第2話 王宮へ

俺のところに王宮から使者が来て、行くことになった。


 馬車の中で、どうしよう、どうしようと緊張していた。

 いくらなるようにしかならないとはいえ、どうなるかわからないので、緊張していた。

 あの時王女を助けなければ……との思いが俺の頭をよぎったが、とてもじゃないが、助けないわけにはいかないし……


 そうこうしているうちに、王宮についてしまった。馬車から降りて、王宮に上がる。

 俺の心臓は、緊張でバクバクだ。衛兵が俺を謁見の間に連れていく。

 

 廊下を歩いていると、すれ違った人たちの冷ややかな視線を感じた。

 俺って嫌われてるんだなーって思った。

 

 謁見の間に着くと、そこに、王女と金髪碧眼の偉丈夫の男がいた。

 

 この人がアセリア国国王、ジョージ・マルズバード一世か。

 

 俺は国王の座ってる玉座に近づき、臣下の礼をして、口を開く。


 「国王陛下、私は、ホルスタイン公爵家の嫡男でありますカイン・ホルスタインと言います。お初にお目にかかります」


 「そちのことはかねがね聞いて知っている。娘を助けたと聞き、とても驚いている。娘ともども礼を言う」


 「ありがたきお言葉にございます」


 俺の悪評は国王の耳にも入っているのか? 助けたことを意外に思ってるようなので、おそらくそうなんだろうな。


 「娘を助けた礼をしたいが、どのようなものがいいかな?」


 「礼など滅相もございません。当然のことをしたわけですから」


 そう答えると、国王は思ってもみなかったといわんばかりの反応をした。


 「そうか、礼はいらぬか、これは意外だな。そういえば娘からも話があるようだ」 


 俺が、褒美欲しさに助けたと思ってるのかな?俺の悪評のせいでそう思われたのかな?


 エメリアが俺の前に来る。


 「カイン様、この度は助けていただきありがとうございます。あの時は、死ぬかと思っていました」


 「いえいえー姫様が助かってよかったですよー」


 「私からもお礼がしたいので、私の部屋に来てください」 

 

 「わかりました、まいります。」


 俺は謁見の間から王女の部屋に来た。

 王女の部屋は豪華な内装だが、どこか、かわいらしさがあった

 

 王女は机の上にあった小さな箱から指輪のようなものを取り出して俺のとこに持ってきた。


 「これは、破邪の指輪というものですわ。これは、魔よけになるものですわ。あなた様へ差し上げます」


 「いやいやー指輪をもらうために助けたわけじゃないですから……」


 「受け取ってください! そうしないと私の気が済みませんので!」


 「……わかりました。そういわれるなら受け取っておきます」


「ありがとうございます!」


「それと私のことはエメリアとお呼びください。口のきき方もため口で」


「そんな! 王女様を呼び捨てにしてため口なんて!」


「できないとおっしゃるのですか……」

 

 王女は今にも泣きだしそうな勢いだった。

 それを見た俺は……


「わかった、それじゃ……エメリア」

 

「カイン様!」


「人がいるときは言わないけど、二人の時はため口で言わせてもらうから、エメリア」


「はい!」


 ……数刻後、王宮より屋敷に帰った俺は、部屋で机に座って、もの思いにふけっていた。


 今日は、何かあるんだろうかと思ったけど何事もなくてよかったな。

 ただ、俺の悪名が広まってることをまわりの視線や国王の態度で再確認したけど……

 それにしても、エメリアは俺に気があるみたいだったな。


 そう思ってた時ドアをノックする音が聞こえたので、ドアを開けると、長髪でひげを蓄えた中年の男性が立っていた。

 その姿に見覚えがあった。たしか、父のアルバート・ホルスタイン公爵だったな。俺は父に口を開いて喋った。

 

「これは父上、どのような御用でしょうか?」


「今日お前が王宮に呼ばれたと聞いてな、話を聞こうと思ってきたんだ」


「ああ、そのことですか。この前私が、王女を魔物から助け出したので、お礼をしたいとのことで

王宮に参ったのですよ」

 

「そうだったんだな。それでお礼とはいったいなんだったんだ?」


 それを聞いた俺は、箱から指輪を取り出して、父に見せた。


「この、破邪の指輪というものを、エメリア王女様からもらったんですよ」


「王女様からもらった?これをか」


 父はしばらく指輪を見ていた。そしてこういった。


 「王女様に気に入られたようだな」


 「……」

 

 「王女様と仲良くなるのは我がホルスタイン家ととってはいいことだ」

 

 「これからも、ホルスタイン家のために頑張ってくれ」


 「はい、父上」


 「では、またな」


 そういうと父は部屋から立ち去った。


 父が去った後、今後のことを考えた。俺の悪名は結構広がっているようだ。このままだと主人公達に

殺されるかもしれない。それを回避するためには、主人公達を味方にしたほうがいいんじゃないか?

 

 俺は聖女でのちに主人公の仲間となるエメリアに気に入られているようだし、そうしたほうがいいだろう。

エメリアとは、どんどん仲良くなって味方になってもらおう。

 そして、主人公やその周りの人たちも味方につけたい。主人公はどこにいるのか?


 主人公はゲーム「ビクトリーロード」に出てくる勇者で、のちに聖女や他の仲間たちと

一緒に魔王を倒すことになる。本来の話では最強の魔力と魔法と引き換えに魔王の手下となった

俺は、主人公達と戦い、殺されることになる。

 

 主人公が表に出てくるのはまだ後だし、今はどこかにいるんだろうけど、

皆目、見当がつかない。ん? 待てよ? たしか主人公はランガート村の出身って

設定に書いてたな。今も、もしかしてまだ村にいるかもしれない。

 

 主人公も俺と同い年の十五歳だし、まだ村を出てないかもしれないな。よし! 行ってみよう。


 俺は、ランガート村に行く準備をした。ランガート村は屋敷から、歩いて1日でつく距離だ。

 次の日、支度を整えた俺は、ランガート村に向かって出発した。

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