第8話 ジェノサイド

「はぁ……どうしよう、私これから何したらいいんだろ……あーーーーー!!」


 私はそう言いながら、の腕を捻ってねじ切る。その後落とした剣を足で蹴り上げて首に差し込み、そのまま体重をかけてそのまま首を跳ね飛ばす。


「はーあ、こんなものに時間がかかっちゃうなんて……私弱くなったなぁ」


 私はそういうと、倒した黒騎士の剣を拾い上げる。自分と同じくらいのサイズの剣を軽く振り回してみるが、あんまりしっくり来なかった。


「んーこれじゃあ無いなぁ。……じゃ、進んだら出てくるかな?もっといい素材ッ!」


 ひとつ、サイダ王は知らなかった。文名 律可は……ということを。


 ◇◇


〈ゴブリン〉と呼ばれる魔物がいた。それは小鬼と呼ばれる種族で、身長は僅か50センチほど。だがその割に知能が高く、何よりという特徴がある魔物だ。


 狡猾な策略と、数の暴力。そういったものを利用して戦ってくる魔物だ。だがしかし───。


 文名 律可の前では、ただの肉塊でしか無い。



「ふぅーぅ、あ〜身体に血がべっとり付いちゃったよ……汚らしいなぁ……」


 律可はそういうと完全に肉塊になったゴブリンの群れの死骸を地面に擦り付ける。

 ゴブリンはそれぞれ6匹いた。

 だがその内の3匹は初手で飛びかかった瞬間に頭蓋を砕かれて息絶えた。残りの3匹はかかと落としからの薙ぎ払いにより、壁と挟まれてすり潰されて現代アートの材料になった。


 ゴブリンは死の間際まで、何が起きたか理解できなかったのだろう。恐怖とも違う瞳だけが律可を見ていた。


 ◇◇◇


〈爛れスライム〉と言う魔物がいた。火を纏った溶岩のような見た目のそれは、内部に高温の炎の魔力を有しており、さらに非常に高い物理攻撃に対する耐性を備えていた。


 そしてそれは今、律可のかかと落としによりその肉体を爆散させて消し炭になった。物理耐性など律可の前ではただの飾りでしか無いのだ。


 ◇


〈アダマンタイトゴーレム〉という最高硬度の魔物がいる。動きこそとろいものの、ありとあらゆる攻撃に耐性を持つ魔物だ。

 基本こんなダンジョンには居ないはずの魔物だったが、律可の手で破壊された。


 硬い肉体は、投げ飛ばされ続けてひび割れ、一部砕けた場所からがりがりと剥がされて。あっという間に外殻をひん剥かれたゴーレムはそのままタコ殴りにされた。

 最終的に拳から血が出るまで殴り続けた律可により、完全に破壊された。


 ◇◇


 もうすぐ出口だ。というかここどんなダンジョンなんだよ……なんか魔物強いし?


 私がそう思いながらダンジョンの出口に向かうと……というかダンジョン?牢獄だったはずなんだけどなぁ。まあいっか。


 と、律可の足が止まる。それダンジョンの最奥部に、魔物を見つけたからであった。


 赤く輝く瞳、真っ黒な蝙蝠のようなマントを携えた大男。それは…………〈ヴァンパイアロード〉だった。


「グハハハ!!よく来たな小娘、お前が今宵の我の食事なのだな?ぐふふふふいい顔だ、いい血を持っていそうだ、ああ、素晴らしいぞぉ!?」


 そう言って〈ヴァンパイアロード〉はニヤリと、笑って見せた。


 ◇◇


〈ヴァンパイアロード〉とは、強大な力を持つ不死身の吸血鬼の王様である。その強さは例え異世界からの召喚者であっても、勝てるかは運。そう言われるほどの化け物だ。

 この魔物は封印をしなければ絶対に倒せない魔物、そう世界に知られている。


 そしてそれは今─────、


「あ?何お前、ロードとか名乗ってる割に弱いじゃん?……おらどうした足掻いてみろよ?あ゙?何?怖いの?泣いてるの?……は?」


 再生能力などなかったかの如く、ボコボコにされていた。

 ちなみにであるが律可は素手である。


 いくら体を塵に変えて逃げたとしても、律可の拳が当たる度にそこら辺から破壊されて消えていく。そしてその度に〈ヴァンパイアロード〉は苦痛の表情を滲ませる。

 そのうち暫く殴り続けたところ────。


「許してください、もう殺してください、頼むから楽に……楽にしてくださいっ!!」


 そんな命乞いをされるほどになった。ちなみに律可は笑顔で断ったよ。だって受け入れるメリットが無かったし。


 やがて暫く鈍い音が牢獄系ダンジョンの中に響いたあと、その音が掻き消えた。


 律可は静かに倒れた〈ヴァンパイアロード〉から服だけを剥ぎ取って身体に巻き付けて、歩き始めた。


 ……ひとつ言えることがある。


 彼女は最初から狂っている。そしてただ一つ、最強であると。





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【闇鍋】みたいな異世界の攻略法は【ゴリ押し】だと信じてるんだけど、間違っている訳ないよね?(圧)〜最強回復スキルと最強攻撃スキルを持つ女のせいで異世界がヤバイ件 ななつき @Cataman

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