3話

週2の勉強会で、私は怜のことを色々と知った。7月のグループの中で1番頭が良く、要領がいいこと、いつもメガネをかけているのは、昔先天盲だったことでコンタクトするのは怖く、いつ視覚が失われるか怖いからコンタクトしないことなど。

「やばーい!今日の小テスト全然できない!」

「たしかに全然できてねぇーな」

「うるさいよ〜!もー!」

怜は私のことをこうやってからかうが、いつも気にかけてくれる。でも私はこの7月グループのみんなに病気を持っていることを隠している。

いつ打ち明けるか悩んだ。

月日は過ぎて6月、私は医師にこう言われた。

「ブレインフォグ……?」

「深川さんの線維筋痛症と慢性疲労症候群がもともとコロナ後遺症からの発症で、最近忘れがひどいですね。」

コロナ後遺症からの忘れのことをブレインフォグと言い、私はこの症状にも該当するらしい。

私は病院を出て、いつもの薬局に向かおうとすると私の目の前を通り過ぎる幸せそうなカップルがいた。私はこれから人と関わったら楽しい思い出も、楽しい思い出も、辛いところから成長した思い出も覚えていられなくなるのか。毎日違う私になって、自分じゃなくなる感覚が怖い。私は病院帰りに雑貨屋さんに寄った。

「可愛い……!」

それはマンスリースケジュール帳でデザインはクラフトで少し可愛らしい花のデザインが入っていた。私はそれを2つ購入して、家に帰った。

1つは勉強のスケジュール帳。もう1つは

「これから記憶が薄れていく私へ。決して誰にもこのことを言わないで。」

記憶を明日の私へ引き継ぐための日記。私はさっそく今日の事を書く。だけどどうしても手が震えしまう。

「これじゃあ……私記憶ない人って証明してるじゃん……」

私の涙は拭われることなく、せっかく買った新品のノートを濡らした。




スマホのアラーム音がし、目覚めた。そこには2つのノートが。

「今日の予定と勉強……?私は病気持ちで記憶を保つことができないから、日記をつけよう

……?」

私はテレビをつける。するとその日付には6月28日と書かれていた。

「あれ……?45……?」

病気があるのは分かるが、昨日は5月14日のはず……。

「あ!今日授業だ!急がなきゃ!」

私は急いで支度をし、家を出る。そして大学に向かうバスに乗り、講義室へ向かう。たしかどこでも自由に座っていいんだよね……?私は窓側の席に座った。スマホをカバンから取り出し、好きな曲を聴こうとしたら、そこには知らない曲が保存されていて、びっくりした。間違えて保存したのかな?私は好きな曲を見つけて、曲を聴いた。私の楽しくなって小声で口ずさんだ。スマホを見ると知らない人からメッセージが。名前は大西 玲と。

「おはよう!昨日勉強会途中で帰ったからその後のこと書いてあるプリント送るね!」

勉強会……?この人は誰?私は怖くなって既読無視した。今日は朝から世界がおかしい。知らない人からのメッセージ、日付けが違う。私はそれが怖くなって音量を上げた。すると私の前に知らない男の人がいた。

「おはよう!既読無視なんてひどいぞ〜!」

既読無視……思いつくのはこの人が大西 玲という人に該当するかも。でも記憶がないのは誰にも言ってはいけないのは私と私との約束。

「ごめんね!ちょっと忙しくて!」

となんとか誤魔化した。大西 玲は私を不思議そうに見て

「なんか今日深川おかしくない?体調やっぱまだ悪い?」

「え!そんなことないよ!ほら!元気だし!」

と誤魔化せたと思ったら

「え〜。いつもの深川だったら俺がメガネからコンタクトに変えてかっこいい〜って言ってくれるのに……」

と大西 怜は犬のようにしょぼんとした。

「私そんなこと言ってない!」

「あはは!そうだよ。いつもの深川じゃん。じゃあな。」

と言って大西 玲は帰った。なんだ良い人そうじゃん。でも会ったことのない私の名前をなんで知ってるんだろう?体つき的に見たら細くて、腕に時計してたから多分陸上部だと考えてる。

たしか日記では私は勉強会というものを途中で抜けたらしい。私はこれからみんなみたいに明るく生きることとできなくなるのに……そんな惨めな思いするならさっさと辞めちゃえばいいのに。

「私なんか消えればいいのに……」

どうせ私が苦しんでるときは誰1人助けてくれない。人に助けを求めたくなるくらないなら愛なんかいらない。なんで私は生まれてきたの?なんで神様は私に手も足も目も作ったの?これから失っていくのに。最初から全部取り上げればよかったじゃん。

「1年後病気が完治しなかったら自殺しよう。」

その言葉は私にとっての覚悟と死へのカウントダウンとなった。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る