天恵テーネさんは疲れたキミを癒したい
たっきゅん
プロローグ ―夢―
(ガタンゴトンと乗っている電車が揺れる音)
「―――……ねー? ……ねーってばー、もうそろそろ君の降りる駅に着くよー? ……はぁ。これはまだダメかな~……、―――わっ、―――もぅ、しょうがないな~。……寝てる間だけだぞ? ……私の肩は高いんだから」
(耳元で彼女の言葉が聞こえる)
(ガタンゴトン)
「う~ん、すごく疲れてるのかな? ―――よーしっ! 私が頑張ってキミを癒しちゃおうかなー! これだけ声だしても起きないんだから本当に疲れているんだね……」
(普通の声量で彼女が気合を入れる)
(『~~~♪』車内音楽が流れる)
「―――あっ、やっと起きたー! もー、いくら長旅だからって寝すぎだよ~? どうせ昨日も動画とか見てて夜更かししたんでしょー、って! ちょっとどうして離れていくのかな~?」
(ガタリとキミが離れる音、ススススと座席をスライドしていって距離を詰める音)
「慌てすぎだよ~。だいじょーぶ、キミは私に何もしてないからさ。そ・れ・に、ここ電車の中だからね」
「え? そういう話じゃない? 私が誰かって? そっかそっかー、そうなるよね~。私は―――、えっと、……う~~~ん。そうだっ! 疲れている人にだけ見えるし触れる夢の精霊だよ!」
(立ち上がってタップダンスをして決めポーズ「いぇーい」)
「胡散臭いってひどいな~。で、でー、話は戻るけどさ、昨日の夜は何してたの? ―――え? 旅行が楽しみで眠れなかっただけ!? 布団に入ってわくわくしてたって、あははっ! 子どもかーっ!」
(バンバンとキミを叩く音)
「も~~~! ほんとかな~? あははっ! うそうそ、信じてあげるってば。実はさ、……私もなかなか眠れなかったんだよね」
「え? 肩を貸してくれてありがとうって……どういたしまして。―――また眠いの?」
(ガタンゴトン)
(薄れゆく意識の中で彼女の声が聞こえてくる)
「ぁー、これは今日の夢は終わりかなぁ。―――どうせこれは夢だから。さ、最後くらいはゆっくり寝なよ。私の肩、また貸してあげるからさ」
(キィー……、列車がブレーキをかけて減速していく音)
「―――もう寝ちゃった。そんなに疲れてたんだね……。―――寝息かわいい」
(プシュー、ドアが開く音)
「……現実を忘れて旅行に行くのもキミも夢なんだね。いつかその夢が叶うように私が手助けしてあげたいな。―――時間だね。それじゃ、いってらっしゃい」
(チリーン、風鈴の音)
(プツンッ、夢から覚める音)
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