小さな一歩
「これが発信源か」
僕は船の窓に顔を当てて、知的生命体がいるであろうそれを覗き込む。外観は普通の隕石と同じ大きさで、大気圏に突入した時に出来たと思われる焼け跡がある。本当にこれに知的生命体が乗っているのだろうか。
「レオン、どうしますか?」
「ひとまず、様子見といこう。何かあれば向こうからやって来るさ。その間に、不思議な信号の規則性を解こう。もしかしたら、『地球を侵略しに来た』なんて内容かもしれない」
まあ、今の地球にそれほどの価値があるとは思えないけれど。
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「信号の内容が分かりました。友好的なメッセージです。『初めまして。我々はガルダ星人という。我々と同じ境遇にある地球を救いにやって来た』とのことです」
「我々と同じ境遇か。何を指してそう言ってるか分からないけれど、ひとまず面会しよう。念の為パワードスーツを着て、ニコラも同席だ。怪しい素振りを見せたら、即攻撃していい」
僕はパワードスーツを着込み、ニコラと共に船のエアロックを通過する。外には、丸みを帯びた金属製のドームがあり、その表面には精緻な模様が彫られていた。ドームがゆっくりと開き、中から背の高い、青白い光を放つ生命体が現れる。
「こんにちは。私はガルダ星のエムリー。あなたがた地球の危機を知り、支援に来ました」
僕は一瞬の驚きとともに警戒心を抱きつつも、エムリーに向かって一歩前進した。
「こんにちは、エムリー。僕たちはレオンとニコラだ。まずは君たちの意図を聞かせてほしい」
エムリーはゆっくりと手を広げ、透明なスクリーンを投影した。そこには、緑豊かなガルダ星が映し出されていたが、次の瞬間、壊滅的な被害を受けるシーンが続く。
「我々もかつて、あなた方と同じように、他の異星人の実験で母星を失いました。しかし、その後、私たちはその失われた緑を取り戻す方法を見つけました。地球も同様に再生可能です」
僕は頷きながら、続けて尋ねた。
「具体的に、どうやって緑を取り戻すつもりなんだ?」
エムリーはさらにスクリーンを操作し、塩分に強い植物の成長プロセスを示した。
「地球の現在の陸地はもともと海底だったため、塩分が多く、植物が育ちにくい。しかし、私たちの研究によれば、塩分に強い品種を育てることで、緑豊かな環境を再生できるのです」
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数週間後、僕とニコラはガルダ星人の支援を受けて、特殊な種を植え始めていた。ガルダ星人のテクノロジーを駆使して、地球の新しい環境に適応するよう改良された種だ。
「見てよ、ニコラ。この小さな葉っぱが芽吹いている。これが新しい地球の始まりだ」
僕は感動しながら小さな芽を見つめる。その葉っぱは、力強くも優しい緑色をしていた。ニコラも隣で微笑みながらその成長を見守っていた。
「これはほんの始まりです。私たちの努力が実を結び、地球が再び緑豊かになるまで、共に頑張りましょう」
僕は深く頷きながら、目の前の小さな葉をそっと撫でた。その手に伝わる生命の息吹が、彼に新たな希望と決意をもたらした。
「そうだね、ニコラ。これからも一緒に、未来を築いていこう」
地球は茶色かった〜水陸逆転の荒廃した世界での生存記録〜 雨宮 徹@n回目の殺人🍑 @AmemiyaTooru1993
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