7話

「腎不全です。しかもかなり悪化しているので、もって1年半くらいです。」

倒れた病院先で言われた余命宣告。いつか死ぬと思っていたけど、こんなに早いんだ。私はここからこの世に対する生きる執着をやめてしまった。

「深川?大丈夫?」

私が寝ている病院のベッドのカーテンから怜が顔を出した。

「うん、ありがとうね。もう帰ってくれて大丈夫だから!」

「深川……」

「ごめんね。おやすみ。」

私は目を無理やり閉じた。好きな人の告白の答えも今は聞きたくない。余命も1年。私を挫折するのにはもう十分な仕打ちだ。

「おはよう。深川さん。」

「おはようございます。」

どれだけ辛くても朝は来る。あのあと私は緊急入院することになった。実験として治療行っているのだが、もう体は上手く動かない。私は毎回嘔吐してしまったり、ひどいときは吐血や心不全を起こし、もはや私は抜け殻に近いカタチだった。

「最近の深川さん、話しかけてもほとんど応答がないわね」

「仕方ないわよ。だって実験体ですもの。そりゃあ辛いことが多いし、深川さんの両親はお見舞いですら来ないし……」

私が窓をぼーっと見ているときに看護師が私の噂をしているが、反論もできない。私は今日も力なく生きる。余命が早まることを祈ってしまっている自分がいる。それでも毎晩眠りにつくたびに脳裏に焼き付くのは

せつなくて、苦しくて、泣きたいほど愛おしかった。私は静かに涙をこぼした。

「会いたい……」

その声は会いたい人にも届けられず、届いたのは装置の緊急アラーム音と看護師たちが慌てる私自身の姿だった。

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いつか消える私に光をくれたきみへ 明智 依毬 @moonlight52

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