癒し ―動物園・前編―
チリン、チリーン。バサッバサッ。風鈴の音と共に羽ばたく音
ドンドンッ! 窓ガラスを叩く音
カラカラッ、窓を開ける音
カランカランッ! ハンドベルを鳴らす音
「おめでとうございまーーーすっ! ―――きゃっ!」
ドサッ、ビシャン! 天使を家へと引っ張り入れて窓を閉める音
「ちょっと荒っぽいよ~? 女の子をそんな風に扱っちゃ、っめ!」
「えーーー! ご近所迷惑!? けどけどー! 商店街とかで何か当たった時はこうやってたよハンドベルを鳴らしてたよ?」
「……うん、そうだね。たしかにキミがいう通りご近所迷惑だったね……、ごめんさーい」
「そりゃ私だって謝れるよー! 自分に非があるなら謝るってのはね、とっても大切な行為なんだよ? だけどね、非がないのに謝るのは絶対にダメ。そんなの対等な関係じゃないからね」
「もう! 年上だろうが年下だろうが同じ人間でしょ!? なら対等じゃん! そんなことでこっちに非がないのに謝らせようと強要するなんて最悪だよ? キミもやっちゃだめだからね?」
「んー、そうだねー。もしもお互いに非を認められないなら頑張って頑張ってお互いに納得できるラインを提案していくかなー。それでもどうしてもムリならその人とはどんな事も合わないだろうし、もう付き合わないって覚悟を決める」
「人付き合いをやめるって勇気がいることだけどさ、自分の気持ちが一番大事なんだよ。自分を大切にしてくれない人に対して我慢してもいいことないもん」
「―――だからさ、あんまり無理しないでね」
「ふふっ、驚いてるね~。キミ、悩んでたでしょー? 少しはスッキリした? 休んでもいいし、逃げてもいいんだよ。キミの気持ちが一番大事なんだからさ」
コトッ。コーヒーの入ったコップが置かれる。コクッと喉を鳴らして一口飲む音
「ありがとう、―――ふぅ。落ち着いたかな? それじゃ、本題に入りたいんだけどいい? って聞くまでもないっか。私の能力で飲み物用意するくらいだもんね」
むすー。ぽっぺを膨らませる音
「べっつにー? 都合のいい女みたいに扱われてる気がして拗ねてるわけじゃないよ?」
「なんてねっ! 冗談だよー! あんまりこういうのもよくないんだけどさ、私も仕事だからねー」
「もー、そんな顔しないのー! 言い方ちょっと意地悪したけどさ、必要な時に必要とされるって嬉しいものだよ? 誰かの役に立ってるって感じるのって生きてるって思えるよねー」
「やりがい搾取なんてものは嫌いだけどさ、ちゃんと私も報酬をもらってるからねー、その分は働けてるかなって不安になるけどさ、キミのそういうところ好きだな」
「さっ! お仕事についての話はここまでにしよっか。あ、違う! 仕事の話ではあるんだけどー、うーん……。とりあえずこれ見て! ふふんっ! なんと出張動物園を呼べるチケットが当たりましたのです! なのでキミの家に呼ぼうと思います!」
「偽物じゃないよー! えー、知らないのー?! 動物園って家に呼べるんだよ! 友達がいってたし、ネットで調べたからね~」
「あ、これはキミの願いの産物じゃないよ。私がキミのために国内の商店街を飛び回ってガラガラを回してきたんだから!」
タンッ、本を置く音
「さ、呼ぶ動物を一緒に考えよっか。ここにパンフレットがあるんだけど、この表紙のお馬さん可愛くない!? ポニーだってー! こんな子も呼べるんだね~」
「キミはどんな動物が好き? え、すごっ! アルパカとかもいるー!」
「そんなことよりも呼ぶ場所がないって? ……あははは、考えてませんでした。ごめんなさいー」
「ちょっと待ってて、この景品を返してくるよ。欲しい人に再抽選で渡ってくれたら嬉しいしね。まだ受け取ったばかりだし」
バタバタと片付ける音
「ごめんね。それじゃ、ちょっといってきまーす!」
ガラガラと窓を開けてバサバサと飛んでいく音
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