プロローグ ―来訪―
(チリーン、チリーン、風鈴が風に揺れて何度か鳴る)
(タタタタ、軽い足音)
(ピンポーンッ!、インターホンを鳴らす音)
(玄関の扉越しに聞こえてくる声)
「おーいっ! 起きてるよね? 私が遊びに来たよ~! 癒しの御届け物で~~~す!」
(ピンポーン、ピンポーン、ピンポーーーーン)
「ちょっとー! 私だって言ってるじゃん! あーけーてー!」
(ガチャン、キィィィィ、ドアを少しだけ開ける音)
「やっほーだよっ!」
(……バタンッ!、すぐに閉められる音)
「え、待って。私の顔見て閉めるとかひどくない!? 泣いちゃうから! 玄関の前で泣いちゃうからね!? ……いいの? 本当に私、泣いちゃうよ? ……ごめんなさい、調子に乗りました。反省してるから……、お願い、入れてよ~……」
(ガチャン、スゥゥゥゥ、再びドアが今度はゆっくり全開に開く音)
「ぐしゅん。ありがとぅ……、おじゃましまーす……」
(カタカタ、トンッ、靴を脱いで揃える音)
「―――最初からやらなければいいのになんて私だってわかってるよぉ~……、けどさ、キミには明るい私でいたいんだよ。―――あ、ありがとう」
(パタパタ、スリッパを床に置く音)
「―――ふふっ。面白れぇ女だって? それって褒めてるの? けど、優しいんだね。―――うんっ! もう大丈夫、私は面白れぇ女だからね! ―――それじゃ改めて、おじゃましまぁーす」
(ペタペタペタペタ、スリッパに履き替えて後ろを歩く音)
「あっ、うん。ありがとう、お手洗いはここなんだね。キミ、気が利くね~。あははっ、照れない照れない」
(カシャ、スゥゥゥ、部屋のドアが開く音)
「ありがとう、しつれいしまーす」
(スゥゥゥ、ガシャン、ドアが閉まる音)
「よいしょっと」
(カタッ、椅子を引いて座る音)
「えっと、何から話そうかな~。うん、そうだね夢の中でも自己紹介してなかったよね。え? うん、そうそう。あれ? あの夢、覚えてるんだー。ちょっと、ううん。かなり嬉しいかも。肩を貸してあげた甲斐があったかな」
「ごめんごめん、普通の人は夢の内容なんて朝起きたら忘れちゃうからさ、私のこと覚えててくれたんだなーってそれだけで嬉しいんだよ」
(バサァッ! 羽が開く音)
「私はキミに癒しを届けに来た宅配のお姉さん兼、貴方を癒す僧侶のお姉さん兼、温泉旅館の女将さん兼、えっと……、キミ担当の天使の
(ダンッ、キミが机を叩く音)
「えーーー、属性が多すぎるって言われてもしょーがないじゃん。キミが癒されたいなって願った属性がそのまま私の属性になってるんだよー。だ・か・ら、これはキミのせいですっ!」
「さっ、それじゃ毎日頑張ってお疲れのキミを癒しちゃいましょうか。えっとまずは―――」
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