大阪怪物(読切小説)
ako
大阪怪物
人を喰い、人を支配する。それらを怪物と呼ぶ。大阪で多くの一般人を怪物に襲われ、亡くなっている。警察も対処するこが困難な事から、政府が新たな対策を設立し、怪物捜査庁(MIA)という政府機関を設立した。また別の組織も自ら設立している組織もある。この物語は”橋本 京成”の物語である。
目が覚めると、窓から明るく光っていた。時計を見ると、時刻は9時だった。
「もうそんな時間か……」
布団から立ち上がり、洗面所の方に行った。そして目を開くと、左目が紫色をしていた。
そう、彼は怪物だった。
彼の名前は、橋本 京成。18歳で一人暮らしをしており、爽やかなツーブロックの髪型をしている。のちにMIA(いわゆる怪物捜査庁)から全国重要指名手配にされている人物だ。
橋本は暗い人生を送っている。だが彼は人を喰ったりしない人だ。逆に怪物を食べる人である。歯磨きをして、うがい、髪型を整え、洋室のクローゼットからパーカーを着て、外に行く準備をした。玄関の右側に写真があった。その写真は付き合っていた先輩である堺 咲夜である。橋本はある事を思い出す。そう、堺が怪物捜査官に殺される瞬間を
数秒だけ目を閉じ、再び目を開けて、外に出た。外を出た瞬間、パーカーを頭から被った。彼が住んでるエリアは住之江区だった。南港口駅まで歩き、電車に乗って約38分、大阪駅に行った。ここで有名なレストランに行った。
橋本は注文を頼んだあと、スマホでニュースを見ていた。そのニュースは怪物の批判的な記事や差別的な記事しかなかった。彼は思わず小さな声で言った。
「この印象操作しか出来ないマスゴミが」
従業員が橋本の方にお酒のワインとコップを持って来た。
「お待たせしました」
「ありがとう」
橋本はワインをコップを入れ、コップでワインを振り、そして匂いを嗅ぐ。
相変わらず、いい匂いだ。
怪物はお酒だけ飲むことが出来る。そして一口飲み、コップを置いた。
「やっぱ、ここが一番おいしい店だ」
数十分後、お会計してる時に高齢の店長から話しかけられた。
「よく来るね。うちの店で」
「ここのお酒、美味しいので」
「いつもありがとうな」
実は店長も怪物だった。
「なあ君、ここ数日MIAが大人数でうろついてるから気をつけたほうがいい」
「え?」
「もしかすると、君が住んでる住之江区でも、MIAが来るんじゃないかな?」
店長がMIAの情報を話してくれた。
「そうですね。これから気をつけます」
夕方
橋本は人が少ないところを歩いていた。すると誰かに蹴っている音が聴こえた。
「おらぁ!」
「死んでしまえ!」
橋本はすぐ建物に隠れた。紺色の制服の二人......そう、怪物捜査官だった。そして蹴られているのは、若い女性だった。それを見た橋本はすぐ怒りになった。
こいつら。
「やめ、やめてください」
「お前に指示する権利はねえ!さっさと白状しろ」
「もうお前は収容行きだからな。ほら!はよ吐け!」
再び暴力し始める怪物捜査官達。しかし上からナイフのような物が一発降って来て、一人の怪物捜査官が右肩に当てられる。
「があ!」
「おい!どうした!」
「その人を何をするんだ」
電柱の頂点に立つ眼帯を付けた男。橋本だった。
「貴様!怪物か!」
捜査官は刀を開き、その刀を半分に斬り、二刀流の態勢で戦う。それに対して橋本は右手を上げ、後ろから大量のナイフが上がってきた。
「やめるなら、今のうちだ」
「や、やったろうじゃないか」
京橋は見下す顔で
「じゃあ、やるか」
右手を捜査官の方に向くと、大量のナイフが捜査官の方に攻撃し始めた。
「嘘だろ……」
捜査官はすぐ刀でかわしたが、右腕に1本、左肩に2本のナイフに刺された。
「クッ!……ハッ!」
目の前には橋本がいた。右足から顔を狙い蹴り、捜査官は思いっきり吹き飛ばされた。数十メートルまで吹き飛ばされ、再び立ち上がる捜査官。しかし思わぬ光景を見てしまう。
「こいつ!化け物か!」
そこに置いていた物、そして地面も浮かび始め
「これが最後の警告。やめるなら今のうちだ」
「クソ!退避するぞ!」
二人の捜査官は北の方に逃げ去った。物や地面は浮かぶのやめ、ナイフも崩れ消えた。
「あの、助けてくれて……」
若い女性がお礼を言う最中に、京橋は左手で彼女の左手を掴み
「逃げるぞ。ここじゃ危ない」
「え、あ!」
橋本は彼女の手で掴みながら西の方に行った。数十分後、二人は淀川まで走り、階段で座っていた。
「大丈夫?」
「うん。あの、助けてくれてありがとうございます」
「別にお礼なんていらないよ」
橋本は少し微笑んだ。すると彼女は質問する。
「あの、お名前は?」
「橋本。橋本京成。君は?」
「大津小春」
彼女の名前は大津 小春。橋本と同じ年で、黒髪のミディアムレイヤーのストレートの髪型をしている。彼女の首に少し痣が残っていた。さっきの蹴られた怪物捜査官なのか。それとも過去に誰かにやられたものなのか。橋本は心配しそうに言った。
「あの、本当に大丈夫ですか?」
すると大津は橋本に気づかれたのか、右手で痣を隠した。
「大丈夫ですよ。このくらいすぐ治りますので」
笑顔で言う大津。だが橋本はまだ心配しそうな顔をしていた。
「橋本さんって、怪物でしたね」
それを聞いた橋本は、驚きもしなかった。
「うん。ごめん。僕が怪物で」
「いいですよ」
「え?」
「怪物は一般から悪いイメージですが、私はそんなイメージしてません。むしろ怪物になっているほうが羨ましいです」
そういう大津に、橋本は驚いた。
「あの、今日は本当にありがとうございました。後日、そのお礼差し上げても……」
「いいよ。お礼は」
「で、ですが……」
橋本は立ち上がり
「じゃあ、気をつけて」
「あ……」
橋本はここから歩き去った。
怪物捜査庁(MIA) 本部
「二名が負傷したのか」
ポニーテールウィッグような髪型している女性が、自分の髪をいじりながら言う。
「はい。犯人は恐らく独眼の怪物かと」
「フーン。そうか」
すると女性は両手を組み始めた。
「もし見かけたらすぐに私に連絡しろ。いいな?」
「はい!」
部下の女性はここから出て、失礼しますと礼しながら言った。そして扉を閉めると、女性はこんな事を言う。
「前回はやられたけど、次は倍返しにしてやる」
この女性は名張 千歳だ。当時は19歳であり、階級は準特補捜査官であり、のちに女性初となる最高等捜査官になる人だ。この準特補の階級は上から4番目であり、当時の名張は19歳でありながらも準特補捜査官になるのは異例であり、女性で20歳以下になるのは初だった。また功績も残っており、年間の怪物駆逐数が200体という異例な記録であり、また上の頂点である最高官から贈られる鳳堂賞を受賞するなど、数々の記録を塗り替えた人である。
夜
橋本は家でソファーに座っていた。テレビをつけると夕方に起きたニュースが流れていた。
「今日夕方、大阪駅の国道176号の近くで怪物に襲われ、確保していた怪物が逃げられる事件が発生しました。当時確保していた捜査官2名は、両肩にナイフに刺されるなどの軽いけがでしたが……」
橋本はテレビを消した。どうせどのチャンネルでも同じニュースばっかりやってるだろうなと思い、リモコンを置いた。
「寝よう」
橋本はソファーから立ち上がり、ベットの方に行き、すぐに寝た。
そろそろ対策とらないと。
翌日
橋本はまた大阪駅に行っていた。昨日と同じレストランの店に行くと、大津が声をかけられた。
「橋本さん」
「大津さん!?」
再び遭遇してしまった二人。すると大津から橋本にお礼を差し上げる。
「橋本さん。これどうぞ」
大津が差し上げたのはお酒のビンだった。
「え、そんな大丈夫ですよ!」
「いや、お願いします!」
すると橋本はある事に気づいた。
「あの、なんで酒を持って来たんですか?」
「その、調べていて……」
調べてくれたんだ。怪物の好物を。
怪物は日常で食べる物は無理であり、唯一いけるのはお酒とコンソメスープだった。差し上げに渡さずにするのは失礼だなと思い、お酒をもらった。
「あの、ありがとうございます。そこまで調べるとは……」
「私、怪物に興味あって……」
大津は怪物の事が興味があるようだ。二人は店の中に入り、二人ともお酒を飲んでいた。
「この店、美味しいですね」
「ここの店はお酒のグランプリで多数優勝しているので」
「そうなんですね」
大津は店内の周りを見ていた。壁には多数の受賞や賞状が置かれている。
「あの、なんで怪物になったんですか?」
「遺伝されてたんだ。母親が」
「そうなんですね……母親は今は何をしているんですか?」
「もう亡くなってる。俺が8歳の時に」
大津はかなり驚いていた。
「あの、なんかごめんなさい」
「あ、別に謝るべきじゃないよ!」
すると橋本は母親に殺されたのを思い出す。橋本は8歳の時に怪物捜査官2名に家に追撃され、橋本はクローゼットに隠れていた。母親は帰ってほしいと説得した。しかし怪物捜査官達は応じず、母親に向かって塩水を出した。すると母親はかなり嫌がっており、一人の怪物捜査官は母親に向かって、頭を銃で当てた。
「最後に言い残す事はあるか?」
すると母親は泣きながら言った。
「私は、普通に生きたかっただけなのに……なんで、なんで……こんな不幸になるの。もう死にたくない……」
バーーーーン!
捜査官は銃を撃った。そして母親は頭に命中し、後ろから倒れた。その時見た橋本は、捜査官2名を顔で覚えた。本当は叫びたかったもの、ばれたら殺されるので、息を殺しながら泣き始めた。そして意識が無くなった母親は、捜査官達によって引きずり出し、ここから去った。それに対し橋本は悲しみながらも、怒りを感じ始めた。
他人を考えない社会人の価値のないゴミクズが。俺が大人になったら、粉々にしてやる。
橋本さん……
橋本さん。
「橋本さん?」
「ん、あ、ごめん。考え事してしまって」
橋本は大津に謝った。
「あ、いいのいいの。お酒飲み終わったら、あそこ行きましょう」
大津は高い建物を指で指した。
「はい」
橋本は明るい表情で言った。
夕方
その後二人は服などを買い、大阪駅で解散した。
「また、連絡しますね」
「はい」
「では、さよなら」
「さよなら。気をつけて」
二人とも手を振り、別の方向へ帰った。そして家に帰る途中、コスモスクエアで降り、シーサイドコスモで海を眺めながら歩いていた。橋本が見たのは、港、船、貨物、そして夢洲だった。すると前から数十メートルのところから現れた。
「見つけた」
「あいつは……まさか!?」
そう、名張千歳だった。サングラスで付けており、橋本の方を見ていた。橋本はすぐここから逃げようとした。しかし名張はすぐ追いつけ、笑顔で言った。
「逃がさないわよ」
「クッ!」
橋本はすぐ折り返して、なにわの海の時空館の入場所のところまで逃げた。そして分からないように大津から貰ったお酒を置いた。するとすぐ名張が追いかけたところで、右目が紫色になり、ナイフを集め、刀に変化した。そして名張も刀を開いた。
「さて、粉々に殺してやる」
「やれるもんなら、やってみろ」
名張は先に攻撃し始めた。それにたいする橋本は刀で防御した。しかし名張の方が強かったので、刀に押されていた。
「その程度か。独眼のヒーローよ」
「チッ!」
橋本は思いっきり刀を振り、入場所の柱を利用しながら逃げていた。すると名張がハンドガンを出し、連続で撃っていった。勢いで走り駆ける橋本。最後の柱のところで走るのやめ、柱で隠れていた。
「あら?隠れるんだ。私より弱いのかな?」
橋本は名張に向かってナイフを4本で攻撃した。しかし名張は刀で回転しながら防御し、橋本の攻撃に効いていなかったようだ。そして名張は橋本に向かって追いかけ始めた。すると橋本は名張が追いかけてる隙に後ろの方に行き、飛び上がった。
「なっ!?」
後ろから背後に気づいた名張は、すぐ刀で防御した。そして橋本は思いっきり刀を振った。すると名張の刀が切れてしまい、戦闘不能になった。
「クッ!」
橋本はここから離れ、置いていたお酒を持ち逃げた。
「逃がすか!」
名張はすぐ橋本の方に追いかけようとするが、橋本の姿はいなかった。切れた刀を斜め下に投げ、悔しい表情になった。
「次こそは絶対に逃がさないよ」
家に着くと橋本は机にお酒を置き、椅子に座った。数秒間ボーッとしていたが、大津から貰ったお酒を見て、ふたを開いた。コップでお酒を入れ、飲み始めた。
「美味しい」
橋本は美味しかったのか、少し微笑んだ。
翌日
朝からスマホが鳴っていた。
誰だよ。こんな時間帯から
少し不機嫌ながらも橋本は電話を出た。
「もしもし」
「よ!橋本!俺だよ俺」
「なんだお前か箕面」
電話かけてきたのは箕面 貝真という名前で、マッシュな髪型をしている。箕面は橋本と仲が良く、唯一の友達である。
「しょうもない事なら切るよ」
「ちょ待てよ」
「何?」
「お前と全然会ってないからさ、久しぶりに会おうぜ」
橋本はため息についた。
「分かったよ。どこで集合する?」
数時間後
橋本は大阪港のショッピングモールに行って来た。目の前には箕面がいた。
「よ!久しぶり」
「久しぶりだな」
二人はフードコートのエリアで飲み物を置いて座っていた。
「最近どうなん?前より少し明るいような気がするんだけど」
「え、そんな風に見えるん?」
箕面は頷いた。
「何かいい事あったの?」
「実は昨日最近友達になった女性からお酒を貰ってくれて」
「へぇー どんなお酒なん?」
橋本はスマホで撮った写真を箕面に見せた。
「は!?おまっ……これ高級品じゃないか」
「え、嘘!?」
「うん!これ普通の人には手に入らないお酒だぞ」
「まじか!」
橋本はかなり驚いていた。箕面は違う話をする。
「最近怪物が暴れ出してるらしいよ。1週間前には港区で捜査官2名が亡くなり、4日前も大正区で捜査官1名、住民1名、昨日も此花区で捜査官1名と住民5名が亡くなってるらしいよ。」
「ふーん」
「市内エリアだけではなく、泉南エリアでも怪物に襲われる事件多発してるらしいぜ」
「怖いね。俺も気をつけなくちゃ」
すると橋本のスマホから着信音が鳴った。
誰だこの人
橋本は電話を出た。
「もしもし」
「あの、橋本さんですか?」
橋本は大津の声に驚いた。
「え、あ、大津さんですか?」
「はい。来週ってお時間空いてますか?」
「来週は1日中空いてますけど」
「なら来週海にお出かけしても……」
え、海!?
「い、いいですよ」
「本当ですか!ありがとうございます!集合場所は後日メールで送るのでまた連絡しますね。
「はい。あの、誘ってくれてありがとうございます」
「いえいえ。それじゃあ」
電話を切った。
「なんかあったの?」
「友達の女性からお出かけ誘われたんだ」
「は!?まじかよ。それで、どこにお出かけするの?」
「海」
箕面は驚いていた。だが箕面は橋本にアドバイスを教え始めた。
「お前、服装にセンスないだろう」
「ああ。それがどうした」
不機嫌そうに笑顔で言う橋本。
「まあそんな不機嫌な顔せずに。俺が教えてあげよう」
「え、ホントか!?」
7日後 午前8時 新今宮駅
JR西日本の改札口と南海電車の改札口の真ん中で大津は待っていた。麦わら帽子の黒色のリボン付きで被っており、白服のワンピースを着ており、両手に青色の透明なビーチバッグ、左肩にミニショルダーバッグをかけていた。するとJR西日本の改札口から橋本がやってきた。カッターシャツで黒色のワイドパンツの服装できている。どっかの人でギターがトップクラスに上手いミュージシャンに似てる服装だが……
両手に黒色の不透明なビーチバッグと、左肩に黒色のコンビクロスボディバッグをかけていた。
「遅くなってごめんなさい」
「ううん。謝らなくてもいいよ」
橋本は大津の姿を見ると、とても可愛い姿だった。それを見たせいか橋本は、少し照れた。
「どう?」
「結構似合ってますよ」
「ありがとう。橋本さんも似合ってますよ」
「あ、ありがとうございます」
「では、行きましょうか」
「はい」
二人は南海電車の改札口の方に行った。3番線ホームに行き、8時17分の特急サザン 和歌山市行きに乗り、有料座席に乗った。二人は海側の方に座り、橋本は窓側の方に座っていた。何か恥ずかしい表情をしている。途中の泉佐野駅で普通 和歌山市行きに乗り換えた。二人が行く場所は箱作海水浴場であり、そのためには箱作駅で降りないといけない。この駅は普通しか止まらない。数十分後、鳥取ノ荘駅を出ると、海が現れた。
「橋本さん」
大津は海側の窓に指を指す。橋本は指をさした方に見ると海が見え、その景色をみた彼は少し驚いていた。
「海……」
「南海電車って、こんな区間があるんですね」
「そうですね」
鳥取ノ荘~箱作では大阪湾の景色が見られる。数十秒間の区間だが、南海本線の中でも一番海が近い区間である。箱作駅に着くと約15分を歩き、目的地の箱作海水浴場に着いた。二人は着替え、数分後になると橋本と大津は水着の姿になっていた。二人ともラッシュガードを着ていた。
「めっちゃ似合っていますね」
「そうですかね」
恥ずかしながら大津は言った。
「はい」
「ありがとうございます。橋本さんも似合っていますよ」
橋本は微笑んだ。すると二人は水遊びをし始めた。二人とも楽しんでいた。
「冷たい!」
「ふははは!」
橋本は大津に水をかけていた。かけられた大津は橋本に仕返しをする。
「やりましたね!倍返しです!」
「うわぁ冷たい!」
橋本は大津に水でかけられた。だけど二人は笑顔で楽しんでいた。
こんなに楽しいこと、初めてだな。この時間が永遠に続いてほしいな。
二人は水鉄砲や浮き輪、砂遊びなどをしていた。正午になると大津は昼食を食べ、食べ終わった後、彼女から話かけた。
「橋本さん」
「はい」
「私、半年前からある事を挑戦してるんです」
ある事?
橋本はその質問を言う。
「どんな挑戦してるんですか?」
「それは、怪物になっている人を人間に戻す薬を開発してて」
橋本はその事で驚いた。
「薬を開発!?」
「はい。まだ完璧には出来てないんですけど、8割ぐらいは出来ています」
「もうそこまできたんですか!」
大津は頷いた。彼女はその薬の開発を独自でしており、クマノという物を入れている。クマノは怪物を鎮静化することが出来るのだが、入手する確率は0に近い。どこにあるのか分からないからだ。もっとも見つかる場所は山や湖が多いが、それでも見つかることは低い。
「私は怪物になった人を救いたい。人間は贅沢してるのに、怪物は人に差別させられる。そんなの理不尽だと思います。理不尽な世の中のせいで、怪物は暴れ出していると私は思います」
「そう、ですね」
「ちょっと暗い話になってごめんなさい」
「あ、いえ。謝る必要なんて……」
「でも薬が完成したら、最初は橋本さんに治してみせます」
すると大津は右手に小指を出した。橋本は大津の小指を見ていた。
「あの、これは?」
「ゆびきり。約束を守ることです。橋本さんも」
「あ、はい」
橋本も左手に小指を出し、二人とも小指を互いに引っ掛け合い、大津が唱えごとを言い、軽く小指を振った。
「ゆびきりげんまん、嘘ついたら針千本」
「え……」
橋本は困惑していた。
「ほら橋本さんも言って」
「あ、はい」
二人とももう一度唱えごとを言い、軽く小指を振った。
「ゆびきりげんまん、嘘ついたら針千本」
「ゆびきりげんまん、嘘ついたら針千本」
すると二人は小指を外した。
「約束破ったら、災いきますよ」
「え、怖くなりました」
その言葉で大津は笑い始めた。
「真に受け過ぎですよ。災いなんてくる訳ないでしょう」
「あ!からかいましたね!」
すると橋本は少しずつ笑い始めた。その表情をみた大津も笑い始めた。これが楽しいことかと橋本は思っていた。
夕方5時
二人は普通電車に乗っていた。この車内で乗っているのは橋本と大津だった。大津は橋本の右肩に添い寝していた。後ろには大阪湾が見えていた。橋本は添い寝している大津を見ていた。
疲れているんだな。
橋本は微笑み始めた。
午後8時
「お!それは良かったじゃん!」
電話で明るい声をだしているのは、箕面だった。
「うん。水曜日また誘われて、南港のショッピングモールに行く事が決まったんだ」
「へぇー てかお前、今日はなんか明るいな」
橋本は電話しながらキッチンにもたれた。
「今日はとても楽しかったからさ」
「そうなんだ。ま、応援してるぞ」
「ありがとう」
橋本は電話を切った。
怪物捜査庁 本部
「これはどこで撮ったの?」
座りながら橋本と大津が写っている写真を見る名張。
「泉南エリアにある箱作海水浴場です」
「二人が遊んでいるところを撮りました」
この二人は大津に暴力した捜査官達だった。黒髪をしているのは陸奥 地蔵。ツーブロックしてる髪型が大東 數だ。
「またその女性もこの写真で見た限り、おそらく怪物の協力者なので、その女性も駆逐しましょう」
陸奥がそう言った。しかし名張はその女性の駆逐を拒否した。
「それは駄目だ」
陸奥は反論する。
「なぜですか!?」
「なぜって、勝手にその女性が怪物の協力者と決めつけるのは違うと思う。この写真を見ても、証拠がまだ足りない。だからその女性は駆逐する必要はない」
「だがしかし……」
すると名張が彼らに睨み始めた。
「もしその女性を殺した場合、お前らは解雇処分で済むと思うなよ」
あまりにも圧力に二人は受け入れるしかなかった。
「はい……」
二人は部屋を出て、廊下を歩き始めた。
「あのブス、調子乗りやがって。いつか痛い目にあわせてやる」
「そんな事しても無駄だ大東。お前が戦ってもボコボコにやられるだけだ」
「じゃあどうすれば……」
すると陸奥がある提案を言う。
「大丈夫。俺に提案があるんだ」
「どんな提案?」
「それは……」
数週間後
二人は徐々に仲が良くなり、二人の距離が近づけるよになっていった。この数週間は喫茶店やショッピングモール、海水浴場、海沿いの公園などを巡っていった。
樽井駅の近くにあるショッピングモールで橋本と大津は行っており、1階に歩いていた。
「ここも海岸から近いですね」
「はい。海岸から近い関西エリアで、おそらくこのショッピングモールが一番近いと思います。」
「そうなんですね」
二人が歩いてる途中、セントラルコートにピアノがあるのを大津が見つけた。
「あれ、ピアノあるんじゃないですか。弾いてもいいですか?」
「いいですよ。大津さんがどんな曲が弾けるか楽しみです」
大津は椅子に座り、ピアノを弾き始めた。少し寂しさがあるけど、優しい音が響いていた。永遠にこの音が聴いたらいいなと橋本は思った。
「どうですか?下手ですよね」
「いや、めっちゃいいですよ。いい音出せたらピアノ弾いてますよ」
「ありがとうございます。あの、橋本さんもピアノ弾けますか?」
「最初のところなら弾けます」
橋本はピアノを弾き始めた。大津が弾いた音よりも明るく、落ち着いた場所にいるような感じになり、辺りでピアノの音が響いていた。徐々に人が集まっていくが、橋本はピアノを弾くのをやめた。最初の部分しか弾けなかったのである。しかし集まっていた人達は拍手が響いていた。
「橋本さん、凄いですよ!」
「いや、僕はただ……簡単な曲しか弾いてませんが」
「ううん。簡単な曲でもピアノを弾いてるなら、それでいいんですよ」
橋本は大津に褒められた事を嬉しくなった。
「ありがとう」
しかし、突然爆発音が聞こえた。かなり近いところに起きていた。すると数十人の怪物が大型専門店から現れた。周りの人々は悲鳴や恐怖、パニック状態だった。大津はかなり怯えていた。
「大津さん、逃げよう!」
「は、はい」
二人は山側に出入口を行こうとするが、一般の人達が出入口が開けようとしても駄目だった。怪物達はこう言い始めた。
「全ての出入口を封鎖した!大人しくここで死ぬんだな!」
すると怪物達は山側の出入口にいている人達を襲い始めた。血が出血する音、噛みしられる音、悲鳴の声しかなかった。
「ここから逃げよう」
「うん」
二人はここからすぐ離れた。中央エリアに海側と山側に出入口があり、橋本は一本のナイフで海側の出入口のガラスを破壊しようとした。しかし一つもひび割れがなく、ナイフが破損した。
「嘘でしょ……」
「怪物の仕業か」
二人はさらに奥の方に行き、非常口を探そうとした。しかし、奥でも怪物達がいており、人々を襲っている最中だった。そして後ろからも怪物達が来て、周りに囲まれてしまう。するとこの怪物達の代表であろう人が現れた。
「さあ、お前もここで人生が終わるんだ」
すると橋本は下を向き始めた。
「橋本さん!」
すると橋本は大津にこんな事を言った。
「絶対ここから離れないでください」
大津は橋本の指示を応じた。
「さあお前ら!やれ!」
すると怪物達は二人を襲おうとし、大津は目を閉じた。すると左目が紫色に光り、周りの怪物を吹き飛ばした。そして後ろから大量のナイフが現れ、周りの怪物を撃退した。多くの怪物が気絶状態になった。しかし代表の怪物がいきなり橋本を襲おうとした。橋本は防御したが、少し苦戦してるようだ。
こいつ、⁺S並みに強いな。
「やるな。さてはお前、独眼の怪物だな」
二人は互角状態になった。すると代表の怪物はある技をする。
「爆線」
右手を出し、レーザーを離した。橋本は避けていたが、狙った場所で爆発し、辺りが飛び散った。このままだと大津が襲われると思った橋本は、代表の怪物の目を左手で潰そうとした。
「ぐわあああ!」
周りが見えなくなった代表の怪物。すると橋本がとどめの一撃をした。
「播但神阪」
すると左手で代表の怪物の腹を思いっきり殴り飛ばし、口から血が出始めた。代表の怪物は倒したものの、まだ怪物達がいていた。橋本一人では戦えない人数だった。しかし上から日本刀で攻撃してきた人がいた。紫色のショートな髪型、怪物駆逐隊の代表 香住舞子だった。この時は16歳だった。
「あれは、助けにきたのですか?」
「とりあえず逃げよう!」
二人は再びセントラルコーナに行った。すると舞子が二人に言った。
「おい!待て!」
しかし二人は聞こえてなかったようだ。舞子は二人のほうに行こうとしたが、怪物達が進路を妨害した。
「クッ!邪魔なんだよ」
すると舞子はある技を使う。
「太秦天神川」
怪物達の方に刀を振ると、一瞬の光の衝撃波が起き、半径200メートルの範囲で攻撃した。その場にいた怪物はその攻撃に喰らい、倒れていった。舞子は再び二人を追いかけ始めた。
一方二人はセントラルパークに向かっていた。
「なんでセントラルパークに戻るんですか?」
「あの怪物達が仕掛けたガラスの機器を破壊する。そしたら出入口の窓が破壊できます」
「なるほど」
すると舞子の声が聞こえてきた。
「待ってくれ!私は君たちを助けにきた!」
二人は立ち止まった瞬間、大東が上から現れ橋本を思いっきり蹴り飛ばした。
「橋本さん!」
大津の背後から陸奥が現れ、大津の口を右手で塞ぎ左手で刀を脅した。
「いやあああ!」
「逃げられると思うなよ」
舞子はすぐ二人を助けにいこうとしたが、2階の連絡橋が落下し煙が多く出た。舞子はすぐ二人の方に行こうとしたが、大男の捜査官が妨害し始めた。
「なにしている!はやく助けろ!」
「無理だ。これは俺達の捜査だ」
舞子は大男の捜査官に睨みつけ始めた。
「助けないなら、ここで駆逐する。君みたいな人間も」
橋本は自力で立ち上がったものの、大東がすぐ橋本の方に行き、右足で吹き飛ばし、壁に激突した。
「くはぁ!」
「そんなもんかよ!独眼の怪物よ!」
すると大東は橋本の顔を殴り始めた。何度も何度も殴り、橋本を気絶させようとした。それを見た大津は大声で止めた。
「やめてててててててええええええええええ!」
しかし陸奥が大津の首と刀の距離を縮めようとした。
「おっと、あんまり声出すとお前を殺すよ」
気が済んだのか、大東は橋本を殴るのをやめた。橋本は立ち上がることが出来ないものの、床に手で掴みながら大津の方に向かった。
「おい独眼!これを見ろ!」
橋本は陸奥の方に見た。すると大津の首に刀で脅しており、首と刀との距離がほぼ0センチメートルだった。
「そ、その人を……離せ」
「お前が正直に答えたら解放する」
すると陸奥は橋本に質問した。
「今から三つ、質問する。こいつはお前の協力者か?」
「ち、違う」
陸奥は二つ目の質問をする。
「こいつはお前にとって大切な人か?」
「あ、当たり……前だろ」
そして最後の質問をする。
「最後の質問。犠牲にするならこいつか、それともお前か?」
すると橋本は
「俺に決まってんだろ。だから、そいつを離せ」
「何言ってるの。橋本さんはまだ生きるべきよ。犠牲にするなら私を選んで」
すると陸奥は目を閉じた。
解放するのか?
数秒後、陸奥はなぜか笑顔をし始めた。
「残念。君はこいつを解放する事は出来ない」
橋本は驚いた表情になっていた。
「なぜだ。言ってること違うじゃないか」
「二つ目の質問の回答がどうも気にくわなかった。だから解放はなし。そして、お前の目の前で処刑だ」
橋本は大津を助けるために、無理しながら動き始めた。
「最後に言いたいことはあるか?協力者」
大津は橋本に涙出しながらこう言った。
「橋本さん、今までありがとうございました。私の人生の中で最高の思い出でした。貴方と出会って本当に良かったです。もっと生きたかった。もっとやりたかったことをやりたかった。もっと楽しい事をしたかった。もっと、もっと、幸せな人生になりたかった。最後に、橋本さん、私は貴方の事が大好……」
言ってる最中に陸奥が刀を振った。首から血が出始め、同時に陸奥が笑い始めた。
え、大津さん……
大津はゆっくりと前に倒れた。
「ぶははは……はははははははははははははははははははは!!!!!!!!!」
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
陸奥は橋本を見て、見下した。
「馬鹿が!お前はしょせん怪物!正義のヒーローではない!お前はこいつに守れなかった!無力な怪物だな!」
「やはり独眼の怪物は雑魚でしたね」
するとひびがある地面、物から浮かび始め、辺りが一転雰囲気が変わった。
「おい、なんだ」
「何が起きてるんだ」
舞子と大男の捜査官が戦っているところも異変を感じた。
「なんだ、この異様なものは」
舞子は向こうにいる橋本の方を見ていた。
「嫌な予感が……」
橋本から衝撃波が発生した。大東は吹き飛ばされ、陸奥は身体ごと耐えていたが、目の前に橋本が現れた。
「潤悪闇死贖雲雀」
すると橋本は陸奥に向かって、紫色のオーラがある左手に思いっきり殴り飛ばし、後ろから大量の輪になったナイフが現れた。それをみた大東はあまりにも怯えていた。
「こいつ、バケモンかよ」
陸奥は橋本の姿を見ると今まで見たことのない表情になり、すぐ逃げようとした。
「おい!おいていくつもりか!」
「知るか!」
橋本は目を瞬きすると左目が再び光始め、さっきより光が強くなっていた。そして右手で陸奥の方に向き、後ろから大量のナイフで攻撃した。
「がああああああああ!」
腹、両腕、顔、両足、両肩、いたるところまで刺され、陸奥は倒れ込んだ。しかしこれで終わりではなかった。数秒後には刺されたところから急激に痛みや苦しさが起き始め、陸奥は悲鳴をあげる。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!!!!!!!!!!」
その声は場内全体に広がった。怪物達と戦っている捜査官達も、その声で動きが止まり、場内が静かになった。
「あ、ああああ……」
大東はかなり怯えていた。体力はまだ戦える状態ではあるが、橋本を見ると恐怖を感じるようになった。すると橋本は大東の方を見て、両手に動き始める。
「な、何するんだ。もう、降参するから、殺さないでくれ」
両手に回転し、右手の人差し指と左手の人差し指を当て、大東は身体ごと浮かび始め、首に絞めらるような苦しさを感じ始めた。
「クッ、ガ……ク、苦し」
そして両手の人差し指を離すと、大東の右腕を折る音がなり、数秒後には身体ごと吹き飛ばし、壁に激突した。そして二人にとどめを刺そうとしたが、大津がくるしながらも声をかけた。
「もう、やめ、て」
その声で橋本はビクッと表情が変わった。
「彼らを……傷つけないで。これ以上すると、君が……君が殺人みたいな、怪物になって、しまうよ」
これ以上争いをやめるように言う大津。すると橋本は大津が言ったことを受け入れた。
「分かった」
目を閉じ再び目を開けると、左目が元の目になっていた。橋本は大津の方に行き、彼女の身体を両手で持ち始めた。
「どこに、行くの?」
「君に聴きいてほしい事がある」
橋本はセントラルパークの方に行き、お姫様抱っこをしてながら歩き始めた。そしてセントラルパークに着くと、橋本は大津にピアノのそばに置き、ピアノの椅子に座った。
「これは、海外でも評価されているソロアーティストの曲で俺の友達しか弾いてない曲だけど、大津さんが死ぬ前にこの曲を聴いてほしい」
大津は橋本の方に向き、橋本はピアノを弾き始めた。するとどこか悲しい音が聴こえる。天井にはガラスが破壊されており、空が青くなっていた。橋本は声を出して歌う。
僕は時間になったみたいな
だれか僕を戻すんでしょうか
そしてピアノ弾くのを終わり、最後に橋本が言った。
欲しくなるかな
大津は橋本が弾いた音を聴いて、涙が出てしまう。
「なんでだろう。なんで涙が出るのだろう」
橋本は大津の方に行き、座り込んだ。
「どうですか?」
「私が文句言うことはないですよ。とても上手かったですよ」
「ありがとう」
しかし大津の意識が徐々に薄れ始めた。
「あれ……意識が」
倒れ始める大津。だが橋本によって押さえられた。すると橋本は大津の唇にキスをした。数秒間この状態になっていた。そして橋本は大津の唇を離れ、彼女の表情を見た。大津は笑顔になり、橋本にこんな事を言う。
「ありがとう。橋本さん」
そして最後の息をして、目を閉じ始め、意識がなくなった。これが大津の最後の言葉だった。それを見た橋本は涙が出始め、両手で顔を塞いだ。彼は結局人生を変えることは出来ず、再び絶望の人生になり始めた。
一方舞子と大男の捜査官は、舞子によって倒され争いは終わったが、連絡橋や落下物で妨害されており、舞子では何も出来ない状態だった。
「おいそこの君って、舞子じゃないか」
「あ、名張さん」
向こうから名張が駆けつけて、他の捜査官達も来ていた。
「名取さん、この先に二人がいるんですが、この連絡橋が落ちてきて、2階でも通れない状態になっています」
「ひどいことになってるな。舞子、離れて」
舞子は名張の後ろまで下がった。そして名張は刀で振り、衝撃波で破壊した。妨害された連絡橋はまっ二つに割れた。
「ま、舞子。貴様にはお前のせいにした」
倒れていた大男の捜査官が言い始めた。
「何を言ってるんだ」
「貴様、安全ルートを指示してた捜査官を応じてくれたな」
「それがなんだ」
「あれは嘘だ。罠に引っかかったな。あのルートで避難した人は全員死んでるだろうな」
「そ、そんな」
「そしてお前は、責められるに……」
大男の捜査官が言ってる最中に名張が足を顔で踏んだ。
「やったのは貴様だろ」
そして舞子の方に向き、こう言い始めた。
「舞子、自分が悪いと思い込むな。全てはこいつが悪いから」
「はい」
名張は舞子とここにいる全ての捜査官に指示をした。
「この人らを救助しろ。私は二人の行方を探す」
名張はセントラルパークに向かった。捜査官らと舞子は大東と陸奥、そして倒れている捜査官達に救助を行っていた。
名張は二人の行方を探して行き、セントラルパークに向かっていた。しかしセントラルパークに着くと、女性が倒れているのを発見した。その姿を見ると、名張は驚きの表情になっていた。倒れているのは大津だった。あまりにもショックなのか、右手に持っていた刀が落ちていき、すぐ大津の方に行った。
「ねえ、聞こえる大津?私だよ」
しかし大津の返事はなかった。
「返事して大津。そんなに私の事嫌いなの?」
名張は大津の首があるのを気づき、首の方をみると、それは大きな傷と血痕があった。それを見た名張は涙が出始め、大津の顔を右手で触れた。
「大津、大津。大津!」
涙が落ち、大津の顔に数滴落ちていく。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」
大きな悲鳴を上げる名張。舞子は名張の方に向かってる途中に大きな悲鳴が聞こえ、すぐに駆けつけようとした。しかし名張が泣いてる姿で舞子は駆けつけるのをやめ、名張を見ていた。舞子にとって複雑な気持ちだった。事件は悲劇で幕を閉じた。
泉南市ショッピングモール襲撃事件
8月14日 午前12時30分
死者 179名(市民170名 捜査官9名)
行方不明 1名
負傷者 53名(市民39名 捜査官14名)
10日後
陸奥と大東と大男の捜査官が名張に呼び出され、名張の部屋で立っていた。名張は両手を掴みながら座っており、かなり睨んでいた。
「私が貴様らを呼んだ理由、分かる?」
3人は困惑していた。
「何のことでしょうか?名張準特補」
「貴様らに私の名前を呼ぶ権利はない」
低い声を出して、かなり怒っていた。3人も名張の圧力でビクッとしてしまう。
「貴様らにはとんでもない事をしたな。前にも言っただろ。関係のない女性は殺すなって」
「まだ粘る……」
「粘っているのは貴様だろ。貴様らに生きて帰れると思うなよ」
すると名張が立ち上がり、右手に刀を開き始めた。
「な、何を……」
そして
さようなら
ドアの近くにいた名張の部下の女性がノックしようとすると、ドアのガラスに突然血が付き、血が飛び散る音も聞こえた。部下の女性はかなりビビっていた。数秒後、名張がやって来て、顔に血が付いていた。
「どうしたの?」
「顔……」
「え、あ!これはね、さっきのペンキでぶちまけてしまって、それで顔についちゃったの!別に変な事はしてないから」
絶対とんでもないことしたな。この人
「それで、何か用?」
「名張さんに新たなパートナが」
「見せて」
住之江区
橋本はドアを開き、屋上に行った。向こう側からスマホの着信音が鳴っているが、多分箕面だと思い、そのままほっとき、ドアを閉めた。
「留守番電話に接続中です。発信音の後にメッセージ……」
箕面は電話を切った。かなり心配そうな顔だった。
「橋本……」
怪物捜査庁 本部
「富山鈴木?」
「彼はまだ14歳ですが、一般の人と比べて、かなり戦力が高く、今年4月に入局したばかりの人です。まだ下等捜査官で新人の捜査官ですが……」
「フーン……ありがとう」
「いえ、では私はこれで」
部下の女性は早歩きでここから去った。富山鈴木の資料を見る名張。資料を見ながらドアを開き、中に入った。
橋本は屋上に着いた。目の前には大阪湾が見えていた。大阪湾方面を歩き、柵を乗り越え、飛び下りる準備をした。目を閉じ、数秒間街の音を聞く。車の音、風の音、人の声などが聞こえた。再び目を開ける。そして橋本は……
ドアが閉まる音。名張は資料を持ちながら座った。彼は白黒混じった髪色で、階級は下等捜査官。
「富山鈴木か……」
もう、次は絶対この人を死なせない。死んでしまうと、また悲劇を見てしまう。絶対に守ってみせる。
この世界は、理不尽で出来てしまった世界。
悲劇は生きてるうちに必ず起きる。悲劇が起こらない人なんていない。
世の中は悲劇だらけである。
大阪怪物(読切小説) ako @AKO__323
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