始まる事のないまま、雨の日に散った恋

読了させて頂きました。
約束も何もなくても、何かに導かれるように雨の日に出会う二人。
雨の公園の東屋で、偶々雨宿りを一緒にした時から、二人の間で確かに「恋心」は芽吹いていた。

しかし、そこから二人の恋物語が始まるような事はない。二人が会うのは、雨の日の偶然でしかない…。

「学園の王子様」と扱われていた、今井の中の「恋心」は、二人の恋物語として始まる事はなく、宇田川の薬指の指輪を見た時、脆く散りました。その場面の、今井の心情描写が個人的には切なかったです。

百合というジャンルで、不動の人気である学園の王子様系女子。 しかし、今井は、その扱いが「時間限定のもの」に過ぎず、皆、大人になれば、王子様ともてはやしていた事など、あっさり忘れていく事を悟っていました。その心情描写が切なく描かれていました。

学園、女子校の王子様、という扱いの女性は、ある意味、12時の鐘の音でお姫様ではなくなるシンデレラと同じかもしれないと、感じました。12時の鐘の代わりに、彼女達は、卒業の鐘の音の後は、王子様でなくなるのだから。