第5話
「スノウの写真、見たい」
「うん」
スマホを操作し、彼はスノウの写真を見せてくれた。
白いフサフサの毛。口の端がキュッと上がって笑っているように見える。
真っ黒な目は、溢れ出る愛情が感じられるほどに愛くるしい。
「消えた写真は、スノウがその夏に置いてきてくれたんだね、きっと」
「えっ?」
「あなたの苦しみも一緒に」
何故か私にはそう思えたし、彼の話を丸ごと信じることができた。
もしかしたら、写真の中のスノウが私に教えてくれたのかもしれない。
「スノウにとって、その夏は特別な夏だった。だからその夏が、あなたを苦しめていることが辛かったんだよ。一緒に海で遊んだその夏は、あなたにとっても楽しくて幸せな記憶であって欲しいんじゃないかな」
「そう、かもな。だから、あの真っ白な写真を見ても、スノウとの楽しかった思い出しか出てこないのかもしれない」
彼と並んで座りながら彼の肩に頭を預けて、真っ白な写真を眺める。
真夏の波打ち際を楽しそうに走るスノウの姿が見えたような気がした。
【終】
真っ白な写真 平 遊 @taira_yuu
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