昇華し合う双頭蓮。


 過酷な修行にも関わらず悟りに至れなかった師匠。

 僧侶達の信心を集めてきた彼の失敗は、寺院の存続にも関わる事態になっていた。

 代わりに自分がと名乗り出るは、一番弟子の恵心。

 師匠すら為せなかった大仕事……悟りは実現できるのか?



 双頭蓮とは、1つの茎から2つの花が咲く、珍しい蓮のことをいう。
 その周期は50〜100年に1度と呼ばれ、見たものに幸運を与えるとされている。

 非常にありがたいものなのだ。

 この作品もまた、そういうタイプに属する作品だ。
 蓮の花は泥から咲いても汚れることはない。
 そういった神秘を持っている。

 清らかな気分で読んだ方が良いだろう。
 世俗に染まった眼を通してでは、すべて汚らわしく見えてしまうものだ。

 原始的な欲の強力さと、それに抗う人の意志がまとめられた一作と呼べるだろう。