おちて、おちて、その先は。

一つ一つの描写が美しく、怪しく、肌に張り付くような感触に襲われました。

描写の美しさと後ろ暗い激情に引きずり込まれるように読み進めましたが、最終幕で二転三転する情報に翻弄され、驚きと恍惚の中で物語の幕が閉じられ、映画を観た後の現実と物語の世界の中間にいるような、そんな不思議で強い満足感に満たされました。

特に、何度となく繰り返される、どこか官能的で冷え冷えとした「おちる」描写が背徳的で目が離せず、ラストの場面、小瑠璃のおかげで「おちる」束縛から解放されたのにも関わらず、最後の一行が再び「あ、おちる――」なのがもう……。

読んだら最後、きっと誰もがこの物語に「おちる」ことでしょう。

面白かったです!

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