第16話 天宮神無の目的
「あのさ、ご飯無かったらランチミーティングって言わないんだけど」
時間に遅れた上にお昼ご飯を持ってこなかったロイス(
「それが、ここに来る途中に大食いのオークキングに遭遇してしまって。全部食べられちゃったんだ」
「……なにそれ? ちょっと気になるんだけど」
「はい、私のお弁当半分あげるわよ。箸はないから爪楊枝で食べて」
「え!?」
まさかの展開に戸惑うロイス(
「失礼ね、ちゃんと食べられるものよ」
「いや、そこを心配してるわけじゃないだけど……」
「これでもね、ちゃんと感謝してるのよ。助けてくれたこと」
神無はそう言うと少し顔を赤らめる。神無のその表情を見てロイス(
「その、言うの遅くなったけど……ありがとう。助けてくれて」
少し照れ気味にお礼を言う
「なに?私がお礼を言うのがそんなに意外?」
「え?いや、そんなことないよ?」
「いいから、早く食べちゃいましょう。話の本題はそこからよ」
そう言う
「さて、じゃあ本題に入りましょうか」
お弁当を食べ終えた
「あなた、ロイスの目的は私を監視してあなた達の世界へ召喚させないことなのよね?」
「まあ一応護衛ということになってるけどね。その通りだよ」
「つまり、私があなたに協力するか否かがあなたの任務成功の鍵を握っているということにはならない?」
ロイスは思わず言葉に詰まる。現状既にターゲットである
「それは条件次第で僕に協力してくれるってことで合ってる?」
ロイス(
「朝話した時も思ったけど、あなたそこそこ頭の回転早いわね。いいわよ、私も馬鹿の相手はしたくないから」
「一つだけ。私があなたに科す条件は一つだけよ。ロイス、あなた私の犬になりなさい」
その時、時が止まった。
「あら?もしかして異世界に犬っていないのかしら。犬になるっていうのはね」
「い、いや。異世界にも犬はいるし、意味も大体理解している。要するに君の命令を聞く存在になれってことだよね?」
「そう、それが私がロイスに協力する条件」
ロイス(
「三つだ」
今度はロイスが神無に指を三本立てて突きつける。
「三つ?」
「さすがに君の犬になって全て従うというのは無理だ。だから、妥協案。君の言うことを何でも三つだけ聞く。それじゃダメかな?」
「……それは交渉不成立ってことでいいのかしら?」
「……はあ、分かったわ。いいわよその条件で。ただ、三つの命令以外でも私をちゃんと守ってくれるのよね?」
意外にも折れたのは
「勿論、僕の全てを賭けて君を護衛すると誓うよ」
ロイスははっきりとそう言った。
「じゃあ、一つ目の命令ね」
早速神無は三つの内一つを使うと言いだした。しかし、これはロイスにとっては想定の範囲内だった。もともと、
「私の兄を探すのを手伝ってほしいの」
「お兄さんを?」
「名前は
「生きていたら?」
「失踪したのよ。丁度一年前にね。私は表向き進学の為この町に来たけど、本当の目的は失踪した兄を探すためなの」
どうやら
「もう少し詳しく聞いてもいい?」
「ええ、兄はエンジニアとして色んな企業のゲーム開発に関わっていたらしいわ。でも、年の瀬も迫った頃、急に兄の連絡が途絶えた。出社も連絡もしてこない兄を心配した会社の同僚が当時の兄の部屋に行ったらそこはもぬけの空で部屋の真ん中には当時兄が使っていたスマホだけが丁寧に置かれていた。自殺か事件に巻き込まれたのかいまだに結論は出ていない。兄の死体も見つかっていない。そして不思議なことに兄の痕跡は何一つ残ってないそうなの。まるでひっそりと世界から消えてしまったみたいにね」
ロイスにはよく分からない単語もあったが、
「君はそれを調べているわけだね」
「私は兄は生きてると信じている。世界中の全ての人が兄を忘れたとしても私だけは絶対に忘れない。絶対に兄を見つけ出す。でも、正直一人だと限界を感じていたの。そこでロイス、あなたが現れた」
「どうせ、私を護衛するなら私が兄を探すのを手伝いなさい。もし、本当に兄を探し出すことが出来たら報酬は別途渡してもいいわ。だからお願い協力して」
「命令は絶対だろ? 勿論協力するさ。僕らで必ずお兄さんを見つけだそう」
「……! あ、ありがとう」
ロイス(
「お兄さんのこと好きなんだね」
「べ、別に好きじゃないわよ!肉親なんだから探すのは当然でしょ?ただ、……私の好きなものや趣味を笑って聞いてくれたのは兄さんだけだったから……」
「それより、君とか
「わ、分かったよ
その時、ちょうどお昼の時間を終えるチャイムが学校中に鳴り響いた。
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