後日談

 ――「あ、れ? 痛っ。ここ、どこだ?」

 最悪の目覚めだ。

 体に圧し掛かる重量感。全身の激痛。

 棺桶に入れるんじゃなく棺桶を乗せられてる。

 天国って嫌なところだな……棺桶にしちゃ小さいな。


「お兄、起きたーーーー!」

「……重いんだけど。棺桶じゃなくて宝箱、重いんだけど」

「エイト……目が覚めたか。パーになってないか? 私が分かるか?」


 なんだこれ。宝箱乗せられて身動きが取れないまま……ヤーレン、だよなこいつ。

 布団の上から俺の体を……「痛だだだだだ! ばかお前そこもろ傷口だわ! 死ぬ!」

「えっ?」

「えっ……じゃねえ。はぁ。俺たちまとめて天国にでも行ったのか?」

「何を言ってるんだ。全部お前が……いや、目が覚めたのなら挨拶しに行くぞ」

「はぁ? 挨拶って誰にだよ。まだ動ける体じゃない……いや待てよ。まさか天上の女神様!?」

「誰が女神じゃ、誰が!」


 あれー。この声プリンちゃんじゃない? 

 んじゃここは魔王城か? 


「エイトの声が聞こえると思って心配して来てみれば……思ったより元気そうじゃな?」


 そっか。あの後助かったのか。

 攻撃されて死んだわと思ったんだけど。


「プリンちゃんのお陰だろ。感謝してるよ。体も多少は動くか……よっこいせっと。痛つつ……あれ? なんで俺裸なんだ?」

「ばば、バカ者! 服を着せておけとあれほど言ったであろう!」

「だってぇー。魔王様の反応が面白そうだったからつい、ね?」


 近くにサキュバスのお姉さまがいらっしゃるじゃありませんか。

 もしかして彼女に脱がされたんですか。

 本望です! 有難うございます! 


「全く。しまらない男だなお前は」

「ヤーレン。お前も助けてくれてありがとな。傷は平気なのか?」

「なっ!? そういう時だけ素直になるのはずるいぞ……だから大丈夫だと言っただろう。私は水魔法に抵抗力があるんだ」

「お礼に俺の裸踊りを見せてや痛だだだだだ!」

「直ぐに誤魔化そうとするな。他のみんなも心配してたんだぞ。お前だけ取り残されて」

「そうだ! 俺転移出来ずにあのリリスってババアに捕まったんだ。それでクラウドさんに最後を託して……突き刺されて死んだんじゃ?」

「それには吾輩が応えてやろう!」

「うわーーー! びっくりするだろこの野郎! いきなり背後から話掛けるな!」


 現れたのはミドロとかいう悪魔を名乗る変な奴。

 この世界の奴ら全員背後から現れる趣味でもあんのかよ。


「ふむ。吾輩はな。人をあっ! と驚かせるのが大好きな悪魔である。一花いちかという者より例の約束の品、しかと受け取ったぞエイトよ。貴様が助かったのは渡した身代わりの殺人形のおかげ。役に立ったようで何よりだ。本体はこちら」


 ざっくりと切り刻まれているボロ人形。

 ……この人形が無かったら俺がこうなってたみたいで嫌だわ。


「ミドロってこんなものまで作れるのか」

「それは魔王様の知人、ちょっとおかしな魔道具開発が趣味の魔王、ベリドーグという者が作った試作品だ。彼は妙ちくりんなものをたまに売りつけに来てな。最近勇者につけ狙われているという噂を聞いてからは来なくなったな。そうだ、貴様にはこの対価を支払おう」

「ふーん……ってなんだこれ? 金? 気持ち悪いデザインだな」

「それはハデス通貨である。魔王国においてはその通貨しか使えんから覚えておくがよい」


 趣味の悪い通貨だな。

 とミドロの話を聞きながらじーっとプリンちゃんを見ていたら、プイっと横を向かれた。

 まぁ俺、まだ上半身裸なんですけど。


「こほん。エイトよ。お主が眠っている間にあのライオットとやらが町の状況確認や様々な提案をしてな。童は忙しい。忙しいが……もう少し動けるようになったらゆっくりと話がしたいと思うておる。まずは休むがよい」

「ああ。そうさせてもらうよ。クラウドさん? クラウドさーん?」


 あれ、返事が無いな。俺、マジック回復してないのか? 

 

「リファレンス」


 エイト

 年齢 26

 職業 町を救った英雄

 レベル 770

 LIFE 23580/23580

 MAGIC 39390/39400

 STR 775

 VIT 2322

 DEX 5322

 INT 999999不能

 AGI 534

 習得魔法 無し

 スキル AIトーク、AI生成メニュー、AI並列処理、AI疑似音声



 ……なんかレベル一つ上がってスキル項目増えてる。

 マジックは全快してんな。

 もしかして俺がAI道具生成してそれをクラウドさんが使ってるからずっとさまよってるとか? 

 だとしたら! 「マスターがお目覚めと聞いて急いで戻って参りました」

「やぁクラウド。こいつ心配そうにクラウドさーん! なんて叫んでたぞ」

「お兄。寂しがりやだねー」

「……」

「マスター。クラウドを心配して頂き幸せです」

「おおおーーーーー! モノホンのホーリーカオスじゃねえか! まじか。サイズは? 武器は? んんー? 俺が何百何千と試行錯誤して作った動きは? 必殺技は? あるのか? あるよな? あるんだよなーー!」

「はい。全てマスターのご要望通り。最強のクラウド、爆誕です!」

「すげー。背徳感あるわー。聖剣見せてくんない?」

「はい。我が君の剣よ、我が下に敵を討て。具現化エンバディーメント


 分厚い幅広の剣に超複雑な幾何学きかがく模様が刻まれた剣。

 かっちょええ。これだわ。写真、写真を! 俺がクラウドさんの肩をつかんでクラウドさんが決めポーズしてるやつを! 


「ふふふ。こうして生成されてもマスターの意思はちゃんと伝わっております。インスタントカメラ生成開始……完了しました」

「よーしこれがあれば……もう隠しても無駄だろうしお前ら来い!」

「食べ物? ミミーも!」

「仕方ない。今日くらいはお前のわがままに付き合ってやるか」

「おやおや。このライオットを忘れてもらっては困りますね」

「エイト、ようやく目覚めたか。俺も映っていいか?」

「あたいだって!」

「お前らいつの間に……一花いちか二花ちかはいないのか?」

「上にいるわエイツ」

「少し高いところからエイト様を見物してました。気付きませんでしたか?」

「全然分からなかったわ。突然現れるなっつったけどふつー天井から現れるか? まぁいいや。そんじゃ、俺たちが魔王城で過ごし始める記念!」

『はい、ホーリーカオス!』


 パシャリと一枚の写真が落ちる。

 これでようやくAI生成の日々と魔王城の生活が始まるんだ! 


「そーいやお前、冒険者ギルド長が呼んでたぞ」

「あたいら冒険者ランクDに上がるって聞いたよ。魔王城の近くにはダンジョンが沢山あるんだ。お宝探しに行こうぜ!」

「おいおいエイトは病み上がりなんだぞ。少しは休ませてやれ。しかしDランクからは新たに職業を獲得し、それに準じた能力を得られるんだったな」

「エイト様。ライオット様も可及的要件があるみたいですよ」

「エイツ。あなたとクラウドお姉様には執事の子供たちに読み書きを教えてあげて欲しい。ここは教育できる場所が少ないから」

一姉いちねえ。エイト様はその前に魔王城付近の観光が必要です」

「エイト。私と少し剣の修行をしないか? お前の剣技を学びたいんだ」

「ああもう、うるさーーーい! 俺は大人しく部屋に引きこもってAI生成していたいんだ!」


 結局騒がしい日常。

 俺たちは無事魔王城のおひざ元に避難出来た。

 これでAI生成の日々と魔王城の生活が始ま……始まってくれぇ! 


 END。 

 最後まで読んで頂いた皆様。

 有難うございました!  続編を書くべきかの有無や次回作など、作者のモチベに大きく関わりますのでぜひ感想や星、いいねなど頂けると嬉しいです。


 そして! ここにわずかに出た魔王ベリドーグさん。

 なんとですよ、その物語が開始されています! 

 その名も!【異世界魔王とダンジョンモール 逃走した魔王の転移先がまさかのダンジョンショッピングモールで、道具屋を始めることになりました】


 どんな物語か……作品をぜひ見に来て下さいね! (まだなろうとカクヨムオンリーですみません。サイト広げすぎると大変なんです。


 今後もじゃんじゃか書いて参りますので、応援よろしくお願いいたします! 

 紫電のチュウニー(隻眼のぴっぴ)でした! 

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魔法を一つも覚えずに転移した国から追放され牢屋へ入れられたが、スキル【AI生成メニュー】を駆使して王国を離脱し生きようと思います 紫電のチュウニー @kazyu0093

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