第18話

 完全復活—


 タクミは目覚めた時、自身の身体が活力に満ち溢れていると自覚した。


 「おはようタクミ、今日は早起きですね」


 キッチンからラナが朝の挨拶をする。


 「そうかな?」


 確かにいつもはラナがドアをノックする音で目を覚ますというのに、今日はその時間より早く起きて食事部屋に着いていた。


 「ところでタクミ…」


 「ん?」


 「昨日のことは覚えてる?」


 ラナの言葉で脳裏に一瞬、何故かお風呂のイメージが浮かんだがすぐに消えた。


 「なにかあったような気がするけど…思い出せないな」


 「うん、なら大丈夫」


 返事を聞いて安心したラナは朝ごはんの準備に戻った。


 ◇◇◇


 「今日行くのか?ダンジョンに」


 パンをかじりながらガストンが尋ねる。


 「そのつもりだけど、D級にもなれたし」


 「そうか…いまさら止めはしないが、全力は出さずに余力を残しておけよ、帰ってくるためのな」


 確かに限界まで粘った結果、昨日みたく意識を失うようなことがあれば…それ即ち死だ。

 

 「あぁ、心に留めておくよ」


 タクミはガストンの言葉を噛み締めた。


 ◇◇◇


 「タクミさん、一体何ですかそれは…」


 タクミの"所業"にやや引きつつも興味を持ったフェリスが尋ねた。


 「これは新発明のスライムボール、スライムを5匹合体させて作ったんだ」


 そう言いながらタクミは発明したそれをサッカーボールみたく器用にリフティングする。


 「それ、生きてるんですよね…?」


 散々な扱いを受けようとも抵抗のそぶりをカケラも見せず、ひたすらおもちゃに徹するスライムを見て疑問に思うフェリス。

 それは傀儡のようで、まるで生き物には見えない。


 「あぁ、頭で命じたらこの通り」


 『離れろ』


 さっきまで一つの塊として固まっていたスライムが命じられるとポロポロと離れて別々の個体に戻ってゆらゆら地面で揺れる。


 D級審査のときに学んだことがある。決まった形を持たない液体のスライムは、もっと自由に扱うことができると。


 極めればスライムが持つスキルだけに頼らず、もっと幅の広い戦い方ができるかもしれない。


 「次考えたのは—」


 「もういいです〜!」


 フェリスはもう聞きたくないとタクミの話を遮って耳を塞いだ。


 ◇◇◇


 そのとき、ガラガラと滑車の音が頭上で響いた。二人は身体に少しの浮遊感を感じた。


 タクミや他の冒険者たちを乗せた昇降機エレベーターは大迷宮の第一層へと下降して行く。


 タクミがいる街を拠点とする冒険者は非常に多い。

 それは街の地下深くに広がる『ロンバルディア大迷宮』が大きな要因である。


 昇降機に乗っているタクミとフェリス以外の冒険者たちはどこかピリピリとした緊張感を漂わせている。


 ズドンッ!


 大きな音と振動が長い降下の終わりを告げる。ついに大迷宮の入り口に辿り着いたのだ。


 なんか、城の中みたいだな…


 それが大迷宮ダンジョンに降り立った第一の感想だった。


 地上と第一層を繋ぐ昇降機を囲うように大迷宮ダンジョンにはとりでが作られている。


 このとりで大迷宮ダンジョンから産み出される凶悪な魔物が溢れ出さないようにする為の"蓋"としての役割を果たしているのだ。


 ここには3種類の人間がいる。このとりでを護る兵、大迷宮ダンジョンを探索する冒険者、そしてここで兵と冒険者をサポートする商人たちだ。

 

 タクミとフェリスはふと、露天商の前で立ち止まった。


 そこでは探索に使う様々な消耗品だけでなく、"傷"や"血痕"が残った中古装備品を探索に向けて最後の準備をする冒険者たちに販売していた。


 「もし迷宮内で死んだら…俺の装備もここに並ぶことになるかな?」


 「そういえば…生き絶えた冒険者の剥ぎ取りで生計を立てる冒険者がいるって聞いたことがあります」


 改めてダンジョンここは凄まじい場所だと思い知らされた。


 少し表情が険しくなったタクミを見てフェリスはニヤリと笑って言った。


 「タクミさん、もしかしてぇビビってますか?」


 「バカ言え俺は…ちょっと考え事してただけだ」


 そう強がりを言ってみたものの流石の俺でもワクワク8割、緊張2割といった感じだ。

 むしろここに来ても表情を変えずケロっとしているフェリスの方が異質なんだが…


 「どうしました?私の顔を見つめて…」


 「何でもない、さっさと行こうぜ待望のダンジョンによ!」


 「はい!」



 第十八話 完



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異世界スライムテイマー!錬成した最強スライム達を従えて異世界ライフを楽しみます 3代目尊大大魔王サン🐕 @sochandai

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