、縮れ毛の女が傍に居てその髪を握まれた事は君にも分かるだろう」
「ああ、分かるよ」
「その所でまた俺は思い出す事がある、[中略] 今思えばそれがちょうどこの通りの縮れ毛だ」
「夫は奇妙だナ」
「サア博賭宿と言い、縮れ毛の女と言い、この二ツ揃ッた所は外に無い。[中略] どうだ、偉いもんだろう。」
「実に恐入ったナア、けどがその宿はどこに在るのだ。築地のどこいらに、それさえ教えてくれれば僕が行て踏ん縛って来る。エどこだ、直に僕をやってくれたまえ。」
となりますね。
ここで1つ補足しておくのですが、当時の文壇では言文一致運動が盛んになっていました。。言文一致運動とは、当時区別されていた日本語の文語(書き言葉)と口語(話し言葉)を統一しようとする文学的な文化運動のことです。中国にも白話小説などに同様の発想が見受けられますね。ちなみに話し言葉によって書かれた文体のことを言文一致体と呼びます。
この作品でも言文一致体の文章を書くことが意識されていて、口に出して読んでみると話し言葉としてリアルな音になって浮き上がってきます。それこそ、自分が講談師になってしまったかのような気分を味わえます。この作品は違いますが、当時は講談師の談話を実際に書き取りした文学作品もあったそうです。
そして、口語体で文章を書くということは、その文章はインテリ層のみならず、庶民層の人々にも読まれることを想定しているということを意味します。つまり、より多くの人にとって読みやすい文章になる、ということです。逆にインテリ層をターゲットにした文章は、漢文的な文章になります。当時の文語は、江戸時代に引き続いて漢文が中心となっていたそうです。
② キャラクター
登場人物の性格がくっきり書き分けされています。特に、この作品に登場している2人の探偵さんは、キャラがしっかりと立っています。2人の探偵というのは大鞆さんと谷間田さんのことです。
無惨の序では大鞆さんのことを「自慢天狗若年」として紹介していますし、実際に生意気が過ぎて谷間田さんを怒らせてしまう場面が複数確認できます。
対する谷間田さんには「老練の探偵」として年齢と経験に頼んで偉ぶった様子があり、大鞆さんは谷間田さんのことを「無学」で「好年イして煽起エ利く」と評しています。2人の探偵さんは、お互いにお互いをライバル視していて、しかも嫌ってい合っている関係性がくっきりと描かれているのです。
また、荻沢警部というキャラクターも登場します。谷間田さんと大鞆さん、両者の上司として、2人ともをいい感じに煽てて捜査の進展を促し、情報を語らせる立回りを担っています。
谷間田さんは作品の終盤に重要参考人としてお紺というキャラクターを連れてくるのですが、彼女は事件解決の鍵として、物語を作り出す謎の全容を語る役割を背負わされています。
メインキャラクターは以上の4人ですが、上記の通りそれぞれの作劇的な役目がはっきりとしていて、ストーリーに分かりやすさを与えています。分かりやすい文章であればあるほど、それは [理論が重くない] ことを意味すると言えますよね。
ミステリはその特性上、理論が重たくなって読むのが大変になりやすいことを、涙香さんはよく分かっていたはずです。キャラクターの設定をシンプルにまとめて、小説の重たさのバランスを取ろうとしていたのかもしれませんね。
③ 刺激的描写
タイトルにも『無惨』とある通り、「怪奇と恐怖」を煽るような無惨な内容は、この作品にもしっかり、しかも一番最初の部分に提示されています。下に引用するのは、この作品で取り扱う事件のあらましを示す新聞記事です。
無惨の死骸 昨朝六時頃築地三丁目の川中にて発見したる年の頃三十四五歳と見受けらるゝ男の死骸は何者の所為にや総身に数多の創傷、数多の擦剥、数多の打傷あり背などは乱暴に殴打せし者と見え一面に膨揚り其間に切傷ありて傷口開き中より血に染みし肉の見ゆるさえあるに頭部には一ヶ所太き錐にて突きたるかと思わるゝ深さ二寸余の穴あり其上槌つちの類にて強く殴打したりと見え頭は二ツに割さけ脳骨砕けて脳味噌散乱したる有様実に目も当てられぬ程なり
要約しますね。遺体は体中に打撲傷や切傷や流血だらけで、頭には穴が開いていて、真っ二つに割れて脳みそが漏れ出ている、などなど。かなり暴力的でグロテスクな遺体の様子が最初に提示されています。新聞記事を引用する体で、事件の概要を少々説明的に読者に伝えつつも、作品世界へと読者を誘導していますね。この書きぶりには、作中の重要な背景情報を手短に伝える効果があります。
発生した事件の1番ショッキングな部分を冒頭に提示する点は、週刊誌などのゴシップ誌に限らず、目を引く見出しで購読者の興味を引く意識と同様のものが感じ取れますね。
④ 作品の中でもゴシップ!
この小説には小間使い(使用人のことです!)の男の子が登場します。作中で台詞を持つキャラクターの内、彼だけが名前を与えられていません。
探偵役を担う主人公の1人である大鞆さんは、自身の科学的根拠に基づく推理に自信を持っていて、逆に老練の経験に基づく「偶れ当たり」で犯人に辿り着く谷間田さんのことを馬鹿にしています。大鞆さんはその考えを独り言として口に出してしまうのですが、小間使いの少年はそれを盗み聞きしてしまって、谷間田さんに告げ口しちゃうんですよね。
煽てれば図に乗ってあれこれ情報を漏らしてくれる、などと谷間田さんを都合の良い情報屋として扱っている彼の生意気さが、小間使いを通じて谷間田さんにバレてしまうのです。
その後、谷間田さんは大鞆さんに怒鳴り散らすのですが、対する大鞆さんは彼の怒らる理由が分からず、不思議に思っている場面が記述されています。その原因が少年の盗み聞きにあるとの結論に至る推理は省かれていますが、荻沢警部に事件の顛末を言って聞かせる際には署長室の扉を閉めて、小間使いが聞き耳を立てていないかを警戒するシーンがあります。
黒岩涙香さん自身が萬朝報というゴシップ誌の創設者であり、自身もしつこいジャーナリストとして有名だったことであることを踏まえると、この大鞆さんの仕草が涙香産の筆によって描かれているというのは、少々滑稽なものを感じますね。「マムシの周六」なる二つ名を授かる程に執念深い取材をする彼は、都合の悪い情報の暴露を恐れて、彼のことを嫌う人々を数多く見てきて、その気持ちをよーく理解していたことが覗えます。
先程も言ったように、涙香さんの小説のメイン読者は、萬朝報の購読者さんたちですので、こうしたゴシップ的な文脈を作品の中に取り入れることは、既存の読者層へのアプローチとしても読み取れそうですけどね。読者のコンテクストに合わせて小説を作ることは、筆者から読者への歩み寄りとして評価できると思います。
⑤ 裏テーマ
この作品に登場する2人の探偵さんたちは、それぞれ対照的な推理をしています。
熟練であり老年でもある谷間田さんは、勘や経験に基づいた、帰納的で、非科学的で、的中したとしても偶れ当たりでしかない推理をしています。
対する大鞆さんは、科学的な捜査によって演繹的に事件の真相に辿り着いています。
この作品は、荻沢警部が大鞆さんに対して「東洋のルコックになるべし」と讃える台詞で締めくくられます。対して谷間田さんは荻沢警部が称賛する大鞆さんの実力を素直に認めることが出来ず、「フン生意気な」と憤った様子で作品の舞台上から退場していきます。
この作品が執筆されたのは明治時代です。明治時代は、西洋文化が日本に流入し始めたばかりの時代です。科学という新しい知識の登場に、新しい世界の可能性を見る人もいれば、科学的な思考というものについて行けない、テキスト中の言葉を借りれば「学がない」人もきっといるでしょう。
谷間田さんだって、ベテラン刑事として働き続けていられる以上は、頭が悪いわけでは無いはずです。ですが、やっぱり科学的な捜査をしている大鞆さんからすれば、谷間田さんの推理が「偶れ当たり」に見えてしまうのは、仕方の無いことだと思われます。
この小説が、日本初の純国産ミステリーという重大な使命を背負っていることは冒頭でも述べたとおりです。
ですがそれだけではありません。非科学的な勘や経験に基づいた推理をする古い人間から、科学的で演繹的な推理によって真相に辿り着く若い人間へと、世代交代をしていく必要性を呼びかけているのです。新しい日本の訪れを喚起する小説でもあると言えるのです。と、私がどこかで読んだ書評には書いてありました。
物語の裏に隠されたテーマを読み取るにはテキストを入念に読み込む必要がありますが、別にそこまで読み取らなくても、この作品を十分に楽しむことはできます。そもそもライトな読者は裏に隠されたテーマが存在すること自体に想像が及びませんからね。よって裏のテーマがあるからと言って、作品が読者から敬遠される理由にはならないはずです。
さて、ここまでは、この『無惨』という小説にまつわる5つの特徴を取り上げて、それぞれに文学テキストを読みやすくする効果があることや、読者を遠ざける理由にはならないことを確認してきました。
ですが、江戸川乱歩さんのコメントにもあるように、「推理」に重点を置いたこの作品は、謎解きの論理が重たすぎるせいで、一般大衆から敬遠されてしまっていたことは紛れもない事実です。
実際に見てみますか?最初に引用した会話文の、[中略] となっていた部分には、実は長い推理の筋道が記述されていたのです。本当に長くて複雑で詳細な推理だったので、要約してお伝えしますね。
大鞆は男の遺体が握っていた縮れた長い髪の毛3本を調べて、縮れ毛の女性の髪の毛であるという谷間田の仮説を否定し、生来の縮れ毛では無く髪を結った際に出来る後天的な癖であると特定する。それからキューティクルの概念を荻沢に説明し、3本の毛の内で真ん中のものが逆毛になっていること、つまりこれはカツラのように入毛している人間の髪の毛であると言うこと、そしてこの結い癖は辮髪のような結い方でしか付きようが無いこと。以上のことから殺人を犯した人物は中国人であると断定する。
要約してもなお、ちょっと長いですね。筆者自身も推理の説明が少々長いと感じていたようで、読者が退屈してしまうのではないかという心配の意識を読み取れる部分がいくつか見受けられます。
(荻)無駄事は成る可く省いて簡単に述ぶるが好いぜ(大)ハイ無駄事は申しません
(大)是が大変な証拠に成るから先ず気長くお聞きなさい
(荻)夫では先ず名前から云うが好い
(大)イエ名前を先云て仕舞ては貴方が終りまで聞かぬから了ません先ずお聞きなさい
これから少しくどい説明が始まるけど、頑張って読んでくださいという涙香さんからのメッセージにも思えてきませんか?あるいは上に引用した3つのテキストを、落語家の気持ちになって音読してみてください。今から長い説明をするから根気深く聞いてほしい、という合図として、聞いている人の注意を誘う狙いがありそうですよね。
現代の私たちはミステリというジャンルの小説を読み慣れているので、私たちの感覚からすれば『無惨』のロジックはそれほど重たくありません。ですが、それまで純国産のミステリを読んだことのなかった当時の読者さんたちにとっては、論理が重たすぎたのかもしれません。なにしろ、筆者自身ですら重たいと感じている訳なのですから。
物語の内容濃度をそのままに文章を軽くするためには、展開を早くしていく必要があります。例えば、小間使いのくだりを挿入しなくても、ご老人が生意気な若者に怒鳴り散らす展開はいくらでも作りようがありそうですよね。登場人物を減らす、余計な情報を省く、そうやって物語は軽くなっていきます。
ですが、『無惨』に関しては、それができない事情がありました。①でも述べたように、この小説が「言文一致」の文体で記述されているからです。
講談は、音楽と同じようにその流れが大切です。基本的に巻き戻すことが想定されていません。話している途中の落語家に、「今、なんて言ったの?」と聞き返すことはありませんよね。
文字テキストにおいては、私たちは好き勝手に読み返したり読み飛ばしたりすることができます。視線を流した1つの文を何度でも眺め直すことができます。言文一致体の文章の場合、そういった想定はおそらくされていません。
元も子もないことを言うのですが、これ以上に『無惨』のロジックが軽くなるためには、言文一致のスタイルを捨ててもらうしかないです。
文字テキストは1度説明したことであれば、[よい読者であれば]遡って確認することができるので、口承文学とは違って既出の情報を必要になった際に再度記述する必要が無いのです。
以上の検討をまとめます。
涙香さんの作品の読者層は、推理の道筋の確かさよりも、刺激や恐怖に満ちた作品を求めていた。
当時の人々は、ロジック重視の合理的なミステリを読み慣れていなかった。
当時に流行していた言文一致体の発想から逸脱しきれず、そのせいでロジックが重たくなった。
以上の3つを、『無惨』があまりヒットしなかった理由として結論づけます。
私の方がミステリ好きだぞっ! 藤井由加 @fujiiyukadayo
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