癒し ―友人・散歩―

(チリーン、風鈴の音)


「こんにちわ! あ、今日は外なんだね」


(ザワザワ……、草が揺れる音)


「ん、ありがと……、って、キミ~、ナテュラルに手を取ってくるのは凄いね。それだけ私とキミとの距離が縮まったって思っていいのかな?」



(タン、タン、タン、二人で歩く音)


「それにしても私がキミのところに来れるってことは疲れてたんじゃないの?」


「……そっか。休むのに疲れたんだね」


(……無言の時間)


「車とかバイクで走るのも爽快感あるけどキミの望みは歩きなんだね」


「―――なるほどね。キミは自分の足でちゃんと歩いていきたいんだ」



(タン、タン、タン、二人で歩く音)


「もしかして、人生という道にこの景色は例えてるのかな?」


「なんでそこで黙るのかなー。大丈夫、キミの道をキミはちゃんと歩けてるよ? そっか、そういうことかー。いいよー、ゆっくりいこ? キミのペースでさ」


「大丈夫だよ。この夢が覚めても、夢を見たキミはたしかにここにいるだから。キミの一歩でも前に進んでいきたいって思いは夢なんかじゃないよ」


「ねえ、なんでこの道は舗装されてるのに誰もいないんだと思う?」


「―――それはね、どんなに夢や理想を掲げてもさ、共存社会という名の道であることは変わらないからだと私は思うんだよね。誰かがキミのために用意した道、それは親だったり教師だったり、歴史上の人物やキミが夢を持つきっかけになった憧れの人だったりするけど、先人たちがさ、キミが歩きやすい様に整備した道なんだよ」


「人は言葉を持ってから急速に文明を発展させたって話あるよね。一人ではできないことも二人なら、三人寄れば文殊の知恵とかさ、足し算にもなるし、掛け算にもなる。……まぁ、人の足を引っ張るのが好きな悪い子もいるけどね」



(タン、タン、タン、二人で歩く音)


「どう? 私の言葉の意味は分かってくれたかな? もし、キミが誰もやったことのない夢を掲げて歩きたいなら横に逸れて草むらを歩いたらいいんだよ。けど、私は今『横に逸れて』って表現したみたいに、そこに道はないの。キミが思い描くようなゴールもないのかもしれない」


「もしかしたらゴールしても、それをゴールだって言ってくれるのはキミが死んだあとかもしれない。よく名画が死後に有名になるあれだね」


「けどさ、それを選ぶのも……、ううん。選べるのもキミだけなんだよ。今、キミの隣を歩いてるのは私だけどさ、一緒にそんな道を歩いてくれる仲間がいたら素敵じゃないかな? だからさ、やりたいことがあるなら一人で頑張るのもいいけど、誰か同じ夢を持っている人と頑張ってみてもいいんじゃないかな?」


「うん、そうだね。それが仲間で、きっと―――友人って存在だと私は思うな」


「遊んで気を紛らわすのも友達かもしれないけどさ、キミの夢を応援してくれる。本当にダメだと思った時には茶化さずに止めてくれる。そんな友人の他に、キミの夢を共に歩いてくれる友人がいて欲しい。私はもちろんその一人だけどね」


(ザッ、ザッ、ザッ、複数の足音)


「姿は見えなくてもさ、キミの知らない世界でキミと同じ道を歩いてる人は何人もいるはずだからさ。―――キミは一人じゃないって忘れないで。そして、もしそんな人に出会えたならキミから声をかけてあげてほしいな。私みたいな存在がその人の元にいるかわからないから。―――キミがその人の孤独を救ってあげてね」


「それじゃ、せっかく二人で歩くんだしもっと見晴らしのいい景色にしよっか。―――えいっ!」



(ビュー、風が吹き抜ける音)


「自分から夢を険しい道だとか思わなくていいんだよ。楽しんでいこうよ。好きなんでしょ? 叶えたいんでしょ? その夢」


「だったら楽しくなくっちゃ! もしもイヤになった時に何も残らないとか、後悔して欲しくないなー」



「苦労した思い出も良い思い出で、もしキミが夢の途中で歩みを止めても、キミが踏み固めたその道を、他の誰かが歩きたいと思えるような楽しい道にすることができたらさ、───キミに憧れて、夢を引き継いでくれる人がいるかもしれない」


「もしかしたら、その人がキミを夢まで連れて行ってくれるかもしれない。だからさ、勇気を出して楽しい道中にしようよ」



(チリーン、風鈴の音)


「今は私がいてあげるからさ。キミの夢を応援してるよ」

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