第二話

「なぜ私が拘束されているんだ。私を誰だと思っている。わかっているのか。ええい、触るな。触るなと言っているだろう馬鹿者」

 悪態を吐いた男の声が開いた扉の隙間から雪崩れ込んだ雑音とすれ違うように顔を見せた男はファイルを開き机を挟んだ向かいに腰を下ろした。

 いくつかの指示を出していたところからするとこの男が纏め役でまちがいない。

「それで、魔力はどこで手に入れたんだ?」

「さぁ、なんのことかしら」

「こちらとしては極刑に処すことも可能だ」

「あら、こわい話? あ、ねえ。さっきの子はどこ? 彼になら話してもいいわよ?」

「……生憎だが嬢ちゃん」

「あら、嬢ちゃんだなんてよしてちょうだい」

「ではなんと呼べばいいんだ?」

「あなたたちはなんと名称付けているのかしらねぇ」

 この男を捩じ伏せたとして、どこにいるか状況も掴めないのだから大人しくしていた方が得策かしら。

「……ねえ、あなたが相手をしてくれるっていうなら、教えてあげなくもないけれど」

「期待に添えず申し訳ないが、私は妻以外に興味はない。他所を当たってくれ」

「あら、それは残念だわ」

 背凭れに上体を預け表情には出さず内心で舌打ちを吐いた。

「それより、あんまりじゃない? 仮にもレディをこんな場所に放って置くだなんて」

「人手が不足していてな。それで、権利は聞いたか」

「さあ、どうだったかしら」

「君の発言は審議会の判断に影響を与える可能性があり、すべて記録され──」

 地響きとともに建物全体を揺らしていた。

「始まったわね」

「……なにをした」

「私はなにもしていないわよ。ずっとここにいたんだもの」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ゲリラ 花壁 @hanakabehanakabehanakabe

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ