第17話 闇から伸びる手
「はあ?そんなこと分かってんだよ!とにかくあのクソ野郎を探し出せ、役立たずが!」
「くそが!どうなってんだ……」
あの
「……せっかく
一番の情報源となりうるレイプ実行犯の二人は何者かに殺されてしまったらしいと
「……ちっ」
時刻は19時になろうかというところだった。
「あら、
「?またってなんだよ。今帰ってきたんだぞ俺は?」
「え?何言ってるんですか、先ほど帰ってこられたじゃないですか?」
どうにも会話がかみ合わない。
「それより坊ちゃん、久しぶりに早く帰ってきたときぐらいはご自宅で夕ご飯を食べてくださいな。旦那さまからも言われてますでしょう?」
家政婦に問いただそうとした
「ちょっと、坊ちゃん。もう、お夕食出来てますからね!早く降りてきてくださいな!」
階段の下からの声を無視して
部屋の明かりをつけようとしたその瞬間だった。
「!!」
「おっと、動くなよ。大声もだ。その瞬間お前は死ぬ。分かったら一回頷け」
太い男の声だった。部屋に隠れていたその男は
「おーけー。大人しくしろよ」
謎の男は
「だ、誰だよお前……。なんで、どうやって俺の部屋に」
「おっと、質問は俺がする。お前はそれに答える。OK?」
「分かってると思うが俺の指示に従わない、俺の機嫌を損ねる、以上ことをするとお前は死ぬ。俺の頭は沸いてるらしいから、あまり待たせてくれるなよ」
謎の男は目を見開いたまま須崎を見定め、にやりと口の端を曲げる。
「魔王ポポンガの妹を知らねえか?
「魔王ポポンガ?何を言ってるんだ?」
「ちっ、こいつも知らねえのかよ。どうすんだよ、ちび助」
謎の男が窓の方に話しかけるといつからいたのか白いローブに全身をすっぽり包んだ裸足の少女が二人に近寄ってきた。
「な、いつの間に」
もはや、須崎は自分の部屋であるにも関わらす何が起こっているのか分からず混乱していた。
「この男がターゲットを知らないのは仕方ない。しかし、私が視認できる範囲にいれば見つけることが出来る」
「つーことは何か?お前をその開堂高校とやらに連れていきゃ誰がポポンガの妹か分かるわけだな」
「そう言っている」
「面倒くせぇが、仕方ねえか」
謎の男は須崎の髪を掴み上げるとその顔を鼻がくっつく位の距離まで近づける。
「い、いてえ、は、離して……」
「わりぃけどよ。俺ら開堂高校に行かかねえと行けねえからよ。ちょっとお前の存在を貸してくれや」
「そ、存在を……貸す?」
須崎は謎の男の言っていることが全く理解できず、ただ髪を離してほしいと懇願した。
「俺は実は盗賊でな。俺らの世界では盗賊の専売特許があるわけよ。それが、『幻惑のスキル』ってやつなんだが……」
そう言うと謎の男は自分の顔を片手で覆う。そしてその手をゆっくりと下にずらしていった。
「……?え、嘘だろ……!!」
――あら、
恐らくこの謎の男は
「お前、名前は何という?」
「お、俺は
「変わった名だな。まあ、いい」
謎の男は
「今日から俺が
須崎は目の前が真っ暗になるような錯覚を覚えた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「コンコーン、入るぞー」
「……普通ノックは部屋に入る前にすると思うんじゃがな」
呆れた声音で暗い部屋の奥から出てきたのは明らかに見た目小学生ぐらいの少女であった。その身長に全くあっていない白衣の裾を引きずりながら歩いている。
「ハカセちゃんあれの進捗どう?」
「わしをハカセちゃんなどと呼ぶでない!馬鹿にしおって!わしのことは所長と呼べと言っておるじゃろうが!が!もしくはマッドサイエンティストと呼べ!」
琴線に触れたのか早口でまくし立てる少女、もといハカセちゃん。
「まあまあ、それでどうなの?マッドサイエンティスト
「さらっと本名を言うでないわーーー!!」
ハカセちゃんはぜーぜーと息を整えている。
「ち、こっちにこい」
ハカセちゃんは舌打ちをするとハカセちゃんは
「これじゃ」
ハカセちゃんが
「人型機械人形
「おおー!すごい。もうほとんど出来てるじゃん」
「見た目はの。肝心の調整が全然まだじゃ。人間が扱えるレベルには到底追いつておらん」
ハカセちゃんはその人型のロボットの太ももにあたる部分に手を当てる。
「えー、それは困るな。もうすぐ敵が来るのにさ。明日には使えるようにならねーかな?」
「なるわけないじゃろ。お主わしが天才じゃからと無理を言い過ぎじゃぞ」
明らかに辟易とした表情を見せるハカセちゃん。
「既に急ピッチで作業中じゃ。早く完成して欲しいなら今のようにわしの邪魔をせぬことじゃな」
「わかったわかった。もう邪魔はしないよ。とにかく急いでくれよなハカセちゃん」
「呼び方戻ってるじゃろうが!がぁ!所長かマッドサイエンティストと呼ばんか!」
暗い研究室にハカセちゃんの声が響くのであった。
異世界護衛の最適解-IAproject- 大森吉平 @kyohei-mori
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