夏の夜を駆け抜けろ!

 ロードバイク×百合。最高の組み合わせを大好きな作家さんが最高に調理してくださいました。最高かよ。初っ端から30km/hオーバーなのですが、そこから物語がどんどん加速していきます。そこには爽やかさだけじゃなくて、考えさせられるような重みもあって、でもだからこそ、その重みを振り切るような最後のライドが胸を打ちました。(おそらく最後50km/h以上出てますよね?)
 
 ここからはちょっと誰にも伝わらないかもしれないことを言い出します。だって好きなので。まずロードを乗る人間としては、シフトの切り替えのタイミング(フロント落とすほどの加速ぅ!?)とかギア比とか細かいところの描写も最高なのですが、(おそらく意識してだと思われますが)文体自体がケイデンス90くらいで回している感じがして、だからものすごく心地好く進んでいくんですよね。(わかりますかねこれ?)
 あとは風ですね。諏訪野氏(伊集院さんがそう呼んでいたので)は風使いですから、もうずっと読んでる間、いろんな風を感じることができて、これもたまらないわけですが、そんな中で「何気ない風を装い」とかを入れてくるあたりが、にくいぜ諏訪野氏!
 あとロード女子×流体力学! ここにも伊吹さんの速さの秘密をいれてくるあたりがわかってらっしゃるというか、にくいぜ諏訪野氏!

 だんだんレビューじゃなくなってきたので、最後にヴァンパイアの解釈について。香澄ちゃんは自分のことを眷属だって言ったけど(ここもエモいのだけれども)、伊吹さんにとって香澄ちゃんはやっぱり太陽だったのかなって思うわけで、だからこそあのセリフ(正確には地の文だけれども)がまた超絶エモかったです!

 ――出遅れたね太陽さん、おあいにく様。

 本当に最高でした。超超超おすすめ作品でございます。

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