第7話 エピローグ
「多和先生?」
目の前で抱き合って泣く愛美と彰良を眺めながら、ワタシの顔も涙でグチャグチャになっている。結局、一年前から今までずっと、自分は無力な傍観者でしかなかった。そんな我が身が嫌になり、隣に立つ先生に問いかけた。
「ん? どうしたんですか、由佳さん?」
先生は、深刻な事実を解明したとは思えない、柔らかい笑顔でワタシの顔を見てくれた。
「ワタシたち、これからどうしたら?」
昨日、出会ったばかりの人に聞く質問ではない。そう分かってる。でもどうしたら?
「えっと、それは直近のことっすか、それとももっと長いスパンの?」
「んんん? あー、えーっと」
「はは、すみません。そんな先のことは、まだまだ考えられないですよね」
「はい」
「まあ、まずは月並みな助言で恐縮ですが、遊歩道周辺で捜査を続けているはずの警察の人に、今から行って正直に告げることです」
「ええ、まあそうですよね。でも、それじゃあ」
「はい、残念ながら、愛美さんと彰良さんは捕まっちゃいます。でも、そっからしか再スタートはないっすよ」
「再スタート……?」
「そうです。復讐の信念を貫いた愛美さんも、大切な人のために無謀な行動にでた彰良さんも、褒められないかもしれませんが、すごいと自分は思います。そして、そんな二人を、これからも友達だと思い、支えたいと思う由佳さんもね。だからもう一度、みんなでスタートできるよう頑張ってください。自分も皆さんのために、しっかり証言するっすから」
多和先生は、柔らかい声音でそう言うと、ショートヘアの頭を盛大に振って、ウンウンウンと頷いたのだった。
了
亀の厭還し 阪口克 @katsumisakaguchi
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