癒し ―動物園・後編―

 チリーン、風鈴の音

 にゃんにゃんにゃ~、至る所から猫の鳴き声


「にゃ、にゃ~~~ん。にゃにゃにゃ~」


 ……、少しの沈黙


「~~~っ!!! もうっ! キミは私に何させるのかなー!」


「ネコカフェに行ってみたいって願いだけで飽き足らず、可愛い彼女のネコちゃんの真似が見たいだなんでまったくー」


「けど私がネコちゃんの真似したんだからもう実質彼女でいいよね! 役得やくとく~っ!」




「そうはいっても、なんでネコカフェなの? 動物園はどこいったの? チケットがないからいけないとかそういうのはなしね!」



「……しかたがないなぁ。じゃあ今日はネコカフェってことにします。確かに檻の中にいる動物よりも自由に放し飼いされてるネコ見てる方が癒されるってのは一理ある

からね。キミ担当の天使として納得してあげるよ~」


 にゃにゃ~、ネコたちが喜ぶ鳴き声


「それにしても可愛いね~。私も撫でていい?」


 シャーッ! 威嚇する猫の鳴き声


「なんで私に威嚇するのー!? ねぇ、キミ。ちょっとその子抱いてみて? そうそう、そのまま私の方に……」


 シャーッ! 威嚇する猫の鳴き声


「うぅ……、なんでこんな目に~! ―――あっ、リスがいっぱいに変わった! え、もしかして私のために?」


「ふふっ、ありがとう。こんなにリスがいっぱいいるとリス村みたいだね~。あ、もしかして私が動物園って言ってたから、いろいろと動物を変えてくれるのかな?」


「あははっ! って、元気出たよ~~~! ありがとねっ!」


「そういえばさ、動物園の動物って檻の中で飼われてるってイメージあるけどさ、それでも幸せそうな動物もいるんだよね~。環境を楽しめるのがストレスなく生きてくコツなのかもねー。もちろん人間もだけどね」


「例えば? ん~、パンダとか? 自然にしてるのが愛嬌があって可愛いってあの子たちはきっと自覚あると思うんだよねー」


「あ、そうだ。『ぱんぱんぱんだの大冒険』って物語知ってる? WEB小説投稿サイトに無名の作家が投稿した知らない人は全く知らない作品なんだけど、一匹のパンダが動物園から自由を求めて脱走してさ、ウサギさんと最後は幸せに暮らす話なんだけどリズム感好きなんだよね~。そのぱんぱんぱんだシリーズがね、檻の中のパンダのお話で番外編がでたんだよ! 歌ってあげるね」



 ズンチャ、ズンチャ、リズムよく音楽が流れ始める。



「ぱんぱんぱんだは考える♪ 飼育員がエサくれる♪ それだけじゃなくて世話してくれる♪ 優しい優しい好きな人♪ ぱんぱんぱんだは檻を見る♪ 自由はないけど危険もない♪ 好きに自堕落ぱんぱんぱんだ♪ それって自由か?ぱんぱんぱんだ♪ 答えは出ないが大事にされてる♪ 見たけりゃみろよとぱんぱんぱんだ♪ 幸せ見せつけ悦に浸る♪ ぱんぱんぱんだは今日も自由♪」




「どう? なんか考えさせられるようで何も考えてない感じよくない?」


「あははっ、確かに変わった歌だけどさそれも癖になるんだよねー」


「この歌詞はもっとシンプルに考えなよー。きっとさ、このパンダも見世物としての仕事を頑張った先がわからなかったんだよ。けど、ある意味で同僚の飼育員さんはちゃんとパンダのことを見てくれてるからさ。ちゃんと見世物として働いてエサを貰う生き方も、生存のために生きる生き方とは違って檻の中だけど自由で幸せだよって言いたいんだと思うんだよねー」


「自由なんて結局はさ、一人一人で捉え方が違うものだと思うの。だって一人で生きてるとさ、生きてるだけで手いっぱいになるよね? それって本当に自由かな?」


「お互いにギブアンドテイク、持ちつ持たれつで生きていくって素敵だと私は思うんだよね。たとえその身が自由でなかったとしても、その人がその生き方を選ぶのもまた自由っていうか」


「だからさ、キミも恋人でも友人でもいいけど、一生大切にしたいと思える大事な人を見つけてほしいな。もちろんキミを大切にしてくれる人でだよ?」


「一人で生きていくのって自由ではあるけどせっかく私たちには文字も言葉もあるんだからさ。自由に気が合う人と人生を歩いて欲しい。もし一人で孤独だったとしても、誰かと一緒にいれば二人分の孤独が消えてお得でしょ? ―――それが私だったら嬉しいけどね」


「ま、重い話はここまでにしてー! 私もキミのこと好きなんだぞってこと分かってくれたかな? 今度、動物園に行く時にはさ、この子は檻の中で何を考えてるのかなとか動物たちの気持ちを考えてみるといいかもね。たぶん飼育員さんにエサくれーって自堕落な自由を謳歌してると思うからさ」


「じゃ、もう今日は遅いから私は帰るとするねー。少しはキミの人生の悩みがスッキリしたのなら嬉しい。―――今は無理でも、いつかどうだったか言葉で教えてね。それじゃ、またね」


 チリーン、風鈴の音

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