エピローグ

 貞操逆転世界、それも女性に対して過酷な世界への転生は文字通り俺の運命を変えた。

 男だけの住む街に居ることが耐え切れず、女性に出会いたいという欲望を胸に街を飛び出し、そして理想とも言える美女たちに囲まれる日々を手に入れたのだから。


「カズキさん♡」

「カズキ様♡」


 普段住む城では、セレスさんとニアさんが盛大に甘やかしてくれるだけでなく、生涯を共にする伴侶としてどこまでも愛してくれる。

 そしてそれは二人だけでなく、メルトさんやオリエさんも同じだ。

 そこに時々リリスさんはミューズさんが加わってというのもいつも通りで、本当に爛れた生活を送り続けていると思う。


「どうしたの?」


 もはや恒例となった行為が終わり、窓際に立って月を眺めているとセレスさんが隣になった。

 たぷんと胸が揺れたのは彼女が何も着ていないからで、おそらくこれから寝て朝になるまでこのままだろう。


「……いや、服を着てても胸は揺れるか」

「ふふっ、これだけ大きければね♪」


 ギュッと、セレスさんは俺の腕を抱きしめた。

 そのせいで彼女の胸が歪む光景も、腕に感じる圧倒的なまでの弾力にももう慣れた。けれど飽きることは一切なく、俺のセレスさんたちに向ける想いは日に日に強くなるばかりである。


「なんというか……最近はこうやって過去を振り返ることが増えたというか、こんな場所まで来たんだなって感慨深く思うんです」

「なるほどね、でもそれは私もだわ。一人の時間になると、カズキさんと出会った時のことを思い出すもの――あなたと出会ったことで、私の全てはこんなにも変わったのだから」


 チュッと頬にキスをしてきたセレスさん。


「エッチなことをする時も幸せでいっぱいだけれど、こんな風に軽くキスをするだけでも幸せで……もっと言えば、傍にカズキさんが居るだけで私は生きてて良かったって思えるの。こんな風に思えるようになったのも、全部あなたと出会えたおかげだわ」

「ならそれは、俺も同じことが言えますね」

「ふふっ♪」


 それからしばらく、互いに無言で空を見上げた。

 するとぷくっと頬を膨らませ、唇を尖らせたセレスさんがこんなことを言ってきた。


「でも……ねえカズキさん? 最近よく言ってるけど、もう少し砕けた口調で良いのよ?」

「……あ~」


 セレスさんの言葉は、俺の喋り方に敬語は必要ないというものだ。

 既に深い関係になっただけでなく、その気になればすぐ体を重ねてしまうようにまでなったというのに、俺から敬語が抜けないことにセレスさんは若干の他人行儀さを感じているらしい。

 もちろんそんなつもりはないし、むしろ俺はセレスさんのことを大事なお嫁さんのように思っているんだが……もう敬語は染み付いてしまっているので中々難しい。


「その……意識すれば大丈夫なんだけど、敬語の時はそれだけリラックスしてるってことかな?」

「そうなの?」

「うん。というかセレスさ……セレスと一緒に居てリラックス出来ないなんてことはないしなぁ」


 セレスさんだけでなく、他の人たちも同様だ。

 完全に気を抜けてリラックス出来ているからこそ、今まで通りの喋り方になってしまう。

 というか俺の方が圧倒的に年下なのもあるけど、それを言ってしまうとセレスさんたちは凄まじいまでの年上だからな。


「でもそうね……無理に変える必要は無いのよね。でもカズキさんはいずれ、このエターニアの王となるのだから……っていうのはちょっと押し付け過ぎかしら?」

「いや、それは俺も承知したから大丈夫……果たして俺が、その場所に相応しいのかはともかく」


 これからの俺の人生は、この国でずっと過ごすことになる。

 後々にセレスさんと婚姻を結べば、俺は女王であるセレスさんの相手となるので必然的に立場は王だ……ただ、正直なことを言えば俺が王というのは本当に想像出来ないし、むしろ相応しいとも思えない。


「王と言っても、何かが変わるというわけではないわ。ただ、他の国から客人が来た時とかは少しだけ挨拶をすることもあるでしょうけれど」

「……俺が王かぁ……王様かぁ」

「良いと思うけどねぇ。カズキさんは私だけでなく、他の関わった女性たちのことを考えてくれるし、優しさが溢れる王なのだから相応しいと思うのだけど」

「優しいだけなら誰でもやれそうだけど……」

「優しいだけなら……ね。でもカズキさんは違うのよ――あなたの優しさは、本当の意味で私たちを包み込んでくれるから」


 俺の力は……俺のスキルは彼女たちへの想いで強くなる。

 確かにそういう意味でなら、俺の力が発動するとそれは彼女たちを包み込む優しさへと変わるんだろう。

 だがあまりにもそれは俺にとって普通のことすぎるんだよ……だってそうだろ? 好きな人に優しくしたいとか、ずっと大好きだって感情を持ち続けるのは至極当たり前のことだから。


「だからカズキさんは今まで通りで良いのよ。というか、全然らしくないんじゃない?」

「え?」

「王として過ごす中、カズキさんの大好きなエッチなことを続けていけば良いのよ。それに応えるのも私たちだし、こうやってプライベートで求め合うのも私たちの愛の形だしね♪」


 クスッと微笑み、セレスさんはそう言った。


「そう……ですね。一度やると決めた以上、こうしてウジウジしても仕方ない……俺はやるぞって気持ちで頑張ります。俺が王様だぁ!!」

「その意気よ♪」


 一度やると決めて途中で投げ出すのは男じゃねえ!

 そんな想いを胸に秘めるように、俺は改めてこの世界で生きることに決意を固めたのだった。


「……ありがとうセレス」

「え?」

「俺は本当に、あなたに会えて良かった」

「……えぇ、私もあなたに会えて良かったわ本当に」


 この世界で、もしかしたら大切な人が出来なかった運命もあったはず。

 けれど俺はこうして大切な人たちと共に居られるし、俺が望んだ未来に向かって歩きつつもある。

 なんだ、何も怖いことなんてないじゃないか。

 俺はただ、この大切な人たちと一緒に居れば良い……それが俺の望むことだから。


「とはいえ……」

「??」


 貞操逆転世界……やっぱ最高やな!!




【あとがき】


ということで、今作はこれにて締めとなります!


何だかんだ十万字以上書いてるので頑張ったような気もしています。


それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました!

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過酷な貞操逆転世界で女性に会いに行ったら、何故かヤンデレになって神のように崇められていた件 みょん @tsukasa1992

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