第40話 結末はいつも……
俺がAI生成したでかつむりを見て、ゴリラとその部下がやいのやいのと叫び始めた。
「ゴールリラール様。あれはキャタピラズクロウルです。しかもかなりの大型!」
「くっ……一体どこから呼び出した? 魔法陣型のトラップでも仕込んでいたか。あの領主め……引きずられて連れていかれながらなんという邪悪な笑みを浮かべていやがるんだ」
……すっごい遠くから叩きのめせだの殺れだのとボッチの声が聞こえる。
思ったよりあいつもクールじゃないな。
いや、あいつも寝てない俺と同じ状況か。
さて、キャタピラニア苦労人とかいう化け物を出したけど、こいつ何が出来るんだろ。
単純に似せて作っただけの偽物だし、魔法反射以外特に無いよな。
「魔法兵よ、一斉に構えて撃て!」
『我が意の下に仇敵を討ち滅ぼせ。炎の力、フレイムアロー!』
おー。すげー。火の矢だよ。
あの勇者が土の弾丸とかいうのでちょっとつまらなかったのに、こっちはガチ目の詠唱魔法だわ。
やっぱ現地民は違うねえ。兵士が剣を片手にフレイムアロー。
いいじゃんいいじゃん。絵になるわ。
インスタントカメラで撮りたいくらいだよお前ら。でもな……「ゴール隊長! 効いていません!」
「なんだと!? キャタピラズクロウルの弱点は火属性だろう!」
「おらおらどうしたゴリラ。俺のキャタ……キャタピラニア苦労人はピンピンしてるぞ!」
「……キャタピラニア……まさか亜種か! もう一度構えろ! 別の……水の中位魔法だ!」
『掌握せし大気の魔よ。我に従い我が敵を討ち滅ぼせ。水の力、アクアスパイラルランス!』
「お前ら! 上を狙わんか、上を!」
おお、今度はゴリゴリに回転した槍のような水魔法!? 全部で十二本もあるぞ。
それが全部俺の方に……いいねいいね! じゃんじゃん魔法カモンだわ。
「マスター! AIジェネレーター消失を推奨します!」
「何言ってるんだ回復薬はまだあるぜ」
「何をやっておる。もっとよく狙わんか!」
「えっ?」
水の槍の一発が俺の横をかすめた……飲もうとしていた回復薬に当たっちまった!
「くそ! AIジェネレーター消失……うおお、落ちる!」
「消えたぞ! あの薬で呼び出していたに違いない。よくやったぞ! いまだ、あの男を狙え!」
『掌握せし大気の魔よ。我に従い我が敵を討ち滅ぼせ。水の力、アクアスパイラルランス!』
やっべえ! 勘違いしてんのはいいけど、着地でずっこけた。避けられね……え?
「エイト!」
うわ。目の前に美女! いい匂い……じゃなかったヤーレン?
お前何しに……「無事、か……」
「邪魔が入り仕留め損ねました!」
は? 何だこれ。暖かい……青い、血、が……。
「私は、大丈夫。このスクロール。それぞれの色名、そして
「おいヤーレン。しっかりしろ! バカ野郎が! クラウドさん!」
『マスター。マジックがありません。残念ながら今はAI生成不可能です』
「……頼むぜ、プリンちゃんよ。レッドリリース。パープルリリース。ブラックリリース! 待ってろヤーレン。死ぬんじゃねえぞ!」
俺のミスだ。あの時プリンちゃんにふざけてないで使い方を聞けば良かった。
女の子から何かもらうなんて、そんな経験無かったから照れ隠ししちまった。
慣れてないことはすんのもされんのも好きじゃねー。
でもな。俺なんかかばって頼むとか言われたらよ。
「びびってる場合じゃねー!」
「た、隊長。これはあまりにも……」
「ぐ……急ぎ退……」
『グオオオオオオオオオオオオ!』
プリンちゃん、とんでもない贈り物だぜ。
スクロールとやらに入ってたのは三匹の竜。
しかも超大型だ。こいつが魔王の力ってか。
「俺の命令聞いてくれるよな。あいつら蹴散らせ。町の住民助けてくれ。頼むよ」
俺の指示と共に動き出す三匹の竜。
どうやら命令は聞いてくれるようだ。
今のうちにヤーレンを聖男様の下に……ってちょうどタイミングよく戻って来てくれたリーアたち。
全員無事か。
「聖男……聖女様。ヤーレンを治療してやってくれ、頼む! 金はつけでもなんでも払うから」
「ふふふ。もちろんだよ英雄君。あのとき突然私の前に来た不思議な君が、まさかねえ」
「いいから早く頼むって。あいつら追い出したら急いで転移の支度しないと……って回復薬がねえ。やべーどうしよう!」
「マジック不足か。それなら私のを使うといい。特別品だよ」
「まじか。助かるぜ聖女様。ヤーレン、死なせないでくれよ!」
傷付いたヤーレンを聖男様に預けて竜の跡を追う。
あいつらが撤退するところを確認しないと。
……って三匹の竜やば! 完全に兵士をじゅうりんしてるわ。
兵士たちはわれ先にと逃げ出してる。よし、これなら!
「お粗末な姿ね」
「そうね姉様」
……背筋がぞくりとした。空からとても冷たい、聞いたことがある声がした。
見上げると、あのマジックアカデミア巫女姉妹が浮かんでいた。
片方は見間違えるはずもない。
俺を追放したババア、リリスだ。
だが……兵士の撤退は確認出来た。
回復薬を一気に飲み干し……「クラウドさん!」
『マスター。移送方陣の展開を開始します』
「あらあら。まさか国境警備兵を全員追い出すなんて。無能なあなたの出来ることじゃないですよね。八神さん……でしたか?」
「そうだな俺の力じゃない。誰の力かなんてあんたには関係ないけどな」
「ふーん。どちらにしても少しだけ……あなたを調べる必要が出来たのでわざわざ私が出向いたのです」
『転移方陣、発動します。マスター』
「よっし!」
「ヘヴィスペルウィップ」
「へっ?」
ムチみたいなものが俺の体に巻き付き、空にいるババアに引き上げられた。
その瞬間町は姿を消し去る。
くそ、まじかよ。
タイミング悪く転移方陣から引き剥がされちまった。
しかもこのムチに絡みつかれた瞬間、呼び出した竜が消えちまっただと!?
「これは……一体どういうこと? 町が消滅した? 八神さん。あなた一体何をしたんですか」
「へへ、へ……ざまぁねえ。ま、これも運命か」
「これもあなたが? いえ、そんなはずない。あなたは無能。そうでしょう?」
「そうそう。俺は無能でなーんの能力もないカスだよ。だから牢屋にでも入れればいいだろ……ホーリーカオス生成……クラウドさ……ん」
「牢屋? 何を言ってるんです? あなたには死んでもらい、マジックオブコートを攻め落とす口実にするんですよ。この町で勝手に処刑されていたということにして。でも、町そのものが無くなってしまうなんて……いえ、あなたを殺された怒りで勇者が町ごと滅ぼしたことにしましょう。さようなら、八神さん」
『AI道具生成……完了しました。マスター。死なせません!』
「八神さん、最後に言い残すこ……マジック切れを起こしている!? こいつ、一体何を! 魔法は使えないは……」
はぁ……あとは頼んだわ。俺、眠くて仕方ない。
俺の愛しい……
「対象を補足。排除を開始します。マスターを、放しなさい!」
「くっ。一体どこから! 死ね、八神八雲!」
ああ。クソババアに俺が串刺しにされるのが見える。
ダメだ。死んだわ。すまねークラウドさん。
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