5話

「やっぱり痛むな……」

私は大学に帰る途中体中が痛く、いつもより足取りがゆっくりだった。最近体の体調もどんどん悪くなるし、メンタルも安定しないし、勉強もできない。私は涙を堪えるのがもう限界だった。

「深川?」

私はその声にハッとして、顔を上げるとそこには怜がいた。私は急いで涙を拭き

「なにしてるの?」

と笑顔で振舞った。どうやら怜は部活帰りだったらしい。怜は自転車を押しながら私と一緒に帰る。私はこの前話したことを打ち明けたお礼になにかしてあげたいと考えた。

「怜って好き嫌いないよね?」

と言うと

「ないよ〜」

といつもどおりのチャラい声が。

「よかったらおかず……家に余ってるから食べてくれない?私最近病気であんまり食べれてないから捨てたくなくて。」

と言うと怜は目をキラキラさせて

「いいの!?俺自炊できないからラッキー!」

と言った。へへっと笑う怜の横顔はまるで向日葵のように明るく見た人を元気づける。私はなぜかドキッとした。

「ちょっとまってて」

家に着いて私は急いで怜に渡すタッパーを袋に入れる。そしてそれを怜に渡そうとするとスマホをいじっていた。なんだかんだ私と同じ身長だけど、イケメンだし、スタイルいいじゃん……ってなに考えてんだ私。

「怜?」

と言っても笑顔でスマホを弄る。だから私はデコピンし、

「いてぇ!」

「答えないからだよ!はい!これ!」

と言い、雑に袋を渡す。やっぱりこいつにドキッとする私がバカだ。怜は笑顔で

「ありがとう!」

と言い、自転車に乗ろうとした。怜はなにか

ひらめいたような顔をして私を見てこう言った。

と言い、その場を去った。

その言葉は私にとって鎖をゆるめる言葉だった。こんな私でも自由に生きていいんだ。こんな私でも未来を夢見ていいんだって。依存になってしまうかもしれないが、このとき私は確信した。怜が好きだってことを。だけど私のわずかの希望を崩されることになった。




「実験体として入院ですか?」

「そう。実習前に完治したらこんなに良いことないし、前他の大学で治療が上手くいったらしくて、どう?」

このチャンスを逃す訳にはいかず、私はすぐに

「はい!」

と答えてしまった。私は勉強会のみんなにしばらく休むと言い、入院前日怜にあるメッセージを送信した。

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