癒し ―彼女・映画鑑賞―
(チリーン、風鈴の音)
「ねー、ちょっとそこのソファーでごろごろしよーよー? んっ! こっち~」
(ペタペタ、バフッ、キミの手を引いて移動してソファのクッションへとダイブする音)
「あははっ! 急にどうしたのって、私は今からキミの彼女だからかな」
「う~~~ん、カタイなぁ~~~~。ここはキミの家なんだぞー? もっとリラックスしてよ~」
「んー、急に彼女とか言い出すなって言われても、キミが自宅なのに私に緊張してて、私が『彼女』ならなぁって願ったのを私が叶えただけだよ~?」
「言ったでしょ。キミが願った属性に私が変わるんだって。さ、そんな話はいいからさ~、よいしょっと」
(ポンポン、ソファーを叩く音)
「キミも横に座りなよ~。立ってると疲れちゃうでしょ~、キミを癒すために来た私がそんなことさせちゃダメなんだから~」
(ぽすっ、ソファーに腰掛ける音)
「そそ、いい子だね~。で、自宅デートの定番といえば~、一緒に映画を見る! ね、コレ! コレ見ようよ~! この雲人間に変身して世界を守る映画の最新作! すっごく見たかったんだよね~、クラドゥーマンっ!!!」
「え? どこからそのディスクを取り出したって? そんな細かいことはいいんだよ~。これがここにあるってことはキミも見たいってことだよね! うんうん、わかるわかる。毎作、カップルが一緒に見る映画ランキング上位だもんね。それじゃ、再生するよー! うんしょ、うんしょっと」
(ずずっ、再生機までテーネが這い寄る音)
(カチャ、ズゥウィィィィ、ディスクを入れて再生が始まる音)
「あっ! ポップコーンと飲み物欲しい! ……ほら、早く願って願って~!!!」
「えーーー、そういう願いの使い方もありだよ~! 横でポップコーン片手に映画を見てる私の横顔見たくないの? 見たいよね? ほらほら、はやく~! 始まっちゃうからー! おねがーい!」
(―――カチッ! 静寂に包まれ時間が止まる音)
「―――ふふっ、やっと笑ってくれたね。うん、これはキミが好きなことを願っていいんだよ。だって頑張ってきたんだもん。例え誰もが認めてくれなくても、それでも頑張ってきたのを私は見てきたよ? だからこれは夢のような一瞬だとしてもキミへのご褒美。遠慮なく、好きなことを願って、ゆっくり心を癒してよ」
(―――カチ、カチ、時間が動き出す音)
「やったー! ありがとう! はい、キミも食べなよ。飲み物は2つなのにポップコーンが1つだけって、願ったんならそういうことでしょ?」
「もう~~~っ! 恥ずかしがり屋のくせに願いは一丁前だねっ! う~~~ん、おいしいっ! これ、塩バターとキャラメルのハーフハーフなんだ~。もしかしてー、私の好みがわからなくてそうしてくれたのかな?」
(ムグムグ、咀嚼する音)
(ブゥーーーン、映画の始まる前の壮大な音)
「しょーがいなー、始まっちゃうからこっち向いて。―――えいっ!」
「苦情は受け付けませんっ! 上映中はお静かにだよ」
(ブッブゥウウウウ、シューーーッ、車のクラクション音が鳴って、風を切りながら移動する音)
「……わぁ、わっ! あわわわわっ!」
(ドーンッ! 雷が落ちる音)
「―――っ! クラウドゥーマン頑張って!」
(チャララララ~~~~♪ エンディングが流れる音)
(ぅぅっ、目から涙が流れるのを堪える声)
「すっごいよかったねー! 正義の味方、クラウドゥーマン! 闇に落ちたクラウディアが雷雨を操って雲魔人を生み出すところとか、さすが本場って感じの演出だったよー! 主人公のレインもめちゃくちゃかっこよかったし!」
「え~~~!? 私ってそんなに声出てた? 気のせいじゃないかな? それよりさっ、キミはどの場面が好き? あー、もう全部いいんだけど! あえてで!」
「だよねだよねー!!! わかるわかる~!!! ね、こうして誰かと好きなことについて存分に語り合うって幸せだよねー。―――どうかな? 彼女なんて押しつけがましく名乗ったけどさ、一人じゃないっていいでしょ?」
「あははっ、同じ時間を共有するとやっぱりいいよね。キミも少しだけ素直になったしー、それじゃ映画の鑑賞会を終わります!」
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