4話

日記を綴るようになった私は病気がどんどん悪くなっていることがわかった。日によって記憶も症状は別みたい。通院しているお医者さんからは「こんなデータみたことがない!このデータを分析して……」分かっていたが、私を見る目は患者ではなく、実験道具にしか見てない。

私は検査に薬に、実際キツくなるまで体を動かすことを強要され……。もう辛くてたまらない。だけど記憶障害があるからラッキーなことに昨日体験した辛いことを思い出さないで済む。だけど私の記憶障害の場合記憶がない日から過ぎてかは1週間後くらいに思い出してしまうことがあり、そこからメンタルが狂い始め、泣き叫んだり、自分の腕を切ろうとして自殺しようとしたり、生きることを諦めようと何度もしていた。だけどそれができず、私は今日も生きてしまう。ある日の勉強会のとき私は思わぬことをしてしまう。

「え!0点!?だって、深川の得意分野じゃん!」

玲は目を丸くして、こちらを見た。この日は1週間前から勉強していたのに、その内容をまるごと当日忘れてしまうのだった。

「深川さん体調悪いし、早く帰ったほうがいいよ?」

勉強会で同じグループの子が私にそう問いかけるが

「いやー!ごめん!私やっぱ馬鹿だわ!」

と笑って誤魔化した。内心は悔しい。その後も不調は続いた。なんで、なんで……!?

ふざけないで!あんたなんか記憶障害で病気もあるんだから、先生になる資格なんかない!病気だからやってほしくない、あんたのせいで成績下がるんだよ!などと言った私にとっては苦痛な言葉を浴びさせられた。その中で唯一の救いの言葉が「1年後に病気が治らなかったら自殺する」という言葉だ。この世の中は不幸だと私は何度も嘆き、泣いた。偉い人はなにがどんな人も受け入れますだよ。ふざけんな!あなたたちにはこの苦しさ分からないでしょうが!私は夜ご飯を食べながらテレビを見ていた。私は特に見たいものがなく、チャンネルを次々と回していく。私はあるドラマに目を止めた。それは病気に闘う女の子の余命半年のお話。彼氏が必死に支えてくれて、女の子のやりたいことは達成できて、最後は彼氏の腕の中で息を引き取った。普通の人ならきっと感動するだろう。だけど、私は嫌気が差してリモコンのボタンを必要以上に強く押し、電源を落とした。なぜ人は病気になると誰も助からなくなるんだろう?病気は人を弱くして、人格を失くす最悪なものだ。私は憎んでも憎みきれない。そこから思い出すのは身内が病気で亡くなり、私がお葬式に参加したこと。最後は人形のようなやせ細った顔で、最後に顔でもみといたほうがいいと思っても、そこに本当のその人はいない。もはや抜け殻だ。人は亡くなると忘れられていく。その人の笑顔、声を少しずつ忘れていく……。私もきっといつか私が大事に思っている人たちに忘れられていくのだろう。私はそう思った途端涙が出た。分かっているはずなのに、もう引き返せないのを分かっているのに体は嫌だと拒否反応を起こす。私は実験体。いい意味で思えば国に貢献できて、私と同じような症状で苦しんでいる子を助けられる。悪い意味で言えば、実験を何度も繰り返して私の臓器は傷つき、内蔵は抉られ、失敗したらそこで終わり。それなら……

「決めた……」

私は食器を片付け、やりたいことをリストアップした。そしてその中にやらなければいけないことを書いた。それは「自分の病気を誰かに伝える。」ということ。病気を経験したことのある人で、1番伝えないといけない人……私はその人に電話をかけた。それは

「私病気で色々な症状が出て、勉強会にもこれからどんどん行けなくなると思う。

私が打ち明けたのは玲だった。逆に玲じゃないとダメな気がした。久しぶりに感で動いた。

「分かった。言わないでおく。俺にできることある?」

と言われた。本当は慰めてほしいって言いたいけど、私は嘘をつき

「大丈夫!なーんにもない!」

と言い、そのまま電話を切った。私も嘘で塗れた汚い人間だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る