笑う、観覧者

 世界は混沌としている。天使に悪魔、死神にゾンビにドラゴン、豚になった兵士、殺し屋までいる。誰もが誰かの生と死にとっても干渉しあって、それでいて無関心だ。


「生きるって難しいな」

と未来から再びやってきた男が言った。

「難しくても、解こうとしちゃぁだめなんですよね」

死神の神様になった少年が白ばかりのパズルを真ん中から置いている。


「結局、人類を救ったところで、ねぇ」

「そうですよね、救ったところでですよ」

二人は何の問いの何の答えにもならない会話を繰り返している。


 少年の隣に死神がやってきた。

「この男、リストにありますね。連れて行っていいですか?」

「もう少し、働いてもらいましょう」

少年がそう言うと、リストから男の名前が消えた。男の指には厄災の指輪が。ラテン語で、望めば叶えんと刻印されている。


「さぁ、何を望みますか?」

少年は男に問うた。

「生きることが難しいままでありますように、かな」

と男は笑いながら答えた。

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【400文字・つながるショート】笑う、観覧車 西野 うみれ @shiokagen50

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