※30話時点でのレビューです。
本作がどんな内容なのかは、サブタイトルが一言で語ってくれています。
「他人が作った未完成RPG世界への転移」
ええ、未完成なんです。
なのでイベントのフラグ管理やシステム設定など、そこかしこがザルです。
イベントが本来ありえないルートをたどると、簡単に進行不能になったりする。
完成していない機能を使うと、システムメッセージが素で出てきたりもする。
そんな世界の中で、製作者の意図をメタに読みながら、フラグを立てたり(物理で「フラグが立った音」が鳴ります)立てなかったり、試行錯誤しながら主人公は進んでいきます。
そんな世界の中、旅の序盤で出会うのが、旅の仲間となるひとりの魔人兵。
主人公が使ったスキルの影響で、もともとモブだった彼は、主要キャラとしての立ち位置を得て主人公に同行することになるのですが。
このふたりの関わりがなかなか良いのです。
未完成シナリオに翻弄される元魔人兵を、気遣ったり義憤を抱いたりする主人公。
己を救ってくれた主人公に忠誠を誓う、元魔人兵。
暑苦しくも尊いやりとりが、メタい世界に人間味を与えてくれています。
……双方ともおっさんですけどね!!
主人公はふとましいポヨポヨおっさん。元魔人兵もラウンド髭のごついおっさん。
ですが本作は小説です。直接的なビジュアルはありません。おっさん同士が尊くても何の問題もありません。
おっさんふたりの行く末を、楽しみに追わせていただきたいと思います。
この「ヒトツク」は、ただのゲーム世界への転生ではない、他人が作った未完成のゲームへの転移であることにまず驚く。
「未完成」故に起こるイレギュラーなイベントが、他のよくある物語とは一線を画している。
まず主人公がイケメンならぬデブのゲーム好きというところが、現実味があってよい。
その主人公が10年も入れ込んでいる「ヒトツク」と言うゲームの世界での最初の仲間が「名称未設定」だったり、意図しない行動をしてデバッグルームへ創造主に呼び出されるなどメタ的なところが良いスパイスとなって先が全く読めないため、この後どうなるのかな?と気になってどんどん読み進めてしまう。
モブキャラクターが自我に目覚め、世界の広さ、美しさを知るというところにもスポットライトが当たっていて、「人」の主人公と「モブ」から従者へ格上げになった男2人の道中がなんとも微笑ましく描かれている。
他にもクリティカルヒットが戦局に大きく関わることや、ジョブチェンジやキャラクタービルドなど、ゲーム好きにとってはワクワクする要素であり、悩める問題でもあり、そこが丁寧に描かれていて、おもわず、うんうん、と頷くポイントだ。
結論、ゲームのストーリー性やメタ性、練り込まれた設定はゲーム好きな人にも、あんまりゲーム知らない人にも親和性がある。一推しです!
皆さんはツ〇ールなどのRPG製作ゲームソフトで遊んだことはあるでしょうか? このお話は、まさにそういうゲーム製作途中の世界に転移してしまった男(37歳)の物語です。
主人公サカキが気付けば飛び込んでいたこのゲーム世界は、彼自身のものではなく他人の作りかけのもの! そのため、持っている知識と経験で、サカキは手探りにゲームを進めていくことになります。
最新話の27話まで読んでのレビューですが、この作品の特徴の一つは、主人公がそれほど若くない男性だということ。自堕落な生活のお陰で太ましく、ナメられたくないからと厳つい装いを好む人物です。更に途中で仲間になるのも、タグの言葉を借りれば「おっさん」。キラキラした現地のヒロインがすぐに仲間になったりはしません!笑
しかしこれがジワジワ面白いのです。
現実世界では主人公サカキには友人がいませんでした。しかし彼はここにきて、おっさん仲間と他愛のない会話をし、一緒に食事をし、時には協力して敵と戦ったりしていきます。そんな過程を経て、凝り固まっていたサカキの気持ちが徐々に変化していきます。その様子が、折に触れ丁寧に描かれているのです。
作りかけのゲーム世界ゆえの面白さもあります。想定外の行動をするとイベントが止まってしまったり、キャラクターが同じことを繰り返し始めたり、ルート分岐に悩まされたりもして。「あるある!こんなこと!」がたくさん盛り込まれています。コメディタッチに物語が進んでいくため、よく楽しい笑いを誘ってくれます。
今はゲーム世界も創造主の思惑も見えない部分が多いのですが、まだ物語はこれから。
今後の展開が楽しみなお話です。
お薦めします(^^)!