その境遇に悲観することなく、前を向いて生きようとする少女の物語。

藍色の目を持つ少女、咲羅は時代に取り残されたような村で拾われ育ちました。黒色に混じれない咲羅は、父母の愛に恵まれながらも、疎外感を募らせていきます。
そんな時に村に起きた事件が切っ掛けで、咲羅の生活は一変し、学園で徐々に居場所を見つけ始めることになるのですが、その過程が繊細な描写でつづられています。
離れ離れになってしまった父母といつか再会するためにも、その境遇に悲観することなく前を向いて生きようとする少女の物語と私は感じました。

以前、この作品を批評させていただいたのですが、その時は特に第1章の分かりにくさ、不可解さに少々手厳しい評価をしておりました。
それはうまく言語化までには至らず、拙いものがあったのですが、作者様はそれでも真摯に向き合われ、改稿に熱心に取り組み、現在は見違えるような状態に仕上がっています。

咲羅が感じていた孤独、そして、どんな背景があって、なぜ事件の折に村人があのように排他的な反応をしたのか。今では分かる気がします。
それにより、受け入れてくれた学園の人間たちの暖かさが一層際立つような、素晴らしい導入です。