からっぽの部屋
巴雪緒
からっぽの部屋
部屋が荒れ果てている。
割れた花瓶、脱ぎ捨てられた服、置きっ放しのコップ。
どれもこれも君との思い出の品だ。
片付けようと思っても、上手に体が動いてくれない。鉛になったようで、ソファに沈んでいく一方だ。
読みかけの本は積むだけ積んで雪崩れ落ちてきた。
視界がぼやけて、頭が痛む。
台所を見れば、片付けられていない食器がシンクの中を泳いでいる。
そのままにしていたら、いつボウフラが湧いてきてもおかしくはない。
どんどん汚くなっている、早く片付けないと君は怒るだろう。
むしろ怒ってほしかった。
ヒビの入ったテレビをつけると、しつこいほどに女性が殺害された事件が映し出されていた。
すぐ近くに置いてある写真立てにも、ヒビが入っており君の顔が見えなくなっていた。
君がいなくなって心の中はからっぽだ。
「どうして、僕を置いて逝ったの?」
ぽつり呟いた。でも何も返ってこなかった。
気がつけば包丁を手に持っていた。包丁の周りには黒く、生臭い匂いが染み込んでいる。
付近には黒く染み込んだ液体が異臭を放っている。
「最期まで一緒だと言ってたのに」
からっぽの部屋 巴雪緒 @Tomoe_Yukio
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