imaginary...
崩菜
私の町の妖怪
今夜も暑いですね。
ひとつ、怖い話でもしましょうか。
僕は昔、電車が一日数本しか走らないような田舎に住んでいました。何の変哲もないその町にはこれといって特筆すべきものもありませんでしたが、ただ一つ奇妙な噂がありました。
子どもと一緒に遊ぶ、いたずら好きな妖怪の噂。
おばあちゃんから聞いた話によれば、その妖怪は適当な子どもに憑りついて、その友人として数年を過ごすのだとか。
僕の友達も、その妖怪に会ったことがあるらしいです。
彼は幼少期、カレンちゃん、ヨースケくんという二人の子供とよく行動を共にしていました。
ある日、彼はヨースケ君と一緒に自転車で遠出をしたことがあるそうです。
遠出といっても小学1年生、せいぜい隣の市の公園に行く程度です。
そこでカブトムシやセミ、カマキリなんかを捕まえて遊びました。
しかし、高校生になってから両親にヨースケ君の近況について尋ねたところ、そんな子は知らないと言われました。さらに、カレンちゃんは、僕の友達と一緒に隣町の公園へ行ったのは自分自身だと記憶しているようです。
しかし、今も昔もカレンちゃんは虫が大の苦手。昆虫採集などに付き合うはずがありません。
どうやら、成長するにつれその妖怪は子供のもとから離れ、思い出の中の妖怪の役割は、子どもの身近な人に置き換えられるようです。妖怪のことは忘れ去られ、覚えているのは一緒に遊んだ本人だけ。
かくいう僕も、その妖怪に憑かれたことがあります。
僕にはユカリ、ミヤコという二人の幼馴染がいました。
ユカリというのはクラスで人気の女の子で、幼い僕は彼女に淡い恋心を抱いていました。
小学2年生のころだったか、僕は彼女に告白をしました。
その時はフラれてしまったのですが、実はユカリが妖怪だったのです。
中学生に上がるころにはユカリは僕のもとからいなくなってしまいました。
あとはお分かりでしょうか?
ユカリは皆の記憶から消え去り、僕はミヤコに告白したことになっていました。
ミヤコの本名は宮古俊太郎。れっきとした日本男児です。
記憶を書き換えるにしても、妖怪にはもう少しうまくやってほしいものです。
僕らは同じ中学校へ進学したので、僕はホモとからかわれ、いじめられるようになりました。ミヤコも一緒になってからかってきました。
人間って怖いですね。
おあとがよろしいようで。
imaginary... 崩菜 @aobatoyes
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます