第30話 気にしてしまう私が変なのかな?(エカテリーナ視点)

「何でそんな大事な事を黙ってたのよ」

「お爺ちゃんに、彼らの平穏のために周囲に知らせないほうが良いって言われたんだよ。それにゲーム関連の事なんてみんなの近くで話せないだろ?」

「それはそうだけど耳打ちしてくれても良かったじゃない」

「その場で言っても何か出来る訳じゃ無いだろ・・・」


 泉探索のあと村に帰り、苦労してメモした石碑を解読している最中。兄貴から呼ばれて泉の近くで森の妖精に会った事を伝えられた。


「それでどんな感じだったの?」

「髪が緑で、色白で耳が尖っててイケメンだったね。少し身長は低かったかな。他は人と変わらなそうな感じだったよ」

「髪が緑で色白?」

「透き通るように白いっていうのかな、コカトリスと戦って倒れていたみたいで顔は泥と血で汚れてたけどね」

「ゲームで出てくる魔族は白髪で褐色の肌よ?」

「じゃあ違う種族なのかな?お爺ちゃんは森の妖精って呼んでたけどね」

「違うかもしれないけど、裏ダンジョンやスタンピードには関係してそうだわ」

「確かに・・・」


 その内彼らに接触する必要があるかもしれないけど、今は保留するしか無いか・・・。


「それで翻訳はうまくいってるの?」

「えぇ・・・多分ダンジョンの封印は開けられるわ」

「へぇ・・・」


 あの石碑には英語でダンジョンに封印された災厄の説明と、封印を解く方法がかかれていた。

 ダンジョンに封印された災厄とは、裏ダンジョンで登場するボス級の魔物の名前と特徴だ。紹介文程度なのであまり参考にならない。前世の攻略サイトに書かれていた裏ダンジョン情報の方がずっと詳しい。そして前世の私は前世も今世も記憶力が良いので大体の事を覚えていいてメモに残せていた。

 封印を解く方法は「我を沈めよ」とだけ書かれていた。はっきりいってココだけが重要だ。何が我なのか書かれていないけれど、もし石碑自身を指し示しているのなら、石碑を泉に放り込めば封印が解けるのではないかと思う。


「封印は解くのか?」

「その前に戦力を集めたいわ、魔王攻略推奨レベルで行っても雑魚に蹴散らされるレベルなのよ」

「攻略推奨レベル?」

「ゲームでは戦闘後の経験値でレベルが99まで上がるのよ、他にも魔術や体術なんかの熟練度や、武器や防具の性能で強さが変わって来るの」

「ほんとRPGみたいだな」

「どちらかというとTRPGかしら?」

「TRPG?」

「タクティクス系のRPGよ」

「・・・良く分からない・・・」

「家であまりゲームしてなかったものね・・・」

「アウトドア派だったからな」

「遊び歩いていたっていうのよ」

「三国志とエフエフはやったぞ?」

「そうだったわね・・・結構序盤で止まったままのセーブデータあったものね」


 兄貴はゲームを友達に勧められたと言って両親に強請り、すぐに飽きて遊ばなくなる人だった。私は兄貴が飽きたそのゲームで遊ばせてもらっていたので、セーブデータの状態からどこら辺で飽きたのか良く知っていた。


「どうするのかはリーナに任せるよ、裏ボス倒せばダンジョンは落ち着くんだろ?魔物倒して魔術や剣術の訓練しておけば何とかなりそうだしそっちに注力するよ」

「脳筋ねぇ・・・」

「難しい事考えるのは苦手だよ」

「はぁ・・・」

「ため息つくと幸せが逃げるんだぞ?」

「そうね・・・」


 現在の私は不幸だと思う。死の運命を回避しているとは思えないからだ。「冒険者になりたい」と言って木剣をブンブン振り回していられたらなんと幸せかと思う。


「リーナが苦しむ理由が分からないなぁ。顔が良くて頭が良くて金持ちでカッコいい彼氏がいるんだろ?」

「金持ちなのは今だけよ」

「18歳までは鉱山は持つんだろ?そこまで育てばあとは何とかなるだろ」

「16で働きに出た人は違うわね・・・」

「頭は悪かったけど丈夫な体があったからな。僕もリーナも加護を2つも持って誰よりも強くなれるだろ?」

「そうねぇ・・・」


 その通りではあるけれど、権力者に狙われ続けたらいつから殺されてしまうだろう。


「洪水被害だって天災なんだしどうしようもないだろ。リーナは前世のテレビのニュースで洪水被害があったと聞いた時に心を病んだのか?」

「していない」

「洪水が起きてもリーナのせいじゃないよ。リーナは洪水の事を親に警告したんだ、その後は親の仕事だ。9歳の小娘であるお前がどうにかしようってのがおかしいんだよ」

「でも洪水被害がある事を知ってるのよ?」

「洪水になれば被害がある事は大人なら誰もが知っている事だよ、でも自分達に降りかかって来るなんて考えて無いだけなんだ。天災は忘れた頃にやってくるって言うだろ?」

「そうだけど・・・」

「リーナはいつどこで起きるかを知っているから自分が起こしていると勘違いしているだけだよ」


 勘違いか・・・確かにそうかもしれない。洪水は私が起こしている訳では無い。洪水はいつ起きてもおかしくない。そして洪水が起きれば被害が出るのは当たり前だ。


「怒り狂った領民に襲われたらどうするの?」

「体を鍛えておけば撃退するなり逃げるなり出来るだろ?」

「脳筋・・・」


 兄貴は王国が魔王に攻められて多くの人が死んでも気にしないのかな。気にしてしまう私が変なのかな?

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