尊厳をめぐる戦い。ここにはそんな「極限」が描き出されていました。
人生に絶望し、死を意識していた主人公。
だが、そんな彼が外を歩く途中、「大自然の呼び声」が強烈に彼の全身にこだました。主に、腹の奥へと。
まずい! どこか……どこか、近くに救いとなる場所は!
コンビニの店内へと咄嗟に駆け込む。幸いトイレも借りられ、無事に彼は「自然の声」に応じることに成功する。
しかし、受難は終わらなかった。トイレのドアを開けた直後、刃物を持った強盗と鉢合わせに。
どうする、どうすればいい? そんな葛藤をする途中、まさかの「第二波」が襲い来る。
頼む! 邪魔をしないでくれ! そう必死に願う彼だったが、強盗にはすんなり話が通じない。
まさに内憂外患。刃物を持った強盗と、体の中でまさに爆発しようとする「爆弾」の存在。
もし、間に合わなかったらどうなる? このコンビニが「グラウンド・ゼロ(爆心地)」となり、誰かが掃除することになってしまうのか?
それとも「爆弾」らしく、この強盗に対して「投擲」する用途で使われてしまうのか!?
なんという「BAD COMMUNICATION」! このままでは、彼は人であることを捨て、ゴリラになってしまう!!!
果たして、彼の運命は!? 爆弾の行く末は!?
成野様の作品で、コメディを探しながら、お、これなんかすごくいいな、と以前、読ませていただいていた「急降下する爆弾」を再読しました。
生涯最後となる食事、自分ならどうするかと、妄想しつつ。
以前は、気が付かなった何気に登場するダジャレと、細かい設定の社会問題が織り込まれ、主人公の心の声が走馬灯? のようで面白い。
でも、ラストは、なぜか心温まる。
作者の優しさがあふれている作品だなあ、と思いました。
気づけば、自分はコメディを探していたはずだったのに。
感動にしんみりしている。
「急降下する爆弾」です。
お薦めいたします。
面白い物語です。
でもその前にまず作者の紹介から始めしょうか。はい、始めます。
成野淳司さんこと〝令和のドタンバさん〟がこの物語の作者です。
幼少期より数多の小さなピンチをくぐり抜けドタンバをかわし続けた彼。
〝辛酸なめのエキスパート〟なのは、彼のエッセイが記すところです。これも後で読みましょう。
そんな彼だから、ですかね。
戯けた文が巧みなのです。
自身の境遇から醸し出されるリアルがそこにあります。
常人では伺いしれない機微があるのです。
きっと彼は特殊な訓練を受けています。
本作もその例に漏れず真っ当に笑えます。
人生を放棄すると決めた男が巡り巡ってコンビニのトイレに行き着きます。
漏れそうだったからです。大きい方が。
運命は、そこからさらに一転します。
人の尊厳とバイトの清掃範囲。
それぞれの守るべきものをかけて悪に挑む者たち。
その結末は主人公たちの未来をも変えてゆく。
ざっとこんな話です。
読むうちに主人公を応援したくなる。
最後は拍手をおくりたくなる。
そんな物語読みたくないですか?
ここにあるのです。
読むしかないです。
まず、紹介文を熟読していただきたい。…死のうとしている、ある人物の話。…排泄に関する表現?もしかしてタイトルってそういう意味?…え、強盗とやり合うの?ナニゴト?この小説、何が起きてるの?…アナタはもう、この小説への興味でいっぱいのはずだ、読み始める直前の当レビュー筆者のように。
彼は真剣に悩み、苦しみ、闘った。その果てに希望があるのかもわからないままに。…それなのに、謎の笑いが腹筋を責め立てる。彼はこんなにも真剣なのに。しかし、フィクションと違って、現実はこういうもの、かもしれない。生きていくのはキレイゴトではないのだ。彼はそれを、身を持って教えてくれた…のかもしれない?