1話
「あなたの言っている多様性の教育は具体例がはっきりしていないので、正確に教えていただけますか?」
「えっと……」
「あなたは教育者になる立場ですよね?なぜ私のような学生1人に答えられないのですか?」
私は同期のスーツを着た学生を見つめる。どうしてそう思ったのか気になるから質問したのに、相手は目をそらす。
「さすが、教育の賢者……」
「
私は教育学科3年の
「えっと……」
「間違えたっていいじゃないですか。自分なりの答えをお聞かせください。」
私が質問している人は私に対して答えられずにいる。正直教育者となるから言葉に責任を持たないといけない。
「じゃあ深川さんの答えを聞いてもいいかな?」
焦った教員は私に質問を投げかける。私はため息をついてから
「多様性というのは人の個性がたくさんあると考えましょう。そうすると私たちが受けてきた一斉授業は人の個性次第では勉強内容が入ってきません。なので、個別最適な勉強と生徒指導をし、生きていく力を育てればよいのではないでしょうか?」
と私が答えると周りから拍手がした。
「そう!それ!それが言いたかった!」
と私に質問されていた人は言った。私はうんざりして
「人の考えは奪えないものです。だからあなたが発言しないといけなかったでしょ?今だと私があなたの考えを奪ったような感じがします。」
とつぶやく。周りにいた人はうなずくが、他の人は私を嫌な目で見た。なんでみんな必死に勉強しないの?私には時間がないのに、みんなには時間がある。好きな人と恋をして、仕事に就いて悩んで成長する時間が……。私には少ない可能性だ。
「続いては深川さんの班の発表です。」
と言うと周りにいたみんなは「任せた!」と笑顔で言い、私は眉を下げてうんと答えた。
「はい、私たちが考えた教育はドルトンプランとイエナプランを組み合わせた社会に開かれた教育カリキュラムです。具体的には2つのプランの良いところ取りをして、異年齢での共通した興味・関心にあるもののクラスで分け、また興味・関心が変わっても大丈夫なよう、幅広い授業とその専門家を用意します。そして……」
その後私は教育について話した。
「では質問がある人……」
いつもそう。私の答えに対してなにも質問してこない。つまんないや……。喧嘩みたいに少し穴のあるところを触ればいいのに。
「授業を終わります。」
今日も私のがんばる時間が終わった。私は荷物を持ち上げ、その部屋を去る。バス停に向かおうとすると私の横をワイワイした男子が通る。
いいなぁ、あぁやって楽しめて。私には程遠い人生だ。夢を叶えるまでの有意義な時間がほしいよ。
「いたいな……」
私は2年前コロナ後遺症から線維筋痛症と慢性疲労症候群を発症した。薬を飲んでいても体はもう持たない。それだったら1年後死のうと考えた。
「なんで、私なんだろう……一度の人生で病気も味わえる幸せな人生なのに……」
痛みと吐き気で私は急いでトイレに向かった。
「もういや……」
私の悲痛の声は誰にも響かない。
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